休日の話題から、「私たち、次の連休は温泉に行くんだ」と話すと、「いいね〜」とにこやかに返してくれるママ友たち。
ママ友からの衝撃的なひとこと
そのとき、同じ園に通う自慢が大好きなママ・A子がやってきて、笑いながらこう言いました。
「貧乏くさっ! うちは家族でハワイよ」
「えっ、ハワイ!? 大丈夫ですか!?」
空気が一瞬、ピタリと止まりました。実は夫から、「A子のご主人の会社の経営状況がかなり厳しいらしい」と聞いていたからです。
見栄と虚勢
しかしA子は少し間をおいたあと、作り笑いをしながら「あぁ……まぁ全然大丈夫よ。うちは年に数回は海外に行かないと気がすまなくて〜」と言いますが、どこか無理をしているようにも見えました。
少し場の空気を戻したくて、私は小さな声で話し始めました。
「実は温泉っていっても実家の近くの小さな宿で。でも、両親と一緒にのんびり過ごせるのが楽しみなんです」
すると他のママたちも「いいね」「楽しそう」とあたたかい雰囲気に。A子も黙って聞いていました。
ママ友A子の本音とは
しばらくして、A子がぽつりとつぶやきました。
「……いいなぁ、そういうの。実はうちの子も、おばあちゃんに会いたがってて。でも、遠くてなかなか会えないの」
私は思わず声をかけました。
「よかったら、今度一緒に行きませんか? 小さな宿ですけど、子どもたちも一緒ならきっと楽しいですよ」
A子は驚いた顔をしながら、少し照れたように笑いました。
「……ありがとう。行ってみようかな、そういうのも」
ありのままでいられる関係に
それからA子は、少しずつ私たちの輪に加わるようになりました。
お迎えの時間に話したり、子ども同士で遊ばせたり。きっと、見栄を張らずにいられる時間が心地よかったのだと思います。
「家族旅行って、行き先より“誰とどう過ごすか”なんだね」
そう言ったA子の笑顔が忘れられません。
後日、A子がハワイ旅行をやめて、三世代揃って温泉旅行を満喫したと聞き、胸があたたかくなりました。今ではA子は、私たちに見栄を張ったりマウントを取ることもなくすっかり穏やかになり、今度A子ファミリーとママ友たちと一緒に温泉旅行へ行く予定を立てています。これからは家族ぐるみで付き合っていきたいと思います。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。