夫は、私が思った以上に田舎での暮らしに馴染んでいて、安心していました。
そして、この先も長く住むのなら家を購入しようという話になり、あれよあれよという間にこだわりのマイホームが完成したのですが……。
こだわりのマイホームにケチをつける義母
「なんだか目立ちすぎて変な家ね。田舎には暗黙のルールがあるのに。これだから東京の人は困るわ……」
新居の引き渡しを数日後に控え、引っ越しの準備も大詰めの私に向かって、義母は買い物帰りに私たちの新居を見て来たと言ってそんな感想を口にしました。
たしかに、田畑に囲まれた土地にポツンと建つには斬新なデザインかもしれませんが、夫婦で惚れ込んだ建築士に設計してもらったお気に入りの家です。もちろん、役所の許可もきちんと取っていますし、ご近所さんも素敵な家だと褒めてくれたのですが、義母は「このままだと村八分にされる」と言い張ります。
今の時代、村八分にされることはないとは思いますが、せっかくの門出にケチをつけられて、正直いい気分はしないまま引っ越しをすることになったのです。
引っ越し早々、泥棒…!?
無事に引っ越しを終え、数日が経ったある日のこと。私が仕事から帰ると、玄関の鍵が開いていました。夫が先に帰っているのかと思い、家の中に入りますが、夫の姿はありません。そして、家の中はかなり散らかっていて、私は「泥棒!?」とパニックに。
しかし、ふと足元を見ると、そこには義母お気に入りのハンカチが落ちていたのです。まさか……と思いつつ、義母に電話をかけると、あっさり家に入ったことを認めました。田舎では玄関の鍵を閉めないことも、ご近所の家にあがることも当たり前だと言い、悪びれる様子もありません。
それどころか、私の下着が派手だとか、息子にはもっといいものを食べさせろとか、私たちの生活にあれこれ口を出してきて、私はウンザリ……。最後にはまた「村八分にされるわよ」と言って、電話を切られてしまいました。
私は一連の出来事を夫と義父に報告。2人とも、さすがにやりすぎだと怒ってくれて、義母が言う「田舎のルール」なんてものは、存在しないことも確認しました。
田舎では普通?勝手に家に入る義母
それから数日後。買い物をしていると、義母から電話がかかってきました。電話に出ると、すごい剣幕で怒っている義母。
なんと、私が煙状の防虫剤を散布して出かけたタイミングで、ちょうどわが家に入ったようで、煙を吸い込んで息苦しくなった拍子に咳込んでしまい、そのまま転倒。腰を強打して立ち上がれないらしく、今すぐ助けに帰ってこいと言います。
「また勝手に家に入ったんですか?」
私にそう言われ、義母は苛立った様子で普通のことだと反論してきました。
「田舎じゃ普通よ!何が悪いのよ!」
義母はご近所さんに片っ端から電話をかけ、非常識な嫁のせいで怪我をしたから村八分にしてくれと言っていたようで……。私が家に着くと、私を心配して義父や、ご近所の方々がわが家の前に集まっていました。
「普通じゃないそうですけど?」
その場にいた人たちは「人の家に勝手に入って物色するのが普通……? 聞いたことないわよ」「非常識はどっちだよ……」と、口々に言っていたのです。
「え?」
そして、最後に義父が「村八分にされる前に、出ていってくれ……」と、静かに言った後、義母は私が呼んでいた救急車に乗って隣町の病院へと運ばれていきました。
隣町には義母の妹が住んでいて、義母はそのまま妹と暮らすと言って、しばらくして義父に離婚届を送ってきたようです。
その後、私たちが平穏な田舎暮らしを手に入れたのは、言うまでもありません。ご近所さんとも適度な距離感を保ちながら、楽しく過ごしています。
◇ ◇ ◇
田舎だろうが都会だろうが、他人に必要以上に干渉をしないのが、お互いが平穏に暮らすための暗黙のルールではないでしょうか。無意識に自分の価値観を他人に押し付けないよう、気をつけたいですね。
【取材時期:2025年1月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。