お下がり服から悪臭
義父母の家を二世帯住宅に立て替えて、義父母と暮らすようになって1カ月ほど。子どもたちはすぐに新しい保育園に慣れたようですが、私にとっては馴染みのない土地であり、周囲には友人もおらず不安な気持ちが募ります。
ある日、義母が近所の方からベビー用品をもらったと言って、子ども服がパンパンに入った40Lのポリ袋を私に渡してきました。「わあ〜! ありがとうございます」と言ってポリ袋を開封すると、部屋の中に異臭が立ち込めます。義母も鼻を抑えている様子……。中身はカビだらけの洋服に、いつ使用されたかのかわからない布おむつなど、使えなさそうなものばかり……。
「え!? なにこれ! 資源ゴミ?」と内心思って私が動揺していると、義母は「ご近所の付き合いでいただいたのよ。ありがたいでしょ」とニコニコ。一転厳しい顔つきで「近所のAさんとBさんに会ったら、絶対にお礼を言いなさい。嫁ちゃんは常識ないから知らないかもしれないけど、ご近所付き合いは大切なのよ?」と言ってきます。こんなボロボロな洋服を大量に押しつけてくる近所の人にも、それを受け取ってしまった義母にも私はがっかりしましたが、もしかしたら善意でくれたのかもしれません。一応義母の言うとおり、会ったらお礼を言おうと思いました。
しかし、さすがにカビが生えた服を子どもに着せるのは、たとえ洗濯したとしても怖いなと感じた私。だからといってポリ袋ごとゴミとして出せば、引っ越して早々トラブルになってしまうかも……と思い、なかなか捨てることができません。泣く泣く夫に相談すると「よし! ゴミ処理場に直接持っていこう!」と提案してくれ、処分することができました。後日、夫から義母に「異臭がするから捨てたよ!」と伝えてくれました。義母に黙って捨てたため反応が心配でしたが、義母もどうやら服の異臭が気になっていたようで、何も文句を言ってくることはありません。
その後、服をくれた近所の人にお礼を言いに行くと、「昔、子どもが着てた服がまた誰かの役にたてばいいなと思ったのよ」と話してくれました。善意でお下がりをくれたのだとわかって一安心。頂き物を処分するのは心苦しかったし、善意だとわかって申し訳ない気持ちになりましたが、近所の人たちも自分がどんな服を渡したのか覚えていないようで、着ているかどうかまでは特に気にしていない様子。
見知らぬ土地でのご近所付き合いに臆病になっていた私ですが、引っ越してきたばかりの私たち家族を気づかってお下がりをくれたご近所さんの暖かさに感謝し、いいお付き合いをしていけたらいいなと思いました。そして、何か問題が起きても、ひとりで悩んでストレスをためないように、夫と随時協力し合おうと思った出来事です。
作画/yoichigo
著者:桂ゆかり
働く乗り物が大好きな3歳の男の子と、ティッシュをひらひらして遊ぶのが大好きな1歳の女の子を育てるママ。夫は夜勤のため、月〜土曜日までワンオペの日々を過ごしている。