ちょうど会社都合のリストラにあったばかりだった私の夫。夫はリストラをきっかけにもともとやりたかった業種に進めて喜んでいたので、私はなんとも思っていませんでした。
一方、義妹はなにかにつけて、地元の有名企業勤めのエリートである婚約者と、私の夫を比較するようになりました。そして、「私たちの結婚式には来ないで」と言い出したのです……。
私たち夫婦を結婚式に呼びたくない義妹
「あなたを見てると、いかに私が恵まれているかがよくわかるわ~!」「私の婚約者は超エリートで出世頭だし、リストラとは無縁の勝ち組人生! そしてそんな彼と結婚する私も勝ち組の仲間入り♡」「半額になったお惣菜やお弁当なんて、一生買うことはないでしょうね」
そう言って、私たち夫婦を見下す義妹。半額になったお惣菜やお弁当は節約にもなるし、味は変わらないし、フードロス削減にもつながるのに……。そう思ったけれどきっと義妹は理解しない思い、私は口をつぐみました。
すると、「その恥ずかしさもわからないなんて、根っからの貧乏性なのね!」「決めたわ! あなたたちがいたら心まで貧しくなりそうだから、今度の私たちの結婚式、お義姉さんは絶対に来ないで!」と義妹。
「貧乏人夫婦に祝われてもうれしくないし、私の結婚式が台無しになるから来ないでちょうだい」「本当はお兄ちゃんも欠席してほしいんだけど、さすがに身内を欠席させるのは難しいじゃない? でも嫁であるお義姉さんはしょせん他人だから、いなくても問題ないわ」
その後すぐ――。
私は義妹に言われたことを、電話で夫に正直に伝えました。
「結婚式は新郎新婦が主役だもの……その主役に来るなって言われたら、欠席するしかないよね……」と言うと、夫は「あいつ、なんてことを!」「君には俺の趣味に付き合ってもらってるだけなのに……!」と激昂。
実は、夫の趣味は半額ハンター。独身のころから、スーパーの半額のお惣菜やお弁当を買って食べているのが今でも続いているのです。
「残業帰りの君を駅まで迎えに行くと、ちょうどスーパーで半額シールが貼られだすころで……ついつい買っちゃうんだよな……」と夫。夫と一緒にスーパーで買い物をするようになって、私も半額シールを見かけるとテンションが上がるようになっていたので、とくに問題はありません。
「この間なんて、1人前3,000円の黒毛和牛ステーキが半額以下のたったの1,000円だったじゃない? ああいうのってなかなか味わえないし、最高だったよね!」と言うと、夫も「うんうん」と同意していました。
「……今日も、半額ハンターになりそう。新人くんがまた仕事で大きいミスしてね……」「いつもどおり本人は『部下の尻拭いをするのが上司の仕事ですよね』って言って定時で上がっちゃって、残業になりそうなの」と言うと、夫は「またあのとんでもない新人くんか……」「トラブルメーカーだし、君が彼の代わりに休日出勤したってお礼の一言もないんだろ? あんまりだ」と私の代わりに怒っていました。
先月、義妹の両家顔合わせに出席する予定だった私。しかし、新人の彼が休日出勤をすっかり忘れていて、ドタキャン欠席。私が緊急で代わりに出なければ、どうなっていたことか……。私だって、義妹の婚約者に会ってみたかったのに……。
「しかも彼、今日なんて昼休みにいきなり『結婚式をするので出てください』って言ってきたの」「ちょうど妹さんの結婚式と日程が被っていたから断ろうと思ったんだけど……せっかくだし、部下のほうの結婚式に行こうかな」
そう言うと、夫は「そうだな、妹がひどいことを言ったせいで、こんなことになって悪いけど……」「これを機に、新人くんとの距離が縮まるといいな」とうなずいてくれたのでした。
一致していた結婚式の予定
そして、結婚式当日――。
夫は義妹の結婚式へ、私は部下の結婚式へ。偶然にも式場や開場時間が一致していたので、2人で連れ立って向かっていたのですが……。
「早く帰りなさいよ!」「来るのはお兄ちゃんだけでいいって言ったでしょ!? 招待されてもないのに来てんじゃないわよ!」
私を指さし、式場の入り口で怒鳴りつけてきました。
「私たちの結婚式に、貧乏人の座る席はないのよw」
「早く帰ってちょうだい!」
「ほんとにいいのね?」
「は?」
義妹は、意味がわからないといった顔でぽかんとしていました。私は軽く手を振りながら振り返らずに言いました。
「じゃあ、帰りまーす」
義妹は今度は「はぁ? なによそれ……」どうやら反論せずあっさり帰ろうとした私に、拍子抜けしたようです。
「あなたが追い出したから、私は帰るの。そのこと、忘れないでね」
そう言い残して、私は夫をその場に残し、1人で式場をあとにしました。
その10分後――。
