彼の両親は離婚しており、彼は母親に育てられました。しかし、父方の祖父が資産家だったらしく、その遺産が巡り巡って彼のもとに来たと言うのですが……。
勝手に話を進める彼
彼が相続する予定なのは、3億円と大きな豪邸。私はあまりの金額の高さにくらくらしながらも、「ちゃんといろいろ確認してからでないと……」と浮足立つ彼に伝えました。
しかし、彼は「そんなこと言ってる間にほかの親族に横取りされたら困るだろ?」「もう俺は来月で仕事辞めるって上司に伝えてきた!」「お前は慎重すぎるんだよ、ときには思い切ってやってみることのほうが大事だったりするんだぞ!」と聞く耳を持ってくれません。
それどころか、「もう弁護士さんに相続手続きお願いしたから!」と言い出したのです。
思わず「嘘でしょ……」とこぼしてしまった私。すると、彼は「そんなに文句があるなら、いっそのこと別れる?」「俺には3億と豪邸があるから、お前じゃなきゃいけない理由なんてないし」と私に別れを切り出してきたのでした。
お金につられた友人
1時間後――。
どうしようかと頭を悩ませていると、結婚式に招待した友人から「久しぶり~」と連絡がありました。
「聞いたわよ、彼、3億の遺産を相続したんですって?」「資産家の孫だったなんてすごいじゃない!」と言う彼女。私の彼とは仕事の取引でたまたま出くわし、そこで相続の話を聞いたのだそう。
「憧れじゃない、豪邸に住むなんて」と言う彼女に、私は「詳しくはまだ教えてもらってないし……。彼ったら、勝手に話を進めちゃって……」とため息をつきながら言いました。
すると、「何が気に入らないのかわかんないわ」「私だったら喜んで彼の遺産相続に大賛成するのに……。っていうか、もう大賛成しちゃったんだけどね!」と彼女。そして、彼女は「私も会社辞めなきゃ!辞表書かなきゃ!」と言い出したのです。
「どうしてあなたまで会社を辞めるのよ?」と尋ねると、「だって、私がその豪邸に住むことになるんだもん」と彼女。
「理解しようとしないあんたより、理解して肯定してくれる私のほうが妻にふさわしいでしょ?」「今さら隠すことでもないし、暴露しちゃうけど、私と彼付き合ってるのよね」「仕事で再会して連絡先交換したあと、彼から食事に誘われたの!ちょうど付き合って10カ月になるわ」
まさか、彼が私の友人に手を出していたなんて思いもしませんでした。
「もうちょっと普通にお付き合いを楽しもうかと思ってたんだけど、3億も相続するってなったら話は別よね!」と言う彼女。
1時間前、あまりにあっさりと別れ話を持ち出した時点で、私はもう少し疑いを持つべきだったのです……。私は彼とも、友人との関係も諦め、自分の荷物をまとめることにしました。
短絡的な男とがめつい女の末路
1週間後――。
「さっそく離婚してくれてありがとう!あんたの旦那、奪っちゃってごめんねw」
「彼との婚姻届け出してきたところよ♡これからは憧れの豪邸暮らしよ~」
「がんばってね!」
「は?」
続けて私は「それと私、独身よ?」と伝えました。一瞬言葉に詰まった友人でしたが、
「私の幸せのために離婚してくれたから独身だったって意味よね~!ごめんね~!」と言ってきました。
しかし、私は一度も入籍はしていないのです。だから、離婚もしていません。
もともと浮気癖のあった彼。婚約したあとも、複数の女性と関係を続けていました。しかも、彼は浮気相手の一人を友人として結婚式に呼んでいたのです。
私が浮気のことに気づいたのは、式の直前でした。キャンセルするかどうか迷ったものの、彼の土下座謝罪を受け入れ、そのまま予定通り式を挙げることに。しかし、また浮気を繰り返されるかもしれないと思った私は、婚姻届を出さずにおいていたのです。彼も「それでいい」と言ってくれていたので、婚姻届は結局出さずじまいでした。
「浮気癖?土下座して結婚式挙げたのに、また浮気したってこと?」と言う友人に、「そのとおりよ」と告げた私。少なからずショックを受けたようでしたが、すぐさま友人は「でも、豪邸は避暑地にあるらしいから、引っ越せばほかの女との交流もなくなるはず!」「彼、私だけを見てくれるに違いないわ!」と言い出しました。
しかし、その豪邸は維持や管理するだけで高額のお金が消えていくのです。
彼の祖父は資産家ではなく、宝くじで高額当選しただけの人。当選の勢いで避暑地に豪邸を建てたそう。しかし、彼の祖父はずいぶんと見栄っ張りな人だったようで、遺書には「3億円と豪邸を相続させる」と書いていたのです。
現金も少なからずあったようですが、現在残っているのはたったの300万円ほど。豪邸の維持費と固定資産税でだいぶ持っていかれてしまったそう。
彼の親族の多くは、扱いがめんどうな豪邸の相続を放棄。しかし、彼は豪邸に目がくらみ、相続してしまったのです。
「でも!豪邸を売ればいいじゃない!」と言う友人に、私はさらに説明を続けました。
「避暑地にはたくさんの豪邸があるそうよ。何年も売れ残っている物件もたくさんあるみたい。維持費を支払いながら、売れるまでずっと頑張ってみてもいいかもしれないわね」
維持や管理に相当な費用がかかる物件のため、売りたくても買い手もなかなか見つからないという現実を知らない浅はかな友人……。
ちなみに、彼は貯金もしていません。豪邸の維持や管理の費用で、苦労することは目に見えています。
「私への慰謝料も2人に請求するわ。しっかり支払ってね!」と伝えると友人は固まっていたのか返事がありませんでした。
その後――。
後先考えずに相続してしまった彼は、結局遺産のことを友人に丸投げ。そのころには現金300万は彼が使い切ってしまっていたそうです。彼と友人は、豪邸の維持・管理費と私への慰謝料支払いのため、日夜問わず働いていると共通の友人から聞きました。
私はあえて全然知らない土地へ引っ越してみました。新しい生活は大変ですが、仕事や趣味を通じて、新たな知り合いが増えるのは楽しいものです。ちなみに、しばらくは恋愛ごとはいいかな……と思っています。
【取材時期:2024年12月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。