前回は、積み立てを始めようと思われる方への準備や考え方についてお伝えしましたが、これから3回に渡って非課税の適用のある積立制度のメリット、デメリット、向いている人についてお伝えしていきます。今回は、NISAについてお伝えします。
1.なぜ、非課税の適用のある積立制度を利用したほうがいいのか
通常、預貯金の利子や株式の配当や売却益、投資信託等の分配金や売却益等には、20.315%の税金(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)がかかります。
たとえば、投資元本が100万円で売却時に130万円になった場合の収益は30万円ですが、税金が20.315%かかるために最終収益は23万9,055円となります。しかし、非課税であれば、最終収益も30万円となり、手元に残るお金も多くなるため、この制度を利用することにメリットがあります。しかし、何でも非課税になるわけではなく、金額や投資対象等に制限があるため、ご自身やご家族に適した制度を選ぶ必要があります。
2.NISAについて
2014(平成26)年から始まった制度で、20歳以上の人が、銀行または証券会社でNISA口座を開設すると、年間120万円までの投資元本の運用(株式、投資信託等)についての収益は非課税となる制度です。2018年3月末時点で約1117万口座が開設されています。
投資対象の範囲が広い点と売却の制限がない点、また積立での運用もできる点から、どの積立運用にするか迷われたら、まずこのNISA制度を検討するといいでしょう。
3.ジュニアNISAについて
2016(平成28)年から始まった制度で、20歳未満の人が、銀行または証券会社でNISA口座を開設すると、年間80万円までの投資元本の運用(株式、投資信託等)についての収益は非課税となる制度です。
実際には両親または祖父母がお子さんの口座の運用管理をすることになります。2018年3月末時点で約27万口座が開設されています。運用した金額を払い出すにはお子さんが18歳(※1)になるまで制限(※2)があるため、大学や専門学校の入学金・授業料や就職活動・結婚費用等の目的でない場合は向かないケースもあります。確実にお子さんが18歳以降に使う目的であれば、向いている制度です。
※1:3月31日時点で18歳である年の前年12月31日(例:現役高校生3年生の年末)
※2:災害などやむを得ない場合には非課税で払い出し可能
4.つみたてNISAについて
2018(平成30)年から始まった制度で、20歳以上の人が、銀行または証券会社でNISA口座を開設すると、年間40万円までの投資元本の運用についての収益は非課税となる制度です。投資対象は金融庁が指定する投資信託(2018年8月時点では158本)が対象となり、2018年3月末時点で約51万口座が開設されています。
投資対象が少ないため、幅広く運用したい人には物足りない面もありますが、初心者には投資対象が限定的でコストも安く長期運用に向いているものが多いため、初めて積立投資を検討される人やネット証券等を利用してご自身で判断される人に向いている制度です。毎年NISAか、つみたてNISAか選択できるため、まずはつみたてNISAで始め、運用に慣れてから、のちにNISAで幅広く運用する方法もひとつの考え方と思います。
5.運用商品を選ぶには
銀行や証券会社でNISA口座を開設すると、窓口の担当者がおすすめの商品を提案するケースがあると思いますが、場合によっては手数料が高く、収益が低い場合もありますので、注意しましょう。
「おすすめは?」と聞くより、「子どもの学費を目的に15年間、リスクを低く運用したいのですが」と具体的に伝えることが大切です。手数料の高いものは投資する金額の3%を超えることもありますし、年30%以上価格が変動するもののある一方で、購入手数料がゼロのものや年5%以下の範囲でしか価格が変動しなかった実績のあるものもあります。
具体的な商品は選べなくても、目的、期間、許容できる価格変動の幅、手数料等は大まかに決めておくといいでしょう。NISAはいずれも収益に税金がかからないため、将来の目的の積立として上手に活用しましょう。
※上記、積立運用の一覧は、各制度について2018年8月時点の内容を簡単にまとめたものです。各制度を利用する際は、最新の情報・法令に基づき、ご自身の判断で運用するようにお願いいたします。
1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP。独立系FP事務所・株式会社とし生活設計取締役。教育費・老後資金準備、税や社会保障、住宅ローンや保険の見直し、貯蓄・資産運用等、多角的にライフプランの個別相談を行うとともにセミナー講師として活動しています。