娘が誕生日プレゼントに欲しがったのは、キャラクターグッズ。人気があるため、夫が予約しておくことになっていました。けれども夫は、私が何度も確認したにもかかわらず、すっかり予約を忘れていたようです。結局、娘が欲しかった商品は完売してしまいました。
「買えないものは仕方ないだろ!」と開き直る夫に、「ちゃんと娘に説明してよね! そして娘に謝って!」と言った私。しかし、夫は「あいつ、一度泣いたらなかなか泣き止まないし、お前が説得してくれよ」「それと、代わりのプレゼント選びも任せたからな!」「こういうのは母親の仕事だろ?」と言ってきたのです。
役割分担をして、プレゼントの手配は夫に任せていたのに……。うっかり忘れてしまっただけならまだしも、反省どころか開き直った無責任な態度を見て、私は心底ガッカリした気持ちになりました。
娘に対して無関心がすぎる夫
誕生日はせめてケーキくらいは用意してもらおうと、「いつものケーキ屋さんで娘の誕生日ケーキを予約しておいてくれる?」とお願いしました。
けれどもその直後、「最近、若い子に人気のケーキ屋さんを教えてもらってさ! フルーツタルトがうまいんだって!」と、浮かれた様子で言ってきたのです。
「それは気になるけど……そのお店、卵アレルギーには対応しているのよね?」と聞くと、「え?」ときょとんとした夫。まさか、娘のアレルギーすら忘れているなんて……!
娘のアレルギーすら忘れていることに、私は言葉を失いました。「いつものお店のチョコレートケーキをお願いね。完全予約制だから、忘れずに注文しておいてよ」と念を押しました。
娘の誕生日をドタキャンした夫が向かった先
そして迎えた誕生日当日。夫は朝から「休日出勤だ」と言って出かけていました。夕方になっても帰ってこず、パーティーの準備が整っても、連絡はありません。何度か電話をかけても出ず、私はLINEにメッセージを送りました。
「ケーキはどうするの? 私が取りに行くから、予約番号教えて」しばらくして、夫からようやく既読がつき、返ってきたのは――
「え? ケーキって?」
その一文を見た瞬間、私は言葉を失いました。さらに、畳みかけるようにメッセージは続きます。
「あ、やっべ! すっかり忘れてたわ」
「ケーキはまた今度でいいだろ? とりあえず今日はお前のごちそうとプレゼントさえあれば、誕生日会らしくなると思うし」
「ごめんな、娘の誕生日に仕事なんて……しかも俺、ケーキの予約も忘れて……」
「今日の誕生日会はお前に任せた! 来年はちゃんとやるから!」
私は静かに、メッセージを返しました。
「私、あなたの秘密知ってるけど?」
しばらく間を置いて夫から返ってきたのは
「え?」
という短いひと言でした。
私は一度、深く息を吸い込みました。本当は、最近夫の休日出勤が増えていたので、どこかおかしいとは感じていたのです。だから私は、誰にも言わず、探偵に依頼していました。そして、その報告書が届いたのが、まさに今日――娘の誕生日の朝でした。
夫が休日出勤と称して出かけていた日は、ほとんどすべて、会社の後輩女性と会っていました。そうはっきりと書かれていた報告書を見ても、娘の誕生日を台無しにしたくなくて、私は黙って飲み込んでいました。
腹の底では怒りが煮えくり返っていました。けれど、私は驚くほど冷静に、夫に告げたのです。
「もういいです。今すぐ私と離婚してください」「あなたと家族としてやっていく意味がないと、はっきりわかったの」「あなたが“家族より大事な存在”を選んだこと、ちゃんと証拠もそろってるから」「あなたが私たちを捨てたなら、私たちもあなたを捨てるだけよ」
「えっ」と驚いている様子の夫に、「娘のことは私に任せてくれるんだよね? だったら、親権も私で合意できるってことでいいわよね」「娘を連れて、ひとまず実家に戻るから。今後の生活は後日きちんと話し合いましょう」と追撃して、私はやり取りを終えました。
夫の休日出勤の実態と頼りになる家族の存在
その後すぐに、実家にいる兄に「お兄ちゃん……急で悪いんだけど、今から娘を連れて実家に帰ってもいいかな?」と連絡した私。
「えっ!? 今日って……誕生日パーティーの予定じゃなかったか?」と驚く兄に、私は事情を説明しました。
「今日のために作ったごちそうとかも全部持っていくから、とくにそちらで用意してもらうものはないんだけど……」「できたら、両親と一緒に、お兄ちゃんにも娘の誕生日をお祝いしてほしいの……」
そう言うと、兄は「よし来た!」「両親には俺から説明するし、今から車を回して迎えに行くからな!」と頼もしい返事をくれました。そして、すぐに迎えに来てくれたのです。
