今回お話を伺ったのは・・・防犯のプロ 旭化成ホームズ山田さん
- 旭化成ホームズ株式会社 LONGLIFE総合研究所 主任研究員 山田恭司さん 一級建築士 防犯設備士(第24-33182号)
ヘーベルハウスを展開する旭化成ホームズのLONGLIFE総合研究所では、1980年の二世帯住宅研究所設立から40年以上にわたり、住まい手の意識や時代の変化を捉え、都市型住宅を中心に新たな暮らし方を研究してきました。
二世帯住宅、共働き家族住宅、ペット共生型住宅、ロングライフ住宅、自然の恵みを活かした住まい等、多様な住まい方を時代に先駆けて提案し、戸建住宅だけでなくマンション等の都市開発事業、リフォーム事業等グループ事業全体への展開を進めています。
最近ニュースで報道されている「闇バイト強盗」の特徴
昨今、市民の日常を脅かしている闇バイト強盗は、これまでの侵入盗(空き巣、忍込み、居空き)とは特徴が異なります。
大きな違いは?
これまでよく見られた侵入盗は、報酬労力リスクを考えて"合理的に"対象を選択します。
闇バイト強盗は「匿名・流動型犯罪(通称:とくりゅう)」と呼ばれ、SNSなどを通じて集められています。指示役のリスクが少なく、素人の複数犯である実行役は指示に従い、報酬獲得に注力しています。(山田さん)
闇バイト強盗が狙ってくる時間帯は?
就寝中の深夜や早朝の時間帯がほとんどでした。(山田さん)
どんなエリアが狙われているの?
埼玉県所沢市、千葉県白井市など近隣の監視が少ない場所がほとんどですが、東京都国分寺市のように、人や車通りのある場所の侵入例もあります。(山田さん)
自宅が多少人通りがあるからといって、安心していいわけではないのですね。
闇バイト強盗は、どうやって侵入してくるの?
手段はバールまたはハンマーによるガラス打ち破りで、勝手口や出窓などガラス面の大きな窓を狙っている傾向があります。(山田さん)
報道映像からの推測ですが、これまで狙われた家は網入りガラスや普通ガラスで「防犯ガラス」ではないように見受けられます。そのため、ガラスを割る音は出ますが、侵入まで時間はかかりません。(山田さん)
実行犯はガラスを割る音がしても、怯まないのですね
はい、実行役は闇バイトで集まっている人たちなので、技能や知識はたぶん無く、指示役から物件や割りやすい窓などを指定され、報酬獲得のためにただ従い、リスク回避の選択をしていないと推測されます。(山田さん)
ホムセンで適当に買うのちょっと待って!優先して備えたい防犯対策まとめ
そんな恐ろしい人たちに家に入られたくない!今のうちにホームセンターで防犯グッズを買っておきたいと考えている方も多いでしょう。筆者もその一人です。
とはいえ、いきなり全てを用意するのにはお金も時間もかかります。たくさん買って満足しても、アイテム一つ一つにきちんとした効果がなければいけません。
そこで山田さんに、闇バイト強盗対策に用意しておきたいものを優先度の高さと合わせて伺いました。
【優先度:大】防犯性能の高いガラス、または防犯フィルム
これまでに狙われた家の共通点は、大きく簡単に割れるガラスでした。ガラスを強化しておくことで侵入までの時間を稼ぎましょう。音を出させ続け、その間に気づいて、通報するのが大事です。
音については、ガラスが割れると大音量で知らせるガラス割りセンサーも検討してください。
防犯性能の高いガラスは、リフォームで内窓二重サッシが小工事で付けられます。防犯フィルムは部分的だと抜けてしまう可能性があるため、ガラス全面に貼りましょう。
特に、CPマークが貼ってあるガラスやシートがおすすめです。割り続けても5分は耐えられる試験を通過したものにのみ貼られており、時間を稼いでくれます。
施工は資格を持った技術者によって行われる必要があるので、注意してください。
【優先度:大】サッシに2つ鍵をつける
闇バイト強盗は窓ガラスを割った後、手を差し込んで鍵を開けて侵入してきます。
▲写真左:サブロック、写真右:ストッパー付きクレセント
対策として鍵の数を2つにしておきましょう。2ロックを開けるには、ガラスを2ヶ所壊さないといけず、自ずと破壊時間を2倍に引き伸ばせるのです。
上記写真のような、サブロックやストッパー付きクレセントのほか、簡易的な補助錠も売っています。
補助錠を設置する場所は、「上」につけるのがおすすめ。普通は下にあるので裏をかけます。また、肩から上を叩くとき、腕力が弱くなります。
補助錠のおすすめは突起で止めるタイプ
※出典(写真右):ノムラテック「サッシロックスリム」
後からつける簡易的な補助錠として、写真左のような「押し付けて摩擦で止める」タイプと、写真右のような「突起で止める」タイプがあります。
取り付けるなら「突起で止める」タイプがおすすめ。こじ開けに強く、サッシを傷めにくいのです。
「押し付けて摩擦で止める」タイプは全てがダメというわけでは無いのですが、山田さんのご実家でつけたところ、力ずくで押したら開いてしまったのだとか。それでは防犯の意味がないですね。
【優先度:大】寝室にも鍵をつける
上記のような防犯ガラスや2ロック対策をしても無理やりこじ開けられ、家屋に侵入される可能性があります。
命を守るために、もし「入られたら」の対策もしておきましょう。
寝室に鍵をつけてこもり、警察を呼び、犯人との接触を避けるのも大事です。
【優先度:大】「防犯カメラ」
防犯グッズの第一歩として、防犯カメラから買う方もいるかもしれません。
防犯カメラにはいくつかの効果があり、犯罪を記録する機能では、カメラに映った相手が逃げた後に警察に提供して、人物特定をするのに役立つアイテムです。
そのため実行役が目出し帽を深々とかぶったりしていると効果は限定的なのです。
しかし、今回の闇バイト強盗では、もう一つの抑止の意味で効果があった可能性があります。
一連の闇バイト強盗に入られた家を見ていくと、防犯カメラのない家が多い傾向です。これは予測ですが、指示役が下見の段階で、防犯カメラのない家を選んでいる可能性があります。
【優先度:中】「フラッシュライト」
不審者への威嚇効果が期待できるフラッシュライトですが、闇バイト強盗で侵入する実行役は「どうしてもこの家に入らなければいけない」と命令されているので、フラッシュライトに当たっても怯まない可能性もあるそうです。
とはいえ、設置の必要がないということではありません。
はるかに多い侵入盗(空き巣、忍込み、居空き、金庫破りなど)には有効で、特に窓を割ろうとしている怪しい人物を照らし、近隣や通行者に気づきやすくします。
また、光は広範囲に届くため、闇バイト強盗が侵入しようとしていることを近所の人や通りすがりの人が見つけてくれるかもしれません。
事前の対策をしっかりと
いつ何が起きるかわからないからこそ、最新の傾向を知り、対策しておくに越したことはありません。
また防犯グッズなら何でもいいわけではなく、時間を稼ぐと言われている「CPマークつき」のものや、こじ開けても取れにくいタイプの鍵を選ぶなど、取捨選択が必要です。
これから揃えるみなさまの参考になれば幸いです。