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「監視されているようで嫌だわ」1人暮らしになった母を遠距離から見守るため導入したものは【体験談】

私の実家は車でも電車でも片道10時間はかかる距離。1人いる兄は隣の県に住んでおり、80代の父母は2人暮らしでした。しかし、1年ほどの入院生活を経て、父が亡くなりました。いよいよ1人暮らしとなった母をどう支えていけば良いのか。遠距離介護についていろいろ模索を始めたところで、ネットワークを使った見守りカメラを導入してみたときのお話です。

父と暮らした家に住み続けたい母

父は亡くなりましたが、母の希望はずっとその家に住み続けることでした。父と続けてきた畑仕事を少しずつでもおこないながら、父の菩提(ぼだい)を弔う(死後の冥福を祈る)毎日を過ごしたいと言います。母にはこれといった大きな既往症はなく、足腰も比較的しっかりしています。1年ほど続いた父の入院生活の間、母は実質1人暮らしができていたので、兄も私も、今は母が願う通りにさせてあげたいと思いました。

 

ただ、いくら健康体と言っても母の安否をより注意して確認するようになりました。父が入院していたとき、着替えを持って行くなど数日に1度は病院を訪れていた母。看護師の方々も母の顔を覚え、「暑い中よく来られましたね。奥さんの体調は大丈夫ですか?」などと声をかけてくれていました。日にちが空くと、病院から「そろそろ着替えを持ってきてください」と母に連絡が入ったり、母に連絡が取れないときは兄に電話が入ったりしていたので、ある意味、病院見舞いが母の健康チェックの役割を果たしていました。母もいつ病院から電話がかかるかもしれないと思って、携帯電話を持ち歩いていました。

 

ところが、父が亡くなってしまうと母は病院へ行く必要がなくなり、携帯電話もまったく持ち歩かなくなりました。言わなければメッセージを見ることもしません。母に連絡を取るのは、家の固定電話だけとなってしまったのです。

 

母の安否を確認するため見守りカメラを導入

夜に固定電話にかければ、たしかに母と話すことはできます。でも、かけても出なかったりすると、「倒れているんじゃないか」、「具合が悪いんじゃないか」と悪いほう悪いほうへ考えて落ち着かない時間が過ぎます。あとから入浴中だったとわかり、「なぁんだ」とホッとすることも。

 

そんなとき、電話で話すことがあまり得意ではない兄が、ある日方法を見つけました。「今、実家に来てて、ネットワーク型の見守りカメラ取り付けたから、映像を共有しておこう」と言い、実家の台所を出てすぐの廊下にカメラを付けたとのこと。私のスマートフォンにアプリを入れて登録すると、見ることができました。天井からのアングルで、リアルタイムの様子はもちろん、人が行き来した時間の映像が記録されています。動きを察知したらスマートフォンに通知が来る設定もできます。

 

「なかなかいいんじゃない? 映像もクリアだね」と私がカメラ越しに話しかけると、声が届いたようで、兄は満足気に頷いた一方、母は怪訝な顔をしてカメラを見上げていました。「こんなカメラなんか付けて。監視されているみたいで嫌やわ」不満気な様子でした。

 

 

お互いカメラに慣れていって

「でもね、母さん。母さんが動いていますって通知があるだけで、私たちはとても安心できるんだよ。ほかの方法があるかもしれないけれど、まずはこれで試してみようよ」。渋々ながら母の見守りカメラ生活が始まりました。実は、母が通るたびに通知が来るので、最初のころ私は気になっていちいち映像を確認していましたが、慣れると通知だけで「今日も動いてるな」と思えるようになりました。

 

家に電話をかけるときも、母が台所にいるのを確認してからかけるようになりました。母がトイレやお風呂から慌てて電話にかけ寄る危険もありません。逆に、長く通知が来ないときには、前後の映像を確認すれば、かばんを持って外出したことや、作業着を着て畑に行ったことがわかりました。要所要所で確認できるので、とても便利だと思いました。

 

母はというと、最初は毎回通るたびにカメラを睨んでいましたが、そのうち気にならなくなったようです。電話で、「昨日はどこかに出かけていたの? 大丈夫だった?」と問いかけると、「あらら、カメラでわかったの? そうそう、親戚への贈りものを選びに久しぶりに店に行ったのよ。買いもの、久しぶりだったわ」と話が弾むきっかけにもなっています。

 

まとめ

カメラを気にしなくなった母ですが、毎朝起きて部屋から出てきたときは、カメラを見上げて顔を見せてくれています。私がリアルタイムで映像を見ることはあまりなく、カメラに備わっている会話機能は、母を驚かせそうなので使ったことはないです。それでも、見守りカメラを通じて、お互いの距離感が縮まった感覚はあります。この先もっといろいろな機器や介護サービスを取り入れることになるでしょうが、徐々に慣れていくことで、できるだけ母の願いに沿った生活をさせてあげたいと思います。

 

 

※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。

 

著者:森原あさみ/50代女性・会社員。平日はお勤め、週末は農業。夫、子ども、義父母と暮らしている。多忙でも趣味やスポーツの時間はなるべくキープ。育児、介護、町の行く末までいろいろ気になる。

イラスト:sawawa

 

※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年1月)

 

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シニアカレンダー編集部

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