「先月入籍したって聞いたよ~」「結婚式はいつやるの?」と同級生。そこまで仲良かったわけでもないので、結婚式に呼ぶつもりはありませんでした。そんな理由で私が口ごもっていると、彼女は「あ~、ごめんごめん!貧乏人のあなたは結婚式なんてできないか!」と言ってきて……?
経営者との結婚を妬む同級生
「貧乏人と結婚する人も貧乏人!だからあんたの旦那だって貧乏人でしょ?」「新婚早々節約生活なんてかわいそう~!」と同級生。
私は母子家庭出身で、中学時代は生活を切り詰めなければならないほど、家庭は困窮していました。当時から、社長令嬢である彼女はそんな私のことを馬鹿にしていたのです。
「夫は会社を経営しているよ」「あなたの実家に比べたら規模は小さいけどね」と言うと、「は!?あんたの旦那って社長なの!?」と彼女の声色が変わりました。
「まぁ、そうなるかな」「社長夫人とは名ばかりで、私は夫の会社には関わっていないけど」と言うと、「そ、そんな……!社長夫人なんて社長令嬢よりレベルが高いじゃないの!」と彼女。
レベルなんてあるんだ……と思っていると、「ちょっと玉の輿に乗ったからって調子に乗るなよ!」「久しぶりに馬鹿にしてやろうと思ったのに!惨めな新婚生活の話でも聞いてやろうと思ったのに!」と言って、彼女は一方的に電話を切ってしまいました。結局、何の内容もない電話でした……。
母がつかんだ浮気の証拠
数日後――。
「最近どう?元気にしている?」と母から連絡が。いつもよりなんだか沈んだ声なのが気になって、「もちろん元気だよ、結婚式の準備も順調に進んでいるし!」と明るく答えると、母は深くため息をついたのです。
「実はお母さんね、あなたに伝えなきゃいけないことがあるの」「あなたの夫は浮気をしているわ」
私は言葉を失いました。だって、先月入籍したばかりなのに……結婚式だって楽しみにしてくれているのに……。そんな夫が浮気なんて……。
信じたくないのと同時に、最近の夫の行動が思い出されました。結婚してから「仕事が忙しい」と言って、なかなか家に帰ってこなくなった夫。仕事関係の出張が続いているようで、この1週間帰ってきていません。ついさっき、「今週末も取引先に会いに行くから帰らない」と連絡がきたばかりです。
「お母さんね、彼が若い子と2人っきりで夜の繁華街を歩いているところを見たのよ」「それで、興信所に調査をお願いしたら……浮気の証拠がたくさん出てきたの」「出張と言って家を空けているようだけど、すべて嘘よ!彼は毎日浮気相手と一緒にいるだけ……きっと今も浮気相手の家にいるに違いないわ!」
「お母さん、今から実家に行ってもいいかな?」「興信所がつかんだ証拠を、私も見たいの……まだ信じられないの」と言うと、「もちろんよ!」と母。
「まずは自分の目で真実を確認しなさい」「私もすべて嘘だと思いたいくらいよ」「……私の大事な娘を裏切るなんて許せないわ!お母さんは絶対にあなたの味方だからね」
その母の言葉を聞いて、私は子どものようにわーっと泣き出してしまいました。
夫の本性と成れの果て
2週間後――。
「最近夫婦仲はどう~?旦那、1カ月帰ってないでしょ?」
「貧乏人が玉の輿なんて生意気なのよw経営者の旦那は社長令嬢の私がもらうわね!」
と、また連絡をしてきた同級生。夫が帰ってきていないことは母以外知らないはずなのに……。
「うふふふふ♡そ・れ・は、彼がこの1カ月間ずーっと私と一緒にいたからよ♡」
同級生の暴露に、思わず「なんですって!?」と声を上げた私。
「彼からは仕事の出張だって聞いているんでしょ?でも実はそれ、ぜーーーんぶ嘘なの!」「私の家で仕事もしていたし、朝から晩までずっと一緒だったのよ!」と同級生。たしかに、夫の仕事はリモートでもできるとは聞いていましたが、まさか全然会社に顔を出していなかったとは……。
「で?これってただの偶然じゃないわよね?」と呆れながらも聞くと、「あんたがムカつくから彼にアタックしたのよ、そしたら簡単に落とせちゃった!」「彼ったら、あんたより私のほうが好きだって!社長令嬢らしい気品があるところが好きだって言ってくれるの!」と同級生。本当に気品がある人は、人の夫に手を出したりしないと思うのですが……。
「え?いいの!?夫の会社は…」
「え?」
身構える同級生に「潰れちゃったけどね」と伝えた私。さらに、「会社が潰れれば、社長なんてただの無職」「それにもともと夫とは離婚するつもりだったし」「未練なんてこれっぽっちもないから、そんな人でよければどうぞご自由に」と続けました。
