みっともないのも好きのうち
私と夫は職場で知り合い、交際を始めて1年たたないころ、夫の異動を機に同棲生活を送ることになりました。付き合っている間、私は実家暮らしだったため、同じ部屋に2人で暮らすのはとてもうれしかったものです。一緒に使う家具を見に行ったり、おそろいの食器を買ったりと、同棲スタートはドキドキワクワクすることばかり。夕食を用意して夫の帰りを待つのも、今後の新婚生活を思わせるようで気持ちの高ぶりを感じていました。
お酒が大好きな夫は毎日欠かさず晩酌をしていたのですが、限度を超えて飲んでしまうこともありました。就寝中に「気持ち悪い」と言ってトイレに向かうも、トイレの手前で嘔吐したり、飲み会の帰宅後に自分が着ていた服に嘔吐したり……。そのたび、夫の具合が心配で、ゆくゆく妻になるであろう私はかいがいしく世話をしていました。
私より8つも年下の夫。若さゆえお酒の量を加減できなかったり、その場のノリで飲み過ぎてしまったりするのでしょう。嘔吐することに幻滅しながらも、姉さん女房の私がわかってあげなければと思っていたのです。また、これから一緒に生きていくともなれば、自分の体を大事にすることが私を大事にすることにもなるのだと、諭すように夫に言い聞かせていました。
そして同棲生活を始めて半年後、私は無事に夫と入籍することができたのです。籍を入れたからといって、生活が変わるということは特にありませんでしたが、左手の薬指にキラリと光るものが存在することに、女性としての喜びをかみ締めるようでした。
深夜の駐車場で憎しみを叫ぶ
そんな幸せな新婚生活を送っていたある日、事件は起こりました。職場の飲み会に行っていた夫に迎えを頼まれ、深夜2時過ぎに車を走らせた私。後部座席に乗った夫はべろんべろんの泥酔状態で、話も取っ散らかっていてよくわからないほどでした。やれやれとあきれながら運転し、部屋のあるアパートの駐車場に着いたその瞬間、耳ざわりの悪い音が後ろから聞こえたのです。
「えっ!?」と私が振り返ると、「ごめん、吐いちゃった……」と謝る夫。なんと夫は車の後部座席で嘔吐してしまっていたのです。4年前、私が初めてローンを組んで買った車。相棒としてこれまで大事に乗ってきたその車が、一瞬にして悪臭に包まれ、様子を変えてしまったのです。
「何やってんの!? 信じられない!!」と、私は嘔吐した夫よりも汚れてしまった自分の車のことにしか気が回らず、泣きそうに謝る夫を振り払うようにして嘔吐物の処理をしました。「ごめん、ごめん、俺がやるから」と言う夫に、酔っぱらったあなたに何ができるの!? と余計に腹が立った上、これまでのこともあって「もう一緒にいたくない!」と、暗い駐車場で泣くように叫びました。
私が夫にできる精いっぱいの腹いせ
その後も、しょんぼり顔の夫を視界に入れないようにしながら、ひたすら車の掃除に力を入れていた私。本当に心の底から腹が立っていて、自分でもその怒りを鎮めるのにどうしようもなくなっていたほどです。「飲み過ぎないようにしないとね!」とこれまで何度も注意し、そのたび夫も反省し、それを信じてやってきたのに、一瞬で裏切られたような気持ちになっていました。
そして怒りが収まらず、何か夫に仕返しがしたいという思いに駆られた私は、2人の幸せの証、絆でもある結婚指輪を、夫がお風呂に入って外しているときに隠すことにしたのです。酔っていたのでそのときは夫も気付いていませんでしたが、翌日になって「あれ?あれ?」と探し回っていました。私をまた怒らせると思ったのか「指輪がない」と言えず、焦っている夫。その様子を私は無言のまま、心の中であざ笑いながら見ていました。
大事にしていた車に吐かれたことがショックだったのはたしかですが、「自分の体を大切にすることが私を大切にすること」だと自覚していない夫に、私の気持ちをぶつけないと気が済まなかったのです。
指輪をなくし、ダメージを負っている夫を見ているうちに私の怒りも落ち着き、その夜「反省しろよ」と思いながら、指輪はしれっと夫の枕元に置いて返しました。
まとめ
このことを機に、晩酌でのお酒の量を減らす約束をした夫。友人や同僚に飲み会に誘われても、私の顔色を伺って参加を控えるようになりました。新婚だった私たち夫婦の主導権は、完全に私が握ることとなったのです。
6年たった今、私はまだその車に乗っています。汚い話ですが、後部座席の窓の隙間をよく見ると、取り切れなかった汚れが少し残っていて、深夜の駐車場での事件を思い出させます。今となっては懐かしく、良くも悪くも新婚当初の初々しい気持ちに戻れるようになりました。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
著者:吉井 マリー/40代・ライター。人生ずっとおもしろおかしく生きていきたい! 2020年、2022年生まれのおてんば娘たちの子育てに日々奮闘しながら、加齢に伴うさまざまな悩みとも闘っている。
イラスト/マメ美
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年1月)
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