大量出血をして、私が危ない状態だと知っても、夫は病院にも来てくれませんでした。さらに、病院からの連絡に夫は「母体はどうなってもいいんで、子どもの命を優先してください」と言ったそうです……。
そして夫は、出産直後の私にもう1人息子がほしいと言いました。私を労う言葉もなく、生まれたばかりの息子を見に来ることもなく、「これから先、何があるかわからないから、後継の予備を産んでおく必要がある」と言うのです。
子どもを物として、私を子どもを産む道具としてしか見ていない、あまりにひどい夫の発言に、私は言葉を失いました。
後継ぎを産み終えた私は用なし…
私は妊娠までに時間がかかり、難産でもありました。それを懸念した夫は「予備の子どもは他の女に産ませる」と言います。もしも後から生まれた子が、自分は予備だと思われている知ってしまったら、どれほど傷つくことか……。私以外の人と子どもを作るという発言も聞き捨てならないですが、「予備の子ども」という発言を許すことができず、私はブチ切れました。
すると夫は、「それほど後継ぎが重要で、価値のある名家にお前は嫁いだのだ」と言いますが、そんな家ならいっそ途絶えてしまえばいい。そんなひどい人たちばかりだから、人から恨まれ不幸が続くのではないかと私が言うと、夫は逆上。「お前はもう用なしなんだよ!」と言われ、後日離婚届を突きつけられました。
そして、「他の女に予備を産ませるから子どもを置いてお前は出て行け」と言い、私だけを追い出し、子どもを取り上げた夫。「お前は女として欠陥品だ」などと乱暴な言葉を浴びせます。さらには、大事な後継ぎにクズの血が流れていると思うと吐き気がすると言って、「クズを産みやがって」などと子どもを侮辱する発言まで……。
そうして私は、着の身着のまま家から追い出され、無理やり息子と引き離されてしまったのです。
しかし、子どもに愛情のない夫に、この家に、子育てができるわけはありません。夫に父親がつとまるはずがなく、結婚前まではバリバリ働いていた私には経済力も十分にあります。裁判をすれば親権を勝ち取れると考えた私は、必ず子どもを取り戻すと決意しました。
連れ去られた?捨てられた?真実は…
「おい、大事な後継ぎを返せ!」
「勝手に連れ去るなんて犯罪だぞ」
追い出されてから一週間、私が何度連絡をしても無視されていた夫から連絡が入りました。私が息子を連れ去ったと激怒しています。
「私は追い出されてから会ってないけど」
しかし私は、息子を連れ去ってなどいません。事情を聞くと……。
「え?」
夫は息子を連れ散歩に出かけ、自分がトイレに行くため公園のベンチに泣いている息子をひとりで寝かせておいたと言うのです。1カ月健診も済んでいない子どもを、外でひとりにするなんて……。
夫は今まで、病院の新米パパ向け講座などにまったく参加してこなかったので、赤ちゃんのことを何も知りません。そんな夫は、泣いている息子をどう扱えば良いのかがわからず、投げ出したのです。
あれだけ跡継ぎを急かした義父母は、育児にはノータッチ。息子が泣き出し、うるさいと文句を言われ散歩に出かけ、目を離し、息子がいなくなったそう。そして、息子がいなくなってからもう3時間も経っていると……。
さらに、警察にまだ届けていないと言います。自分の体裁を考えて通報はしたくないと言う夫。この緊急事態でも自分のことしか考えていない夫に呆れましたが、今そんなことを言っている暇はありません。ひとまず私は急いで警察に連絡をしました。
それから数時間して、息子は無事に保護されました。泣いている息子と夫の姿を見ていたご老人が、置き去りにされた息子を心配して、家に連れ帰ってしまったようです。そして、驚いたご老人の家族が警察に連絡をして、保護されました。
夫は私に、トイレに行った少しの間に息子がいなくなったと説明しましたが、警察の方から聞いた話では、ご老人は夫が帰ってくるまで息子を見守っていようとしてくれただけ。しかし、どれだけ待っても夫が帰ってこないので、夫が息子を捨てたのではないかと思い、家族に相談するためご老人は自宅に息子を連れて帰ったそうでした。
私が無事に息子が見つかったことと、警察の方から聞いた状況を説明すると夫は、「人騒がせな! ボケ老人め! 何が心配だ誘拐と一緒だ」と激怒。しかし、息子を捨てたと勘違いされる行動をしたのは夫です。「お前が言うなよ!」と私が問い詰めると、トイレに行っただけというのは嘘で、本当は泣き止まない息子に困って放置。ストレス発散のためにパチンコに行っていたと白状しました。
ご老人の対応が正しかったとは確かに言いにくいですが、何をどう考えても悪いのは夫です。ご老人からもそのご家族からも十分すぎるほどに謝罪を受けましたが、夫に反省している様子はまったくありません。
そんな人に息子は任せられないと私が言うと……。
自業自得の名家、自ら不幸に!
あくまで跡継ぎは渡せないと主張する夫。しかし、息子を引き取っても何もできない、そんな権利はないと、今回の一件で証明されました。とても父親とは思えない発言の数々。息子を渡せいないのは、愛しているからではなく、家を途絶えさせないため。話し合うこともできないので、私は息子の親権を獲得するための裁判を起こしました。
そして、夫に勝ち目はなく私は完全に勝利。息子を取り戻すことができました。私は今、実家に身を寄せ、両親と一緒に息子を育てています。みんなの愛情を受け、息子はすくすくと成長中です。もう二度と怖い思いをさせないために、何があっても息子をひとりにしない、父親がいなくても絶対に幸せにすると誓っています。
後継ぎを失った夫は、再婚を急いでいるようですが、「子どもを捨てた」という噂がどこからか広まってしまい、あの家は今、絶家の一途を辿っているようです。
◇ ◇ ◇
人を物のように扱う愛のない人たちが、人と人が命をつないで作る一族の繁栄など、どうして願うことができるでしょう。家族一人ひとりがお互いを大切に思う気持ちがあれば、家が簡単に途絶えることなどないはずですよね。赤ちゃんをひとり外で置き去りにするなどあってはないらないことです。やさしいご老人に保護されたから良かったものの、取り返しのつかない事件になっていたかもしれません。親権をもらえないのも当然。妻と息子、2人が幸せに暮らせることを願うばかりです。
【取材時期:2025年1月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。