場所は変わりましたが、兄や両親のおかげで、娘の誕生日を無事にお祝いすることができました。リクエストされていたプレゼントが完売してしまったことは、娘には正直に話しました。それでも、代わりに選んだぬいぐるみをぎゅっと抱きしめて、「ママが選んでくれたんだもん、これがいちばんうれしい!」と笑った娘。その笑顔に、私はこらえていた涙がこぼれそうになりました。
その夜、娘を寝かしつけたあと、娘の幸せそうな寝顔を見て、私はほっと胸をなでおろしました。
娘が寝たことを確認した兄から、真剣な表情で「話がある」と言われた私。静かに語られたその言葉に、私は胸の奥で固めていた決意を、行動に移す覚悟ができました。
翌日――。
「おい、本当にこのまま帰ってこないつもりか!?」「俺は離婚なんて絶対に認めないからな!」と夫から怒りの連絡が来ました。
「あら? 家に帰ってきたの? 会社に寝泊まりして、そのまま今日も出勤するんじゃなかった?」と聞くと、「仕事なんかしてる場合じゃないだろ!」「妻が離婚するって言い出したんだぞ!」と夫。
「え? 仕事? ……『会社で後輩の女性と不倫』の間違いでしょ?」「あ、昨日は彼女の自宅で会ってたんだっけ? 彼女の誕生日がまさかうちの娘と近いなんてね……で、人気店のフルーツタルトはおいしかった?」
「お、おい、お前、なんで知って……」と焦り出した夫。「探偵に頼んで、あなたの行動をすべて調べさせてもらったの。それにしてもひどい話だよねぇ」と口を挟む隙も与えず、私は一気にまくし立てました。
「愛する娘の誕生日よりも、不倫相手の誕生日を選ぶなんて……」「つまり、家族よりも不倫相手を選んだってことよね? 」「だったら離婚しても問題ないと思うんだけど、どうして認めてくれないのかしら?」
だいぶ前から、夫との婚姻関係の継続に悩んでいた私。しかし、娘のためにも父親はいたほうが良いと思って、ぎりぎりで踏みとどまっていました。しかし、家庭をかえりみず、不倫している父親なんて必要ありません。
「必要ないってそんな……子どもにとって父親の存在は絶対に必要に決まってるだろ!」と言う夫に、「だったら、娘の養育費はしっかり払ってくれるよね?」「それが父親としてあなたがあの子にできる最後の役割よ」「あと、私には財産分与と慰謝料ね! こちらもしっかり払ってもらうから」と返した私。
「あんなのただの遊びだよ! 俺には家族が一番大事なんだ」「週末一緒に過ごさないと、お前にバラすって脅されて……仕方なく彼女と一緒にいただけだよ」「なんとか彼女をなだめて、すぐに家に戻るつもりだったんだ!」と言い訳を始めた夫。
「じゃあなんで娘のケーキを予約してなかったの?」「私たちと一緒に過ごすつもりなら、ちゃんと予約してるはず」「一緒に祝うつもりなんて最初からなかったってことだよね」
すると夫は「こういうのは浮ついた気持ちにさせる妻、つまりお前だって悪いんだ!」と私のせいにし始めたのです。夫がここまで幼稚な人だとは思わず、私はため息が出てしまいました。
「あなたとの離婚については、うちの両親も兄も協力を惜しまないって言ってくれてるわ」と私が言うと、「えっ、お兄さんも……?」と勢いをなくしてしまった夫。
実は、うちの兄は弁護士。とくに男女間の問題を得意とする弁護士なのです。もちろん、夫もそのことをよくよく知っています。
「お兄ちゃんが弁護士として、もう離婚手続きを進めてくれているから」
そう言うと、ようやく観念したのか、夫は離婚に同意してくれました。こうして、私たち夫婦は離婚することになりました。
その後――。
離婚後は、兄の立ち会いのもとで話し合いを行い、慰謝料・養育費・財産分与は、法的にも問題ない形で取り決めができました。面会交流は月1回を目安に設定し、連絡窓口は兄経由にしたので一安心です。
不倫相手にも慰謝料を請求し、正式に受け取りました。それが原因で、元夫と浮気相手の仲はこじれ、結局別れてしまったそうです。
さらにうれしいことに、兄は「これ、流行ってるって聞いて、買っておいたんだ」と娘にとあるものをプレゼントしてくれました。それは娘が誕生日に欲しがっていたキャラクターグッズの商品。もちろん娘は大喜び!
父親がいない分、寂しい思いをさせてしまうのではないかと心配していましたが、今のところ、兄と両親が娘を溺愛してくれているので大丈夫そうです。私も仕事を続けながら、娘との時間を大切にしていこうと思っています。
【取材時期:2025年3月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。