「施設はお金もかかるし、何より世間体が気になるからダメだ!」と私の提案をバッサリ切り捨てた夫。しかし、素人が介護するほうが義母にとってもつらいかもしれませんし、世間体を気にする意味がわかりません。
私は「亡くなったお義父さんの遺産、あなたが放棄したから全部お義母さんが相続したのよね?それを使いましょうよ」と食い下がったのですが、夫は「それこそ親の遺産を食いつぶしてるって思われるだろうが!」と激昂。
結局、「嫁が母さんの面倒を見るのは当然だろ!」「今までお前と母さんの仲を俺が取り持ってやってたんだぞ!少しは恩返ししろ!」と夫に言われ、私は仕方なく義母との同居し、お世話を続けることになったのですが……?
認知症の義母の散財癖
同居から5年後――。
義母の認知症はますます悪化。私は限界を感じ、再び夫に「もう一度、施設のことを検討してくれない?」と言いました。
「でも、近所の目があるし……」「それに、お前だって介護の腕が上がってきたし、大丈夫だって」と言う夫。同居当初は夫も義母の介護を手伝ってくれる約束でしたが、結局夫は仕事を理由に逃げ回っています。そのため、介護の負担はすべて私に。
「もうお義母さんの認知症は危ないところまで来てるのよ」「勝手に玄関から出て行こうとするし、徘徊なんてしたらそれこそ近所の目が気になるでしょ!?」「それに、最近じゃ訪問販売にも狙われているみたいで、この間は健康食品を50万円分も買おうとしていたのよ!?」
健康食品は私がすぐにキャンセルしました。しかし、同じような訪問販売が頻繁に訪ねてくるようになったのです。健康になれる石や願いの叶う壺……、次から次へと購入しようとする義母。私が止めに入っても、「あんたには関係ない!私のお金なんだから!」と説教される始末。
さすがの夫も、今回ばかりは施設を検討してくれると思ったのですが……。
「でもさ、母さんは杖使わなきゃ歩けないから、徘徊しても遠くにはいけないし」「訪問販売だって母さんが価値を感じたから買おうとしたんだろ?」「あれもダメ、これもダメって制限したら母さんがかわいそうじゃないか!」
まさかの夫の回答に、私は口をあんぐり。結局、夫は「母さんが外を歩きたいなら、好きなだけ歩かせる!」「母さんの金であることには間違いないんだから、使いたいだけ使わせてあげよう!」と言って、この話を終わらせにかかってきたのです。
心身ともに疲れ果てていた私は反論する気力さえありませんでした。だから、「わかった、あなたが言ったとおりにする」とだけ答えて、実際夫の言葉どおりにしたのでした。
介護と夫婦生活の終焉
それから15年後――。
20年にわたる介護の末、義母は亡くなりました。夫の希望で、義母は家で看取りました。
葬儀を終えた後、義母の部屋の整理をしていた私に、外出先の夫から連絡がありました。
「今まで介護お疲れ様」「母さんが安らかに眠れたのもお前のおかげだ、心から感謝してるよ」といつになく私にやさしい言葉をかけてきたのです。
しかし、続く夫の言葉に私は言葉を失います。
「でさ……。実は、俺と離婚してほしいんだよね」
「ずっと前から付き合ってる20代の女の子がいて、若くてめっちゃかわいいんだ!」「お前は介護疲れでいつも元気ないし、全体的にボロボロのおばさんじゃん?」「浮気のひとつくらいしたくもなるだろ!」
私に義母の介護を押しつけておいて、自分はのうのうと浮気していたなんて……。夫の言ったとおり、私はボロボロになるまで義母と夫に尽くしたのです。それを、こんな形で裏切られるなんて……!
「俺は若い美人の彼女と再婚する!母さんの遺産で新しい人生を歩むんだ!」
「頼むから、離婚届にサインして出て行ってくれないか!?」
「全然いいけど?」
「へ?」
私の返答に驚いたのか、一瞬間があったものの、「お前には悪いことをしたと思ってるよ、でも好きになっちゃったものは仕方ないだろ?」と開き直った夫。「母さんの遺産も入るし、お前にもちゃんと慰謝料は払ってやる」「俺も思い切って仕事を辞めてきたし、これからは若い妻と新しい人生を歩むんだ!」と言う夫に、私は真実を告げることにしました。
義母の置き土産と夫の末路
「若い奥さんと、無一文の新婚生活楽しんでね」と言うと、目をむいた夫。
「無一文なわけないだろう!」「俺たちには億を超える遺産があるだろ、最後まで自宅介護でほとんど手をつけてなかったんだから!」と言う夫に、「通帳確認してないんだ?」「それもそっか、確認する暇もないくらい若い彼女と遊んでたんだもんね」と言い返します。
私は夫に言われたとおり、義母を自由にさせていました。不動産も株も、そして貴金属類もすべて義母が売りました。それも悪徳業者に買い叩かれて、二束三文で売ってしまったのです。
「お、おいおい、嘘だろ!?そんな、億の資産が……全部消えてるって……?」と言う夫。「私はあなたの言葉に従っただけだから」と言うと、夫は「俺は仕事まで辞めてきたのに……」とへなへなと床に座り込んでしまいました。
「私も、お義母さんが亡くなったら離婚を切り出すつもりだったの」「自分の親の介護なのに一切手伝ってくれないし、葬儀後まで私をねぎらってくれることもなかったからね」「離婚届はもう用意してありますから、今すぐサインしてくれる?」
その後――。
「金がなくても愛がある!」「俺には若い彼女と結婚するんだからな!」と言って、すぐに離婚届にサインしてくれた夫。その日のうちに役所に離婚届を提出し、私と元夫は他人になりました。もちろん、慰謝料と財産分与もしっかりいただくことで合意しました。
しかし、浮気相手の女性は、元夫が無一文であることを知った途端に姿を消してしまったそう。そして、生前、義母が借金をしていたことも発覚。義母の遺産をすべて相続し、借金を背負うことになった元夫は「よくもだましたな!」と恨み言を言ってきましたが、私も義母が借金をしてまで散財していたなんて知らなかったのです……。しばらくして元義実家が売りに出されていました。おそらく借金のカタに元夫が売ったのでしょう。
今、私は小さなアパートで一人の時間を楽しんでいます。慰謝料と財産分与でもらったお金があるので、無駄遣いをしなければこのままのんびりと暮らしていけそうです。
【取材時期:2024年11月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。