期限付きで専業主婦になりたいと言った私に、「俺はちょっと賛成できないかな」と反対気味な夫。
「経済的なことも考えると、俺一人で家計を支えていくのはちょっと……」と言う夫に、「計算してみたけど、意外といけそうなの!」「早期退職金も入ると思うし!」と私。すると夫は怪訝な顔をし始めたのです……。
突然気難しくなった夫
「計算してみただと……?」と言って、しばらく夫は無言に。
機嫌を損ねてしまったのかと思いつつも、私は「絶対にあなたに迷惑かけるようなことしないから」「お金に関しても、子どもに貧しい思いをさせるようなことはしないよ」「初めての育児だし、後悔したくないの!」と夫を説得。
すると、「もういいよ、わかったよ」「お前の好きなようにしてくれ」と突き放すような言い方をした夫。
「やっぱり私が仕事を辞めることに反対なの?」「大事なことだし、ちゃんと話そう?投げやりにしてほしくないよ」と言ったのですが、夫は「いいって言ってるだろ!」「子どもを産むのはお前なんだし、お前の好きにしろよ!」「俺は忙しいんだ、じゃあな」と、一方的に電話を切ってしまいました。
音信不通の夫
2週間後――。
私は無事に男の子を出産。産気づいたときから夫には連絡していたのですが、夫は未読スルー。結局一人で出産を迎えました。
自分の両親と義両親に出産を報告した私。とくに義母の喜びようはひとしおで、「おめでとう!よくがんばったわね!」とすぐに電話をくれました。
「これから大変なこともあるだろうけど、楽しいこともたくさんあるわよ!」「でも、産後すぐは体が回復していないから、無理しちゃダメよ?もし育児の事で何かあったら、遠慮しないで話してね」
喜びながらも私のことを気遣ってくれる義母に、私は夫と連絡がつかないことを打ち明けました。
「実は、出産のときも来てくれなくて……」「出産報告のメッセージも既読にならないし、電話も全然つながらなくて……」「何かあったんじゃないかと、不安で不安で……」
「大事な子どもの誕生なのに、息子ったら何考えてるのかしら!」「しかも産後で不安定な時期のあなたに心配までかけて……」「こんな非常識な行動とるなんて……ごめんなさいね、息子に代わって謝るわ」と義母。
そこで、私は出産前に夫と一悶着あったことを話しました。すると、「あなたが仕事を辞めることに対して経済的な不安があったのかもしれないけど……でもだからって音信不通はありえないわ!」と義母は激怒。
義母のあまりの剣幕に驚いた私は、「初めての子どもだし、夫もプレッシャーに感じていたのかもしれません」「仕事も忙しいって言っていたし……私、また時間をあけて夫に連絡してみますね!」と言ってこの話を終わらせました。
義母の決断と夫の末路
そして、退院後――。
私は子どもを連れて、タクシーで夫の待つ家に帰ってきました。
しかし、玄関を開けると、違和感が……。夫の荷物が家からごっそり消えていたのです。
慌てて夫に電話すると、「ようやく帰ってきたか!」とすぐさま電話に出てくれた夫。今までまったく連絡がつかなかったというのに……。
「俺はもう二度とそこには帰らないからな!」「お前なんかと一緒にいる価値なんてないんだよ」「金づるに使われるガキの顔なんて見たくもないし」
突然の暴言に、思わず言葉を失った私。しかし、産まれたばかりの子どもを「金づる」呼ばわりされるいわれはありません。「金づるってどういうことよ?ちゃんと説明して!」と夫を問い詰めました。
「お前が妊娠してすぐに、両親が遺産の話をしてきたんだ」「俺の両親は普通のサラリーマンだが、祖父母がかなり不動産を持っていたらしくて、とんでもない資産額があるらしいんだ」「しかも母さんたちは初孫に浮かれて、『金銭的な援助が必要ならいつでも相談しろ』って言ってくれたんだ!」
あの義母なら言いかねないだろうな、と思いながらも、私はただ黙って聞いていました。まだ夫の暴言の理由がわからなかったからです。
すると、「……ったく、いつまで白を切るつもりなんだ!?お前は俺の実家の資産のこと、すでに知ってたんだろ?」と夫。私は思わず「はぁ?」と間の抜けた声を出してしまいました。
「出産を理由に専業主婦になりたいだって?ラクしたいだけだろ!」
「俺の実家が資産家だからって……。財産目当ての女とは離婚する!」
「それはよかったわ」
「え?」
「あなたが離婚するつもりでいてくれてよかったって言ってるのよ、このバカ息子!」「黙って聞いていれば……お前にこそ遺産は何ひとつ渡さないからね!」と夫を一喝したのは義母でした。産後の私の体調を気遣って、産院に迎えに来てくれた義母。自宅には義母と一緒に帰ってきたのです。
「あんたとまだ連絡がつかないっていうから、私が心配で迎えに行ったのよ!」「子どもだって生まれたばかりなのに、こんな大変な時期に勝手に出て行って、離婚を言い渡すなんて……」「それに、こんな姑とも仲良くしてくれるお嫁さんがお金目当ての最低人間だと思う!?」
さらに義母は続けます。
「財産目当てはあんたのほうでしょうが!」「実家をあてにして早速仕事を辞めたくせに!」
音信不通な夫を心配して、私の代わりに夫の会社に電話してくれた義母。「先日、退職されました」と告げられて、とても驚いたそうです。会社の人によると、夫は「実家の資産があるからもう働く必要なくなったんで」と言って浮かれたテンションで退職したそうな……。
「あんたは財産目当ての嫁と離婚したいんでしょ?なら私が財産目当ての息子と縁を切りたがってもおかしくないわよね?」「というわけであなたとは縁を切ります。そして絶縁した息子には遺産も何も残しません」「うちの資産は全部、産まれたばかりのかわいい孫に相続させるわ!」
その後――。
怒った義両親が夫の身辺調査を依頼したことにより、夫の浮気も発覚。この期に及んで夫は「離婚したくない」とごね出しましたが、私は「浮気してる夫なんて無理!」「子どもの教育にもよくないから離婚して!」と許しませんでした。
義両親のサポートもあって、私たち夫婦の離婚は成立。元夫からは毎月、しっかりと養育費を支払ってもらっています。
今、私はシングルマザーとして、息子と2人で暮らしています。義両親は宣言通り、私たちに惜しみなく援助してくれているので、何不自由ない生活を送れています。義両親には感謝してもしきれません。そんな私にできることは義両親に孫の顔を見せること。体調が落ち着いたいま、私は息子を連れて頻繁に義実家を訪問したり、また定期的に写真を送ったりしています。
【取材時期:2024年10月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。