毎日お見舞いにみえるご家族
当時の私は病院に勤務しており、患者さまやご家族と接する機会がたくさんありました。病院は丘の上の、公共交通機関もあまり充実していない場所にあります。それにもかかわらず、毎日ご主人のお見舞いにみえる奥さんがいました。
寡黙なご主人の身のまわりのお世話をする奥さんは、「ただ顔が見たいだけなのよ」とうれしそうに教えてくれました。何歳になってもご主人に恋をしているような奥さんが、私にはとてもかわいらしく思えたのです。
入院誓約書の続柄の欄
そんなある日、私にとって衝撃的なことがありました。病院には、入院時に必要な入院誓約書に、患者さまと保証人の続柄を記入する欄があるのですが、カップルの場合はどのように記入するかを調べてみると、私が勤務していた病院では「知人」や「同居人」と記入することがわかりました。
私にとってそれは、大切な人との関係に「他人」を意味する言葉を使っているように思えて、とても衝撃的だったのです。
もちろん、お付き合いのスタイルはカップルの数だけあり、緊急時の対応も病院によって大きく異なります。しかし私だったら、書類上でも、彼の緊急時に対応できる明確な続柄になりたいと強く思ったのです。
自分と彼にあてはめてみたら
そうした刺激を受けるにつれて、もしいずれ彼に看護や介護が必要になったとき、できるだけ私がそばにいたいと思い始めました。不思議なことに、彼との結婚生活が簡単に想像できたのです。もちろん、結婚してみないとわからないこともたくさんあると理解していました。喧嘩をして、嫌な一面も見えてくることもあるでしょう。それでも、ずっとそばにいたいと思える人に出会えたという気持ちを大事にしようと思ったのです。
とはいうものの、彼に結婚の意思があるかを聞けない日々が続きました。もし、結婚するつもりはないと言われたらしばらく立ち直れないと思ったからです。しかし、お付き合いが続いていくうちに、一軒家派か賃貸派か、子どもは何人欲しいのかなど自然と結婚を意識した会話が増えていきました。
そこで、「プロポーズのときに、指輪はいらないからね。でも、特別感は欲しい」とアピールしたところ、「プロポーズはこの日にするって決めてるから、覚えておくよ」と返されました。そして、その会話をした半年後の私の誕生日、彼は私にプロポーズをしてくれました。
結婚後、初めて書類の続柄の欄に「妻」と記入したときには感慨深いものがありました。そして、私が結婚を意識したきっかけを夫に話すと「あなたらしいよ」と笑っていました。
必ずしも結婚にこだわる必要はないと思いますが、私たちの場合は、万が一のときに書類上でしっかりと家族であることを証明できるようになりたいと思い、結婚する選択をしました。思い描く老後を迎えられるかはまだわかりませんが、今では子どもにも恵まれ、幸せな毎日を送っています。お互いに健康には気をつけて、少しでも長く元気に過ごすことが今後の目標です。
著者:西山百々/女性・主婦
イラスト:すうみ
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています
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