プロポーズの翌日に、「今日、俺の実家に結婚の挨拶に来れない?」「早速両親に紹介したいんだ」と言ってきた婚約者。あまりの展開の速さに、私は心の準備が追い付きませんでした。
しかし、婚約者はどうやら結婚を急ぎたいらしく……?
お互いの情報交換
「俺、つい浮かれすぎちゃって……さすがに実家への挨拶はまだ早いよな」と婚約者。「まずは俺たちの間で実家の話とかいろいろしないと!」と言ってきました。
しかし、両親を早くに亡くした私には、実家に関する話題はあまりありません。両親が亡くなったときの相続の関係で親戚ともかなり揉めたため、親戚づきあいもほとんどないのです。
「お金が絡むと人って変わっちゃって……」とため息をつきながら言うと、婚約者はまさかの一言を放ったのです。
「つまり、揉めるぐらいの遺産があるんだね!」
続けて、「ご両親の遺産は全部貯金してあるって言ってたよね?」「本当にまだ1回も使ってないの?」「てか、ぶっちゃけいくらもらったの?」と矢継ぎ早に尋ねてきた婚約者。
私は目を白黒させながら「どうして、急にそんなことを聞くの……?」と聞き返しました。「あ!変な誤解させちゃった!?」「俺は別に遺産に興味はないんだけどさ、これから俺たちは夫婦になるわけだし、知っておくべきかと思ってさ」と婚約者。
空気が悪くなったので、「私こそごめんね、親戚と揉めたときのことを思い出しちゃって……」と私も謝罪。婚約者も「言いたくないことは無理して言わなくてもいいからね」と言ってくれたのでした。
婚約者の母のとんでもない要求
それから数週間、彼の両親との顔合わせの日――。
「このたびは婚約おめでとう!」とお祝いしてくれた婚約者の母。しかし、婚約者と父親が席を外した瞬間、「それより、婚約指輪のお返しはいつになるのかしら?」と尋ねてきたのです。
「ブランドもののお財布を贈ろうかと……」と言うと、「え~!そこは高級腕時計でしょ!やっぱりスイス製の!」と婚約者の母。さらに、「私たちには車一台でいいわよ!」「車種にこだわりはないけど、新車にしてね!」と言ってきたのです。
指輪の数十倍以上の値段のお返しを要求されて、私は目が点に。「私たちがいないと、息子は生まれてこなかったのよ!だから私たちにもお礼をしなさい」「ご両親の遺産がかなりあるそうじゃない、なんてケチな子なのかしら」と言われ、私は頭が真っ白になってしまいました。そこから婚約者の実家を出るまでのことはよく覚えていません。
婚約者とその実家の本性
2カ月後――。
遺産のことを聞かれてから、結婚を先延ばししたいことをそれとなく婚約者に伝えていた私。しかし、婚約者はしびれを切らしたらしく、「昨日の夜のうちに婚姻届を提出してきた!」と言ったのです。
同意のない婚姻届の提出は、無効となるはず。それを伝えると、「いずれ結婚するんだから、早い方がいいだろ」と婚約者は言いました。そして、さらにとんでもないことを言い出したのです。
「これから毎月10万実家に仕送りしろ!親から相続した金がたっぷりあるだろう?」
「婚姻届けを出してきたから、旦那様の命令だぞ!」
「受理されていないのに?」
「え?」
仁王立ちして、私を脅すように、「初めてお前の家に遊びに行ったときに通帳をこっそり見たんだ、両親の遺産が1億円も入っていたよな」「離婚するならその半分の5,000万を俺によこせ」と婚約者は言ってきたのです。
私はため息をついて、「これがあなたの本性なのね」と言いました。
「両親が遺してくれたお金は一銭も渡さないから」「そもそも婚姻届は受理されていないはずよ」
婚約者とその実家に不信感を抱いた私は、婚姻届の不受理申請をしていたのです。婚約者は夜間受付に婚姻届を出したそうなので、受理はされていないでしょう。
「夫でもなんでもない人が、どうやって慰謝料請求するの?」と聞くと、婚約者は大慌て。「こんな人たちと家族になるなんて絶対無理、あなたとはもう別れます」と言って、私は婚約者との関係を終わりにしました。
その後――。
私の両親の遺産をあてにしていた元婚約者とその両親は、勝手にハウスメーカーと契約して、実家のリフォーム計画を進めていたそうです。その合計金額はなんと5,000万円超!
「結婚はもうしなくていいから、無利子でお金を貸してくれないか」と元婚約者から連絡がありましたが、私は「今後は弁護士さんを通して連絡してください」とだけ言っておきました。もう関わりたくありません。
親戚と揉めたときもそうでしたが、本当にお金は人を狂わせると感じた私。今回のことで、もっと私も人を見る目を磨いていかなければならないな、と痛感したのでした。
【取材時期:2024年9月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。