やさしかった夫はどこへ…
トラブルが多いと言われる義母との同居ですが、私たちの関係は良好でした。義母は「私が施設に入れば時間を奪わないのにね……」と申し訳なさそうに言うけれど、私は義母と過ごす毎日が楽しくて、この生活が大変だと思ったことはありません。
しかし夫はそうは思っていないよう。事故の前はやさしく面倒見のいい性格だったはずなのに、義母が要介護になった途端、まるで別人になってしまいました。「新婚の俺たちがなんでババアの介護なんかしなきゃなんねーんだよ!」と暴言を吐き、家に寄り付かなくなってしまったのです。
ここまで帰ってこないとなると、疑ってしまうのは夫の浮気。念のために……と思い、調査会社に依頼すると、夫は夜な夜なギャンブルに明け暮れていることが発覚しました。
自分の母親にひどい態度をとった上、ギャンブルにのめり込む夫のことを冷静に考えると、なんだか一気に冷めてしまい、水面下で離婚の準備を進めることにしたのです。
義母の秘密
そんなある日、義母は私に驚くべき話を打ち明けてくれました。伝えるべき日が来るまで夫には内緒にするようにと釘をさされたものの、あまりに大きな秘密を抱え、そわそわしてしまいます。
その数カ月後、義母は急に体調を崩し帰らぬ人に……。義母の危篤を知らせる電話にさえ出なかった夫は、最期の瞬間にも顔を見せませんでした。それでも義母の葬儀では涙を流し、両親を亡くしたかわいそうな息子を演じたのです。
しかし葬儀が終わるとすぐに、話題は義母の遺産の話に……。たしかに義母は事故の慰謝料や保険金でまとまったお金をもらっています。
「ババアがやっといなくなって楽になったわ。これでやっと遺産をゲットできるな!」と私に同意を求める夫。夫は、義母が手にした慰謝料や保険金を一刻も早く手にしたいと考え、精神的に追い詰めようと考えたと言います。
得意げに話す夫を見て、心底悲しくなってしまいました。
遺言書に書かれていたのは…
私はこれ以上そんな話を聞きたくないので、すぐに離婚を持ちかけました。
夫は「遺産が入ってくるのに離婚なんてバカだな!」と言いますが、そんなことは気にしません。その場で離婚届にサインをしてもらいました。
実は私は、この後義母から夫に下される最後のお仕置きが待っているのを知っていたのです。
夫の態度が一変したのは、弁護士が義母の遺言書を読み上げたときのこと。遺言書には、今住んでいる不動産は私に、その他の財産はすべてを児童養護施設へ寄贈する、とありました。夫にとっては寝耳に水! 怒りと焦りが混ざった、なんとも言えない顔をしていました。
「俺への遺産は? 実子の俺に何も遺産相続がないなんておかしいだろ!」と怒る夫に、弁護士からある事実が告げられます。それは、夫は義母の子どもではないという驚きの事実。先日、私も初めて聞かされたことでした。
実は、夫は義母の姉夫婦の子だったのです。姉夫婦は離婚後、育児を放棄して出ていったようで、子どもに恵まれなかった義母夫婦が夫を引き取りました。それでも姉のことを考えて、養子縁組はしなかったそうです。
実子を持たず、配偶者や両親をすでに亡くしている義母の場合、遺産は義母のきょうだいに分配されることになります。たとえ遺言書がなかったとしても、夫の元にくることはなく、文句を言う資格すらないのです。
遺産をアテにする愚かな夫、その結末は…
まさかの事実を突きつけられた夫はその場に立ち尽くし、表情はみるみるうちに青ざめていきました。巨額の遺産が入ってくることを期待していた夫は、ギャンブルで全財産を使い果たしていたのです。
義母は、この事実を何度も夫に話そうとしたのですが、義母を無視し続けたのは夫。そのツケが今、回ってきてしまいました。最後は私に離婚を取りやめるように泣きついてきたけれど、受け入れるわけにはいきません。
今はギャンブルで膨れ上がった借金を返済するために、朝から晩まで働き詰めなのだとか……。一方私は夫との離婚が成立し、義母が相続してくれた不動産を売却し新しいマンションを購入しました。天国の義母との思い出を胸に、これからも自分の人生を精いっぱい歩んでいこうと思っています。
遺産をアテにするなんて、まさに砂上の楼閣。結局、自分が築いたものだけが、真の財産となるのでしょう。ラクして財産を手に入れようとする浅はかな考えはしないよう、肝に銘じておきたいですね。
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。