急な海外出張が早めに終わり、へろへろになりながらやっとこさ帰宅した私。
「ただいま~」とドアを開けて家に入り、リビングへ行くと、見知らぬ女が「おかえりなさーい」と返してきたのです……。
わが家に現れた見知らぬ女
驚きすぎて、しばらくフリーズしてしまった私。数秒間彼女と見つめ合った後、ハッと我に返り、家を飛び出しました。
そして、すぐさま夫へ連絡。
「う、うちに!知らない女がいるの!!」「警察に、警察に連絡して!」「あと不動産屋にも!!」「私、あの女が逃げないように玄関前でドア押さえてるから!!」
パニックになりながら夫に伝えると、夫もびっくりしたようでした。しかし、夫が驚いたのはその女性がいたことではなかったのです。
「え……もう出張から帰って来たのか!?」
自宅に知らない女がいるというのに、夫は私の帰国に驚いていたのです。私はまさか自分にしかあの女性が見えていないのではないかとさらに不安になり、「どうしよう、もしかして幽霊!?お坊さん呼んだ方がいい!?」とおろおろ。
すると、「落ち着け、何も呼ばなくて大丈夫だから!」「その子は生きてるし、俺の会社の後輩だから!」と夫。聞けば、その女性は家賃滞納で家を追い出されて困っていたのだそう。かわいそうだと思った夫は、うちに呼んだのだとか。
いつから家に泊めているのか聞いたところ、この家に引っ越しをしてすぐからだと言う夫。3カ月前もの間、夫とその後輩はわが家で実質2人暮らししていたということがわかりました。私は海外出張で忙しく飛び回っていた間に……と、私の恐怖はすぐさま怒りに変わりました。
「妻がいながら、ほかの女を家に入れてたなんて…!」と言うと、夫は「変な誤解はしないでくれ!男女の仲とかそういうのじゃないから!」と大慌て。
いくら会社の後輩だからといって、いい成人女性なのだから頼る先はほかにもあるはず。そのことを指摘すると、「実家はかなり遠方で、親戚付き合いもないらしいんだ」「恋人もいないみたいで、俺しか頼れる人がいないっていうからさ」と夫。
「このマンションは私たちの新婚生活のために買ったのに……」「私にとっては見知らぬ図々しい女であることに変わりはないし、私はそんな人と一緒に暮らすことはできないわ」と言うと、夫は「彼女に家が見つかるまで、ちょっとの間だけだから!」と言ってきたのでした。
タワマンに遊びに行きたいという義母からの連絡
1カ月後――。
私は前よりも出張を入れて、極力家に帰らないようにしていました。相変わらず夫があの女性を住まわせているからです。
そんなある日、義母から「元気にやってるかしら?」と連絡が。「相変わらず私は仕事ばかりですよ」と答えると、「仕事があるのはいいことよ~!」と義母。
「実はちょっとお願いがあって電話したんだけど……」という義母。「実は今度、2人の新居に遊びに行ってみたいのよ!」「タワマンなんて外から見たことしかないし、どういうところなのか気になっちゃって!」という義母に、「それぐらい気軽に言ってくださいよ~!」「ぜひいつでも遊びにいらしてください!」と答えた私。
すると、義母は「えっ!?本当にいいの!?」と驚いた声を上げました。聞けば、夫に何度も「遊びに行きたい」と連絡していたのだとか。しかし、夫は「最近子犬を買い始めたから、その子が家に慣れてからにしてくれ」「妻が『姑が夫婦の家に来るのは嫌だ』と言ってるから」と言って、断り続けていたのだそう。
私にとっては寝耳に水。見知らぬ女性はいますが、子犬なんて……。
「かわいい仔犬を飼ったって聞いたわよ?」「まだ仔犬なんでしょ?すごく懐いててかわいいって、息子ったらメロメロで……」「私もその子に会ってみたいわぁ、なでなでしてもいいかしら?」と義母。
「あ……あぁ~!そういえば、いましたね!出張続きで忘れてましたけど!」「仔犬みたいな見た目なんですけど、中身はハイエナというか……」と言うと、義母は「ますます興味が湧いてきたわ!私、動物大好きなのよ!」と大喜び。
「私はいつだって遊びに来てもらっても構わないですよ、私がいないことも多いですが……」というと、「じゃあ、早速今週末、お父さんを連れて行くわね!」と義母はとてもうれしそうに言っていました。
仔犬の正体を知った義母は…
その週末――。
「俺たちのタワマンに後輩を住まわせるから!彼女困ってるからいいよな?」
「お前は出張続きなんだし」
「ふーん…いいけれど…。お義母さんはどう思うかしら?」
「え?」
「ねぇ、まだ後輩さんうちに居座ってるの?」「早く追い出してほしいんだけど」と出張先から夫に連絡した私。すると、「そんな意地悪言わないでくれよ」「彼女、仕事はできるけどプライベートは散々で、借金もあるみたいなんだ」「部屋も余ってるし、もうしばらく置いてあげてもいいだろう?」と夫は主張してきたのです。
呆れ果てた私は一つ息を吐いて、「もう私は何も言わないわ」「その後輩、いつまででも居候させていいわよ」「『私は』ね」と言いました。夫は大喜び。
「でも、お義母さんたちはなんて言うかしらね?」と言うと、「えっ!?」と夫。
「もうそろそろ、お義父さんとお義母さんが着くころよ」「この間、合鍵を作って渡しておいたから真っ直ぐ部屋に向かうと思うわ」
10分後――。
「ちょちょちょ、ちょっと!これは一体どういうことなの!?」と慌てふためく義母から連絡が。
「どうでしたか、夫の自慢の借金持ちの仔犬ちゃんは」「私に相談もなく、新居に引っ越してすぐに勝手に飼い始めて……私は追い出せって言ったんですけど、心やさしい夫はそれができなかったようで」「数カ月の間、2人で暮らしていたようです」
「私、そもそも犬アレルギーだからワンちゃんは飼えないんですよね」「そういうわけで犬アレルギーの私は離婚しようと思うんですが、たかがアレルギー程度で離婚なんて大げさですかね?」と義母に意見を求めてみることに。
「いいえ、大げさなんてそんなことはないわ」「むしろ今すぐ離婚するべきよ」ときっぱり言ってくれた義母。しかし「それにね……」と何か言いづらそうにしています。「お義母さんが見たことをすべて話してください」と言いました。
すると、「実は……インターホンを鳴らしても出てこないから合い鍵でドアを開けたのよ……」「そしたら……2人とも裸で一緒に寝ていたわ」「反射的に勝手に撮影したから送るわね。好きに使ってちょうだい。私たちもあなたの味方だから、とことんね」と義母。私はやっぱりと思いつつ、その日のうちに離婚を夫に突き付けました。
その後――。
後輩の女性はアパートを追い出されたことを会社に報告しておらず、家賃手当を不正受給していたことが発覚。私は以前紹介してもらった元夫の上司に写真を見せ、夫の不倫を暴露。すると元夫と後輩の女性は社内風紀を乱したということで、それぞれ遠方の支社に異動にするとのこと。
元義両親は元夫に絶縁宣言。「二度と実家に顔を出すな」と言い渡したそうです。
例のタワマンの部屋は私1人で広々とした空間になりました。しかし、そこに住むのもなんだか気持ち悪くて、結局貸し出すことに。いまは単身世帯用のマンションを借り、そこで自由気ままに過ごしています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。