会いたくない人との再会
夫と過ごした思い出の家を明け渡した私は、悲しい気持ちをバネに介護の資格を取得し、今ではひとりで元気に暮らしています。今となれば、あのとき追い出してもらって良かったのかもしれません。
しかし5年の月日が経ったある日、突然義母と義姉に再会しました。2人は私の生活や仕事のことを根掘り葉掘り聞いたうえ、介護の仕事をさんざんコケにして笑ったのです。
介護の仕事はとても大切な仕事でやりがいがあります。それなのに義母と義姉は「老人係」とバカにし、それしか働き口がない能なしだからとひどいことばかり……。
いつまで経っても夫は大切な人ですが、こんな人たちとは金輪際関わりたくありません。
家族じゃないと言ったはずなのに…
もう2度と会いたくないと思っていたのですが、1カ月と経たないうちに義姉から連絡がありました。
「助けてほしい!」と必死に頼み込む義姉に、嫌な予感しかありません。話を聞くと、義母が脳梗塞で倒れ、半身まひの状態になってしまったそう。一命を取り留めたまでは良かったものの、終わりの見えない介護に義姉はギブアップ。
「介護しに帰ってきて! 家族でしょ?」と言う義姉に、私は怒りすら覚えました。勝手に追い出したうえ、あれだけ私のことを見下したのに、今になって「家族」 だなんて……。
ついにやってきた、仕返しのとき
私は義姉に、きっぱりにこやかに「家族じゃなくなったから家から追い出したはずですよね」と言ってやりました。 すると、義姉はこれまで見たこともないくらい低姿勢になって謝ります。いとも簡単に手のひらを返すので、私は心底呆れ返りました。
先に家族じゃないと切り捨てたのは、義母と義姉のほう! 好き好んで自ら赤の他人となったのに、どうして私に介護を頼むのでしょう。自分の母親なのだから自分でお世話をすればいいのです。
しかし困っているなら仕方がありません。私が所属する会社にお金を払いさえすれば、私が介護のプロとして義母のもとにいくと提案すると、義姉は私を人でなしの守銭奴呼ばわり。家族ではないから助ける筋合いはない、しかし困っているなら仕事として依頼してほしい……私、何かおかしいことを言ったでしょうか?
泣き夫は永遠に大切な家族
これ以上話しても時間が無駄だと悟った私は、金輪際連絡をしてこないでほしいと言って、電話を切りました。
お金がなく、施設に入れる費用はおろか、介護を依頼する費用も工面できない義姉は、自分で面倒を見るほかありません。風の便りによると、義姉は毎日のように泣きながら、身をボロボロにして介護をしているそうです。5年の時を経てようやく仕返しできた私は、心のモヤモヤがやっと取れました。
そしてもうひとつ嬉しいことがあります。介護が忙しすぎる義姉は、夫のお墓や仏壇の管理を私に任せてくれました。これまで私なりに夫に思いを馳せていましたが、今では仏壇に毎朝手を合わせることができるようになりました。義母や義姉のことは知ったことではありませんが、夫は私にとってこれから先も大切な夫です。
置かれた立場や状況によって、簡単に言葉や態度を変えてしまう人は信用されません。助けてほしいときだけ調子よく近づく人に、手を差し伸べようとは思えませんね。これを教訓に、自分の身を正してほしいと願います。
【取材時期:2024年8月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています