「この私があんたに連絡をすることになるとは……光栄に思いなさいよね!」と同級生。
「昨日の同窓会で聞いたわよ!」「貧乏母子家庭のあんたが、まさか会社経営者と婚約しているなんてね……」と、大人になっても相変わらず、私のことを馬鹿にしてきて……?
大人になっても変わらない社長令嬢
「中学のときみたいに、昨日の同窓会もボロボロの服で来ると思ってたのに!」「さんざん馬鹿にして笑ってやろうと思ったのに、私の許可もなく欠席なんて許せない!」と同級生。たしかに、中学時代は制服もかばんもお下がりだったので、ボロボロでしたが……。
「玉の輿で一発逆転なんて許せない!」「それに、私より先にあんたが結婚するなんて!それが一番ムカつくわ!」
そんなことを言われても……と返答に困っていると、私の中にある疑問が浮かんできました。
「ねぇ、まだ結婚してなかったの?」「20歳になったらすぐに結婚するって昔から言ってたじゃない」「そのために、社長のパパに頼んで今から素敵な結婚相手を探してもらってるって」
そう言うと、「え、えっと、それは」と慌て出した同級生。「私に釣り合うような人はそうそう簡単には見つからないの!」と、動揺を隠すかのように、上ずった声で言われました。
「ちょっと私より先に結婚するからって調子に乗るんじゃないわよ!」「玉の輿に乗ったとしても、しょせんは成り上がり」「生まれたときから勝ち組の私とは違うんだからね!」
略奪したつもりだった同級生
3週間後――。
「あんたの玉の輿生活は来ないわよ!」「あんたの旦那は私がもらうわ!」と再び連絡してきた例の同級生。
「あんた、最近彼から婚約破棄を言い渡されたでしょう?」「ごめんねぇ~、実はそれ、私と結婚するためだったの!」
社長令嬢の同級生は、同窓会で聞いた情報をもとに、私の婚約者を探したそう。そして、彼に近づいたそうなのです。あまりの展開に私はついていけず、落ち着くために息をふーっと吐き出しました。
一方、同級生の話は止まりません。「私と結婚したいから、あんたとの結婚は辞めるってw」「ついさっき婚姻届を出してきたから、もうあんたの負けは確定よ!」と同級生。
「玉の輿も~らい♡思い切って近づいたら彼が私に一目ぼれしてくれたのよw」
「あなたの婚約者、情熱的で驚いたわ♡会社経営者の旦那は私にこそ相応しいわね」
「そうね!お似合いよ!」
「え?」
彼はたしかに会社を経営していましたが、実態は今年に入ってから起業しただけの個人事業主。従業員もいなければ、売上だってほとんどありません。彼は看護師である私の稼ぎをあてにして、婚約直後にいきなり会社を辞め、相談もなく勝手に起業して「CEO」と名乗っていたのです。
「ど、どういうことなの……彼の会社が倒産……?」「それに、あんたが看護師になってるなんて……」と激しく動揺している同級生。
「食いっぱぐれのないように看護師になったけど、まさか結婚相手があんな男だと思わなかったわよ」「私のほうから婚約破棄を申し出て大正解だったわ」と言うと、さらに同級生は困惑していました。
「あんたたちの婚約破棄は私のせいでしょ?」「彼が私に一目惚れして、私と結婚したいから婚約破棄を言い渡したって……彼は言ってたもん!」という同級生に、私は「稼ぎをあてにしていた私から婚約破棄を言い渡されて、倒産の借金だけが残されて……そんなときに近づいてきてくれた社長令嬢を彼が逃すわけないでしょ?」と言い返しました。
「あなただって彼のことが好きだから結婚したわけじゃないんでしょ?」「私から略奪したくて、彼を選んだだけ」「お互い様だし、ある意味お似合いだと思うな!」
婚約者と同級生の末路
数日後――。
またも例の同級生から「ちょっと!あんた、今すぐこの男を引き取って!」と連絡が来ました。
「あいつと結婚したせいで、パパに怒られたの!」「あんな男のせいで、私が実家から追い出されそうなのよ!」
どうやら彼女は、私に勝ちたいがために、両親に彼を紹介もしないまま婚姻届を出したそうなのです。しかし、彼女を溺愛している父親は彼女のためにお見合い相手を用意していたそう。最初は「娘が選んだ相手で、しかも立派に会社を経営しているのなら」と喜んでいたそうですが、実態を知って激怒。「実家に戻ってきたかったら、今すぐに離婚してこい!」とまで言っているそうです。
「でも、彼は離婚届にサインしてくれないの!」と同級生。それはそうでしょう、彼からしたら彼女は金づる。どうにかして彼女の実家からお金を引っ張ろうと、彼は彼で必死なのでしょう。
「彼の目的は借金返済なわけだし、まずは2人でがんばって返済したら?」「借金を返し終わったら彼も離婚してくれるかもよ?」と言うと、同級生は「彼の借金、3,000万円もあるなんて!」「私、今まで一度も働いたことないのに!返せるわけないじゃない!」と悲痛な叫び。
「夫婦そろって無職なんて、ますますお似合いじゃない」「どうか2人で幸せになってね、私は私で幸せになってみせるから!」
その後――。
ほかの同級生から聞いた話ですが、例の社長令嬢は実家から絶縁されたそう。私の元婚約者と2人で激安アパートを借り、その近くのコンビニでバイトを始めたそうですが……今まで働いた経験のない彼女にとってはかなり辛いようです。
私は相変わらず病院で看護師として勤務しています。昔からお金に苦労してきたこともあり、借金持ちの男と結婚しなくてよかったな、とほっとしています。今度の連休には、私を女手一つで育ててくれた母を誘って、温泉旅行に行こうと思っています。母と一緒に心から楽しめる時間を過ごすつもりです。
【取材時期:2024年12月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。