彼の実家に到着すると、彼の両親はニコニコと迎えてくれました。想像以上に歓迎ムードで、私も一気に緊張がほぐれ、話も弾みます。すると、彼の両親からビックリするような発言が飛び出したのです。
「俺たちからは、結婚祝いにマンションをやろうと思う」
なんと、駅前にできたばかりのマンションをプレゼントしてくれると言うのです。そんな高額なものを急にいただけるなんて、私は驚きすぎて言葉を失っていました。
新居で待っていたのは彼の両親
もちろんマンションをもらえるのはうれしいですが、せっかくなら立地や間取りは自分たちで決めたかったな……なんて思ってしまいましたが、これは私のわがままだと自分に言い聞かせ、新婚生活はそのマンションでスタートすることに。
しかし、私は仕事が忙しくて、なかなか新居に引っ越しできずにいました。彼は少しずつ荷物を運び込んでいましたが、私は生活必需品すら持ち込めておらず、変わらず自分の実家から病院に通う日々。
さすがにこれでは彼の両親に申し訳ないと思い、出勤前のスキマ時間を使って少し荷物を運ぶことにしたのですが……。
「おはよう!」
早朝だというのに、新居で出迎えてくれたのは彼の両親。彼から何も聞いていなかった私は、驚いてあたふたしてしまいました。
フォローするから…!?
「俺たちのことは気にしないで。忙しいのはわかってるから。」
彼の両親は笑顔で、私を新居へ招き入れてくれました。
「私たちの分は、今日中に終わらせるつもりよ。ここに住んで、しっかりあなたたちをフォローするから安心してね!」
ここに住んで……!? なんと、私は何も知らされず彼の両親と同居することが決まっていたのです。さらに、彼の父からは衝撃的な発言が……。
「そうそう。もうひとつ言っておかないと。ローンは今月からだから、よろしくな!」
ローン!? 私がビックリして、このマンションは結婚祝いのプレゼントではないのかと確認すると、ここは人気の物件で内見予約をするのも大変だったから、代わりに予約して、彼に契約させてあげたのだとドヤ顔。彼の父からすれば、そこまでがプレゼントということだったようです。
私は焦って彼に確認すると、すべてを把握していて「俺の両親、気が利くだろ」と言います。しかも、新調した家具家電はどれも高価なもの……。一旦は、すべて彼のクレジットカードで購入したとのことで、それもこれから私と2人で支払うつもりだと言います。
結婚後は忙しい私に代わって家計管理をしてくれると彼が申し出てくれたので、私は給料をそのまま渡すつもりでいました。しかし、完全に私の給料をアテにされていると気づき、私は逃げることを決意。
忙しいことを理由に引っ越しを先延ばしにして、住んでいない間だけは彼にローンの支払いを頑張ってほしいと言って、3カ月ほどやり過ごしました。
せっかちな彼の思惑が露呈
当然、懐事情が厳しくなってきた彼から、一体いつ引っ越してくるのだと電話がかかってくるようになりました。そのタイミングで私は希望が通り、海外派遣の医療スタッフに選ばれて海外へ行けることに。
もちろん、住む予定がなくなるので、マンションのローンは払いません。その話をすると、彼は「結婚したら財布を一緒にする約束だっただろ」と言って激怒してきましたが、実は私たちは、まだ婚姻届を出していません。
忙しくて、ゆっくり時間が取れなかった私は、彼からサイン済みの婚姻届を預かったまま、まだ提出できていませんでした。落ち着いたら一緒に提出に行こうと話していたので、私たちが正式に夫婦となっていないことは彼も知っています。
私が何も知らされずに話が進んでいたマンションのローンも、カードの支払いもすべて彼への請求です。私に相談せず、私の給料をアテにして勝手に進めた彼が悪い。私たちはまだ正式な夫婦ではなかったので、あっという間に縁を切ることができました。
そして私は、夢だった海外生活をスタート! 日本での経験を活かして、忙しくも充実した日々を過ごしています。
その後の彼の一家はというと……、ほどなくしてローンを支払えなくなり、マンションは手放したそうです。その後は、どのように生活しているのかわかりませんが、結婚する前に彼の思惑に気がつけて本当に良かったと思っています。
いくら忙しくても、人生をともにするパートナー選びはじっくりしようと、いい教訓になりました。
◇ ◇ ◇
結婚する前に相手の思惑に気づけたのは、不幸中の幸いでした。結婚は勢いだとかタイミングだとかよく言われますが、生活を共にする相手ですから、やはりある程度は慎重さも大切なのかもしれません。
たとえ、相手を喜ばせたい、驚かせたいという意図だったとしても、家族のことは相手に相談なく勝手に決めずに、しっかりと話し合いたいものですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。