「週末ぐらいゆっくり休ませて」と言っても、聞き入れてくれない夫と義母。それどころか、夫からは「昨年父さんも亡くなって、母さんはさみしいんだ」「ろくに遺産も残っていないから旅行とかの気分転換に行くのも難しいし……週末くらいはにぎやかに過ごしたいっていう母さんの気持ちもわかってくれよ」と私が悪者にされる始末。
私のイライラが限界に達しようとしていたある日、義妹から「お義姉さん、本当に母と同居するつもりですか?」と連絡が来て……?
陰で進められていた同居話
同居の話なんて一切聞いていなかった私。正直に伝えると、「やっぱり……」と義妹は何やら合点がいった様子でした。
「この間、母から私に『これからは兄夫婦と同居するから、一応あんたにも報告しておくわね』って連絡が来たんです」「兄は『母の希望を叶えるのが息子の役目だ』の一点張りで……お義姉さんが納得してるのかを聞いたら『うるさい黙れ!』と怒鳴られて……」
義妹によると、すでに義実家の荷物はほとんどが処分されているそう。そういえば、夫がつい先日、「使っていない部屋を俺の書斎にする」「仕事のものも置くから絶対部屋には入るなよ」と言ってきたような……。
「たぶん、そこに母の私物が運び込まれていると思います」「きっと真正面から同居をお願いしても断られると思ったんでしょうね、だからなし崩し的に同居に持ち込もうと……」「うちの母と兄が本当にすみません……」と義妹。
少々度が過ぎているとはいえ、夫が親を大切にする姿勢は素敵だと思ってある程度は目をつぶっていた私。しかし、最近の毎週末のアポなし訪問と、私に黙っての同居……親を大切にすることはいいことですが、だからといって嫁を雑に扱っていいわけではありません。
「もう本当に限界だわ……」と言う私に、「それってつまり……離婚とかも視野に入れるってことですか?」と尋ねてきた義妹。「むしろ離婚しか考えられないわね」と言うと、義妹は「もし本当に離婚するときは、私にも声をかけてくれませんか?」「私も一緒のタイミングで絶縁したいので!」と言ってきたのです。
義母は長男である夫ばかりを溺愛し、義妹は基本的に放置されていたそう。義妹は義母や夫に対してなんの情もないそうです。
「お互い協力して、2人で母と兄から逃げましょう!」と言う義妹に、私は強くうなずくのでした。
家を追われた妻
2週間後の週末――。
またもアポなし訪問してきた義母。私はそのとき買い物中でした。義母が来た途端、夫は私に連絡をしてきて、私に帰って来るなと言ってきたのです。
「いつも母さんのアポなし訪問を『気が休まらない』って嫌がってただろ?」「お前が家から出たまま、外で勝手にリフレッシュしてくれば問題解決だろ!」と夫。そこは私たち夫婦の家なのに、帰らせてもらえなんて……!
「俺と母さんとの時間を邪魔するな!」
「お前は母さんが帰るまでどこかで時間でも潰してろ!」
「じゃ、実家に帰りまーす!」
「ん?」
私は「言っておくけど、二度と帰らないからね」「いくらでもお義母さんとの楽しい時間を過ごしてちょうだい」と続けました。
「お、おい何言ってるんだ?実家に帰るってどういう意味だよ?」と鈍い夫に、「もちろん離婚するって意味に決まっているじゃない!」と私。
「あんたたちが勝手に同居計画を立てて、お義母さんの荷物を勝手に家に運びこんでることも知ってる」「私には許可なく部屋に入るなって言うのに、お義母さんはアポなしで家に来てもいいなんて、おかしいじゃない」「実家に帰って落ち着いたら離婚届を送るからよろしくね」
マザコン夫の末路
数時間後――。
「母さんはいったん家に帰したよ」「これでもういいだろ、頼むから帰ってきてくれよ」と夫から連絡が。もちろん、私に帰るつもりはありません。
「今さら謝られても遅いのよ」と言うと、「やりすぎたって反省しているよ。本当にごめん」「離婚なんて言わないでくれよ」と反省している様子の夫。
「邪魔な妻と財産分与で貯金を失う代わりに、大好きなお義母さんと好きなだけ一緒にいられるようになるじゃない」「それに、あなたたちにはたんまりとお義父さんの遺産もあるでしょう?」
義父の遺産のことを持ち出すと、「お、おいおい、何を言い出すんだよ」「父さんは遺産をほとんど残してないし、俺もろくに相続してないのはお前だって知ってるだろうが」と焦り出した夫。
「へぇ、現金3,000万ももらっておいて、ろくに相続してないなんて言えるのね」「まぁ遺産は財産分与の対象外だから私には関係ない話だけど……妹さんはどうするのかしらね?」と私。
実は、義妹は生前義父から「遺産はそれなりに残しておいた」「妻と息子が変な使い方をしないように、見ておいてくれ」と言われていたそう。しかし、ふたを開けてみると、実際に相続できたのは数十万円ほど。
私が離婚の準備を進めているなか、義妹は義父の遺産について義実家を調べていたのです。すると、義母と夫が義父が亡くなる直前に遺産のほとんどを自分たちの口座に分散して隠していたことが発覚。義妹は弁護士に頼み、正式な取り分をもらえるよう動き出していました。
「そのうち義妹に訴えられるだろうけど、その前に私との離婚よろしくね!」とだけ言って、私は電話を切りました。
その後――。
元義妹は正当な金額の遺産を受け取り、遠くに引っ越したそうです。遺産の多くを失って節約生活を強いられるようになった元夫と義母は、すっかり親子仲が悪くなったようですが、私も元義妹も知ったことではありません。
私も別の地に引っ越しました。お互い完全にあの親子から逃げきれたようでほっとしています。元義妹とは遠く離れていますが、苦労を乗り越えた仲間として、これからも連絡を取り続けるつもりです。
【取材時期:2024年11月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。