婚約解消の理由は
先輩の婚約者・A子さんは、営業のサポートをおこなってくれ、僕も何度か仕事上で話すことがありました。先輩とA子さんは社内でも評判のカップルで、「2人のようになりたい」「理想だ」という声があったほどです。
しかし、突然先輩の口から「彼女と婚約を解消した」という言葉が飛び出しました。営業部の同僚たちと一緒に聞いていて、僕らは「ええっ!?」と驚きの声を漏らしてしまいました。
先輩曰く、「彼女は料理や掃除ができなくて、家では全部俺がやっていた」「そういった価値観のズレが爆発した感じかな」と。先輩からは彼女さんの不満がどんどん出てきました。
周囲の同僚たちからは「え、A子さんそんな人だったんだ……」「幻滅した」という声が聞こえてきましたが、僕は正直、信じられませんでした。というのも、忙しい時期、先輩は「A子が作った」と言う手作り弁当をうれしそうに食べていましたし、職場でも先輩のデスクを、彼女さんが整理整頓している姿を何度も見たことがあったからです。
どうしても信じられなくて
その日の帰り、偶然A子さんと廊下ですれ違いました。どこか元気がない様子に見え、僕は思わず声をかけてしまいました。「このあと、一緒に飲みに行きませんか?」と。突然の僕の言葉に彼女は少し驚いた様子でしたが、「予定ないし……」と、うなずいてくれました。
そして、先輩が言っていたことが信じられず、僕はA子さんにそれとなく、料理や掃除などについて聞いてみることに。すると、自分が作ったという料理の写真をうれしそうに見せてくれました。どれも栄養バランスが考えられたもので、見た目も整っているものばかり。とても「料理ができない人」とは思えませんでした。
「すごいです。僕、こんな料理作れません。すごくやさしい味がしそうです」と言うと、彼女はようやく笑ってくれました。
先輩が言いふらしていたのはウソ
この一件以降、A子さんとは以前より何気ない日常会話をすることが増えました。
ある日、僕が昼休憩中にお弁当を開くと、周囲の同僚たちから「自分で作ったの?」と驚かれました。実は、このお弁当はA子さんが作ってくれたもの。昼食は外食が多いことを話すと、A子さんは「作る相手もいなくなったし」と僕のお弁当を作ってくれるようになったのです。
A子さんの手作りであることを伝えると、周囲は驚いていました。なぜなら、以前の先輩の言葉でみんな「A子さんは料理ができない」と思い込んでいたから。僕は「A子さんは料理が得意であること」「先輩のお弁当もこれまで彼女が作っていたこと」を伝えると、誤解は徐々に解けていったように思います。
その後、社内では先輩が吹聴していたことに対する疑問の声が挙がるようになりました。料理の件もそうですし、先輩のデスクが汚く整理整頓できていないこと、仕事もミスが多く発生するようになり営業成績もダウン。以前では考えられないような先輩の変化に、気づけば、社内では「先輩が言っていたことは、自分を大きく見せるためのウソ」という認識になっていました。
実際はその認識の通り。A子さんは仕事をしながら家では先輩のために食事を作り、部屋をきれいに保っていました。仕事でも、先輩が行く営業先のことを念入りに調べ、どうアプローチするのがいいのかなど細かくアドバイスしていたそう。すべて、A子さんがいたからこその「完璧な先輩」だったのです。
“虚栄心の塊”だった先輩の末路
仕事で成績が落ち始めた先輩は、焦っていたように思います。普段の様子からイライラしているんだなと思うことが増え、周囲に怒鳴ることも多くなりました。いつしか同僚たちからも白い目で見られるようになり、先輩も、成績が落ち続けることにプライドが許さなかったのでしょう。「こんな会社じゃ、俺の本来の力は発揮できない」と、退職してしまいました。
先輩が退職したことで、今は、営業部で再び頑張ろうと士気が高まっています。お互い協力し合ういい雰囲気の中で、みんなで一致団結して仕事に取り組んでいます。
そして、A子さんは未だに僕にお弁当を作ってくれています。日々、彼女と接する中で、その明るさ、まっすぐさに惹かれています。それに、彼女に「胃袋を掴まされた」というのも正直なところ……。
ちなみに、A子さんに、なぜ先輩が自身の悪口を言いふらしていたとき、訂正しなかったのかと聞くと、彼女は「いちいち訂正して、彼に未練があるように思われたらイヤだから」とキッパリ。そんな潔さも、カッコいいと思ってしまいました。
彼女と今後、もっと距離を深めたいと思うようになってしまった僕。今度、思い切ってデートに誘ってみたいと考えています!
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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