唯一問題は、義兄夫婦。まったく義両親の面倒を見ようとはせず、都合のいいときだけすり寄ってくる、ずうずうしい人たちなのです。
義父母の介護が始まって3年。相次いで義父母が亡くなってしまったのですが、義兄夫婦は危篤になっても顔を出すことはありませんでした。
葬儀の最中に抜け出し、そのまま帰ってこなかった義兄夫婦。怒りを通り越して、あきれ果てた私たち夫婦でしたが、今までを上回る、もっとあきれることが後日起こったのです……。
「親のものは俺のもの」家をよこせ!
葬儀が終わり、ホッと一息つこうとした矢先、義兄夫婦が突然現れました。長男であることを盾に、義実家の相続を主張してきたのでした。それを主張するなら、介護も長男として関わるべきだったはずなのに……。
強制されたわけではありませんが、同居介護をしていたのは私たち。いきなり出ていけと言われても困ってしまいます。そして、義兄夫婦は言いたいことだけ言って帰ってしまいました。
どうしたものかと私たちが悩んでいると、「ママ、良かったね!」と、突然言い出した娘が、義実家にまつわる、とんでもないことを教えてくれたのです。そのため、義兄夫婦の望み通り義実家を渡し、私たちは預金をいただくことに。これからどんなことが起こるかも知らずに、豪邸が手に入ったと大喜びをする義兄夫婦。
双方の引っ越しが終わり、義兄夫婦は義実家での生活をスタートさせました。私たちは、義父母の遺産で買ったマンションで暮らします。
震え上がった義兄夫婦は…
引っ越しから数日後、私たちのマンションに義兄夫婦が訪ねてきました。義父母の部屋からバリバリ音がして、遺影が動いたと怯えています。他にも、あちこちからギシギシと不可解な音がすると言うのです。恐ろしくて、慌てて避難してきたそうで、助けてくれと泣きついてきた義兄夫婦。
しかし、助けろと言われても私たちにできることは……。義兄夫婦の話を聞きながら一緒になって怖がることしかできませんでした。
何か義父母に怒られることをしたのか尋ねると、数々の悪事を次々に告白する義兄夫婦。年金暮らしの義父母に何度も金の無心をしたそう。なるほど……。預金を私たちがもらうと言っても、何ひとつ文句を言ってこなかったことに納得しました。
そして、葬儀に最後まで参列しなかった理由は、つまらなかったから。香典を盗み、そのお金で飲み食いし、旅行に行くなど遊びほうけたと白状しました。よくもそんな悪事をはたらいていて、家をよこせと言えたものです……。
義実家には、兄弟を苦労して育てた義父母の思いや家族の思い出がたくさん詰まっています。要介護になったときの不安や、お金をせびられながらも義兄の自立を願う親心、会いたくても顔を見せてくれない義兄への愛しさ。そんなたくさんの気持ちが、きっと今も家中に残っているのでしょう。
義父母が、義兄夫婦の非道な言動をすべて見ているのかもしれません。介護を頑張った私たち夫婦に労いの言葉をかけるどころか、家を奪ってヘラヘラしている義兄夫婦に、義父母が怒っていないはずがありません。
亡き義父母の気持ちを私が代弁すると、義兄夫婦は震え上がりました。思い過ごしかもしれませんが、娘が義兄夫婦の後ろにおじいちゃんとおばあちゃんが見えると言ったら、悲鳴を上げていました。これまでの行ないを反省し、あの家を守り続けることで、義父母の怒りは消えるのではないかと伝えると、義兄夫婦は帰って必死に家中の掃除を始めました。
義実家で不気味に鳴り響く不可解な音は…
亡き義父母が……。なんて言いましたが、実は、義実家はシロアリにむしばまれていてボロボロの状態でした。不可解な音がしていたのは、義父母が怒っているからではなく、シロアリの被害によって軋んで音が鳴っていただけ。
義兄夫婦が義実家をよこせと言ってきたあの日、娘が「白いアリさんがたくさん住んでいて、ずっとはこのお家に住めないって、じぃじが言ってた」と教えてくれたのです。
数カ月後、義兄夫婦もシロアリの被害に気づきましたが、ときすでに遅し。崩壊が進む義実家に住み続けることは難しく、売ろうにも売れません。義兄夫婦は引っ越しましたが、まだ義実家を手放せていないようです。シロアリ被害が発覚した後も、反省しているようで、しょっちゅう義父母のお墓に行っては掃除をし、お参りをしていると聞きます。ネタバラシはせず、これで義兄夫婦の運気が好転すればいいなと思います。
私たちは義兄夫婦とは縁を切ったので、もう2度と会うことはありません。義父母を供養しながら、これからも3人で仲良く暮らしていこうと思います。
◇ ◇ ◇
義兄夫婦が大いに反省してくれたようで、何よりですね。義父母が亡くなる前に、自分たちの行ないのひどさに気づいて改心して、親孝行をしてほしかったものですが、今からでもきっと義兄夫婦のためにはなることでしょう。これからは、何かを間違えたときは素直に認めて、反省と謝罪ができるようになるといいですね。自分のことばかりでなく、相手を思って、周りと協力して、毎日を幸せに過ごせるよう努力したいものです。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。