「ミカンがないよ」長女が放った驚愕の一言
葬儀の最中、幼い娘たちはずっと大人しくしていられるはずもなく、斎場の周りをお散歩したり、控室のお菓子を食べたりして過ごしていました。そして、いよいよ出棺前の最後のお別れのとき。私は娘たちに「ひいばあばの横に、お花やお菓子を置いてあげてね」と伝えました。
すると、祖母の遺影をじっと見つめていた長女が、急にこう言ったのです。
「ひいばあばの好きだったミカンがないよ」
さらに「ひいばあばが好きだったお菓子、向こうにあったから取ってくる!」と言い残し、控室へ走っていきました。娘が手に取って戻ってきたのは、海苔を巻いたおかきでした。
蘇る祖母との懐かしい記憶
娘がなぜそんなことを言うのか、私はしばらく考えていました。すると急に、祖母との思い出が蘇ってきたのです。
祖母の家には必ずミカンが置いてあり、遊びに行くといつもミカンの皮を剥いてくれたこと。そして、祖母の部屋にある大きな缶には海苔おかきがたくさん入っていて、「これ食べな」といつも差し出してくれたことを。
私がすっかり忘れていた大切な記憶を、なぜか長女が教えてくれたのです。驚きとともに、大好きだった祖母への思いが溢れ、私は急に涙が止まらなくなりました。涙をこらえながら、「ひいばあばが好きだった海苔のおかき、いっぱい入れてあげようね」と、長女と一緒に棺へと納めました。
曾祖母の記憶がないはずの長女が、なぜ好物を知っていたのか不思議でなりませんでした。後日、長女に「どうしてひいばあばがミカンやおかきが好きだってわかったの?」と尋ねてみると、娘は「ひいばあばが言ってたよ」と言うのです。その答えには驚きましたが、最後まで自分の意見をしっかり伝えるなんて実に祖母らしいなと、少し笑ってしまいました。
本当に不思議な出来事でしたが、棺に自分の好きなものが入っていないことに気づいた祖母が、長女にこっそり伝えたのでしょうか。祖母と最後にお話できた長女のことを、ちょっぴり羨ましく感じた出来事でした。
著者:三尾ちさき/30代女性。2018年と2021年生まれの女の子のママ。2児のワンオペ育児に奮闘中。自動車部品の設計職を経て在宅ワークに転身。
イラスト:ふー
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年1月)