彼の実家で挨拶を兼ねた食事会を開いてもらい、和やかに会話をしていると、彼の妹がスマホを持って「SNSのアカウント交換しよ~」と、私の隣に座ってきました。彼女は、イマドキの女の子という感じで、地味な見た目の私とは正反対のタイプ。一体何を言われるのかドキドキしていたのですが、意外にも好意的で拍子抜けしました。
私は彼女に言われるがまま、連絡先とSNSを交換し、そこから他愛もないやりとりが始まったのですが、徐々に彼女の本性が見えてきて……。
失礼なメッセージを連投する彼の妹
「兄があなたみたいなタイプと付き合うなんてビックリ!」
「歴代の彼女は超美人ばかりだったのに〜! どこで出会ったの?」
「兄のまわりは、イケメンや美女が多いのに、どうしてあなたを選んだんだろう? 物珍しかったのかな? どうやって兄を騙したの?」
などなど。かわいい絵文字やスタンプを織り交ぜながら送られてきますが、読むと失礼なメッセージばかりです。確かに、彼はイケメンで頭もよく、人望もあって、常に輪の中心にいるような人。私はというと、服装はシンプルなものばかりで、美容やお洒落とは縁遠い地味な見た目に、健康的な体型です。
そんな私たちは、大学の図書館で同じ本を取ったのが出会いでした。同じ作家が好きで、その作家のトークショーで偶然再会したことをきっかけに、付き合うようになりました。彼女にその話をすると「なにそれ、地味!」と、ひと言。私は、素敵な出会いだと思っていたのですが……。
暴言を吐かれ、婚約破棄を迫られる私
その後も、ことあるごとに嫌味なメッセージを送ってくる彼女。「彼が言っていたのはこのことね」と思いましたが、私は仕事上、厄介な人の相手をすることが多いので、嫌味や理不尽なことを言われてもなんとも思わないのです。そんな彼女からのメッセージを、私があまり真剣に相手にしないことが面白くない様子。
両家の顔合わせも済み、式場の予約をしたころ、私は彼女から呼び出されました。指定された待ち合わせのカフェに到着すると、さっそく……。
「いい加減気付けよ、ブス!」
「兄との婚約は破棄しろ!」
私と彼とでは釣り合わない、私のようなクソ芋女と家族になるなんてあり得ない、などと次から次へと暴言を浴びせられました。私は、双方の両親はこの結婚を祝福してくれているし、私たちも別れるつもりはないと伝えました。
すると、彼女はさらに怒りをあらわにし、衝撃的なこと発言をします。
職場に来るなら大歓迎!
「は? 別れない? 私、怖い人たちと仲いいけど?」
「怖い人たちと職場まで押しかけてもいいの?」
彼女は、不敵な笑みを浮かべます。怖い人たちというのがピンとこなかったので、どういう人かと聞くと、半グレとか反社と繋がっているヤバイ人だと言う彼女。
「私の職場、知らないの?」
大人数で押しかけると言うので、私は来たいならぜひどうぞと言いました。そして、彼から聞いていなかったようなので、私が何の仕事をしているか教えてあげることにしました。
「え?」
実は、私は警察官なのです。つまり、職場は警察署。半グレや反社と繋がりがある人が、集団で来てくれるならこちらも手間が省けるので大歓迎です。私が満面の笑みでそう伝えると、彼女は急にオロオロし始めて、ちょっと不良なだけだと言い直したので、他人に迷惑をかける行為をしているなら署で話を聞かないといけないと言うと、無言になってしまった彼女。
そして、気まずそうに「今のはウソ」と言うので、私を怖がらせたくてウソをついたなら脅迫罪になるかも……と教えてあげました。何も言い返せなくなってしまったのか「とにかく絶対結婚は許さない!」と言って、帰ってしまいました。
その後、彼女は彼から叱られ、私と仲良くできないなら絶縁すると言われたようで、私と仲良くする道を選んだようです。後日、彼女から謝罪メッセージが届き、彼からもなんとか許してほしいと言われたので、私も今までのことは水に流すことに。これからは、大切な義妹に悪い虫がつかないよう、しっかり守ってあげようと思います。
◇ ◇ ◇
少女漫画から飛び出してきたような完璧なお兄さんは、妹から見ても理想の男性像だったのかもしれませんね。素敵なお兄さんには、素敵な相手と結婚してほしいと願う気持ちもわからなくもないですが、見た目がすべてではありません。しっかりと相手の中身を見てほしいものです。家族になる人ならなおさら、初めから敵意を向けるのではなく、好意を持って接することができるといいですね。
【取材時期:2024年11月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。