「はぁぁ!?潰れたってどういうことよ!?」「しかも、離婚する予定って……どっちも彼から聞いてないわよ!」と言われましたが、そんなの知ったことではありません。夫は会社の経営悪化を同級生に知られたくなかったので、離婚のことも含めて状況をすべて隠していたようでした。
「ね、ねぇ、本当にどういうことなの!?」「なんでこのタイミングで……彼、会社は順調だって言ってたのよ!?」
たしかに、彼の会社は順調でした。しかし、年々業績は下がる一方。私との結婚を機に、私の母が資金援助をしていたのですが……。浮気を知った母が援助を打ち切ったため、一気に経営が悪化したのです。
「あんたの母親、貧乏人じゃない!そんな人が彼の会社に資金援助できるわけない!」と彼女には言われましたが、実は私の母は苦労して経営者になったのです。今や年商は億単位の敏腕女社長です。
「そんな母が彼の浮気を突き止めてくれてね……もちろん私は離婚を決めたし、母は即座に援助を中止したの」「本当に、自慢の母親だよ」と言うと、同級生は仰天していました。
「あ、あれ?でも、私が暴露したとき、あんた驚いていたじゃない!」「私たちの浮気に気づいてたなら、さっきのリアクションは演技!?この話、全部嘘なんじゃないの!?」と同級生。
「あ、違う違う!私たちが気づいたのは、別の女性との浮気だよ」「あなたとの浮気は初耳だったから、驚いちゃった!」
興信所の調査によると、夫の浮気相手は3人。その中に同級生の名前はありませんでした。離婚を突き付けたときには「全員と別れるから」と言っていた夫ですが、まさかその時点ですでに私の同級生とも関係を持っていたとは……。
「じゃあ、私は4番目の女ってこと!?」「しかも、社長でもなくなっちゃったし……!!」と慌てる同級生に、「会社倒産の借金もあるし、私への慰謝料もあるよ!」「彼とは勝手に結婚してくれて構わないから、どうぞお幸せに~!」とだけ伝えて、私は電話を切りました。
そして、すぐさま母に、夫にはさらにもう1人の浮気相手がいたことを報告したのです。中学時代の同級生であることを伝えると、「あの子ね?もちろん覚えてるわよ!」「いつも意地悪言われて、泣いて帰ってきていたじゃない……!」と母。
続けて、「ただ、その子への慰謝料請求は難しいと思うわ」「夫婦関係が破綻している状況での浮気だからね……」と言われて、私はがっかり。しかし、母は「大丈夫よ、お母さんが目にもの見せてやる」「早速、動いてくるわね!」と力強く言ってくれたのです。
3日後――。
今度は泣きながら「どうしよう!実家を追い出されちゃった!」と電話をかけてきた同級生。あんなに彼女を溺愛していたご両親がまさか彼女を追い出すなんて……と思って事情を聞くと、「あんたのせいよ!あんたの母親のせいよ!」と彼女。
実は、私の母の会社が、同級生の会社の大口取引先だったらしいのです。母が取引中止を告げたらしく、彼女のご両親は大慌て。直接母に会いに来て理由を聞いて、おかんむり。そして彼女を追い出した、ということでした。
「社長でもないあんな男は振ってやったし、あとはあんたの母親との取引を再開させれば、実家に戻れると思うの」「今までひどいことを言ってきてごめんね、謝るからお母さんに取引を再開してほしいって伝えて」「これからは親友として仲良くしようね!」と手のひらを返したような彼女の態度に、私は思わず笑ってしまいました。
中学時代は毎日家のこと、母のことを馬鹿にされて、大人になってからは嫌がらせ目的で旦那と浮気をされて……。もともと仲良くないのに、どうして今から仲良くできると思ったのでしょう。
「絶対に無理!」「あなたと親友になるくらいなら、そのへんに転がっている石と親友になったほうがましよ!」と言って、私は彼女の連絡先をブロックしました。
その後――。
行くあてを失った同級生は、結局私の元夫のところに転がり込んだそう。社長令嬢から一転、日々ギリギリの生活を強いられているようだと、別の同級生から聞きました。
一方の私は実家に戻りました。することがないとマイナスな方向に感情が引っ張られてしまうので、母の事業を手伝っています。仕事面でも、そして人生においても、やはり私の母は自慢の母親です。
【取材時期:2025年1月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。