タクシーで自宅に向かっている私のもとに、義妹から「今すぐ戻ってきて!」と電話がかかってきました。
「まさかお義姉さんが彼の上司だったなんて……!」「そういえば彼、上司の話をほとんどしてくれなかったし、名字も旧姓のままだったから、気づかなかった……!」「彼の上司として招待しているし、席もあるんだから早く来てちょうだい!」
実は、義妹の婚約者は私の部下だったのです。式場や開場時間が偶然一致していたことで「まさか」と思い、夫と情報を照らし合わせて確信に変わりました。
焦りを隠そうともしない義妹に、私は「戻ってこいって言われても戻らない、そう伝えたはずよ」と冷たく返しました。
「彼と同じ会社で働いてるなんて知らなかったんだもん!」と言う義妹。実は、私は夫と結婚した直後にその会社に転職していました。今では部長として、部下を50人ほど束ねています。
「しょせん、家に帰れば半額のお弁当やお惣菜を食べてるし? そのせいで義理の妹に貧乏人呼ばわりされちゃうし」「そんなしょうもない部長なんて、いないほうがいいでしょう?」と言うと、「あの、いや、それは」と口ごもる義妹。
しかし、すぐに「で、でも、上司からのスピーチはどうするのよ……!?」「頼まれたスピーチくらいはやってから帰りなさいよ!」と言ってきました。
「……スピーチ? そんなの頼まれてないけど?」「まさかとは思うけど、彼……“上司なら勝手にやってくれる”とでも思ってたわけ?」義妹は、ぎくりとしたように黙り込みました。
そう返すと、義妹はフリーズしてしまったようでした。おそらく、新人の彼は「上司だからやってくれて当然」とでも思って、私に頼むことすらしなかったのでしょう。本当に困った部下です。
「……仕方がないから、今からスピーチ原稿を作って送ってあげるわ。うそは書けないけどね」「式場に戻るつもりはないから、スタッフさんに代読させて」「それじゃあね」
用意したスピーチ原稿
さらに1時間後――。
家についてのんびりしていたところに、再び義妹から電話がかかってきました。
「ふざけんじゃないわよ! よくもあんな最低最悪なスピーチ原稿を送ってきやがったわね!」「いかに彼が使えない部下かの話しか出てこないじゃない!」「うそばっかり書きやがって!」
即席で作った割には、かなりよい出来だと思っていたのですが……。私なりに彼を褒めようとしたのですが、全然立てるところが見つからなかったのです。嘘をつくのも招待客のみなさまに申し訳ないと思い、私は普段の彼の様子をありのままに書いたのです。
しかし、義妹は「彼、いつも私に言ってたもん!『俺は会社からすごく期待されてる』って!」「毎日いろんな種類の仕事を任されるって言ってたわ、それって彼が優秀だからでしょ? どんな仕事でも任せられるからだよね?」と反論。
「……いや、ひどすぎて任せられる仕事がわからないから、いろいろ試しているところなのよ」「資料のホッチキス止めすらまともにできなかったときは、一周まわって笑ってしまったわ……」と事実を話すと、義妹は絶句。
「で、でも、彼、『来週、人事部に呼び出されてる』『大事な話があるって言ってた、絶対に日ごろの仕事を評価されての昇進に違いない』って言ってた……」と震える声で言う義妹に、少々酷だと思いながらも私はその呼び出しの内容を話すことに。
「……それ、地方にある支社の工場への異動の話だよ」
すると、「そ、そんな! 私、結婚式が終わったら退職する予定だったのに!」「これから専業主婦として生活していくはずだったのに!」と悲痛な声を上げた義妹。
「新婚早々単身赴任より、夫婦一緒のほうがいいだろうし……仕事を辞めるなら、一緒に地方についていってあげたら?」「彼の異動のことは私にはどうすることもできないし、今後は2人で話し合ってちょうだい」
その後――。
新人の彼は異動に納得がいかなかったらしく、怒りに任せて退職。「俺に見合う会社じゃないと働かない」と言って、転職活動もせず、家でだらだら過ごしているそう。
理想の生活を送るどころか、自分自身も仕事を辞めてしまったため、食べるものにも困る状況に陥った義妹。さすがに私には連絡してきませんでしたが、兄である私の夫には泣きついてきたそう。夫も義妹に対して怒り心頭だったらしく、「さんざん馬鹿にしていたくせに厚かましいぞ!」「二度と俺たちに関わるな!」と一喝。そのまま義妹たちの連絡先をブロックしていました。
新人の彼が辞めてくれたことで、私の業務状況も改善。しかし、夫と一緒の半額ハンターはまだまだやめられそうにありません。
【取材時期:2025年3月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。