理系で賢い夫は私をバカにした発言ばかり
夫は会社で素材の研究をしており、賢い人です。学生を指導するため、大学から講義依頼を受けることもしばしば。そんな人だからか、あまり頭の良くない私のことをバカにしているような節がありました。
特に子どもが巣立ってからは、その傾向が顕著(けんちょ)に。私がパソコンを買い替え、セットアップの仕方がわからず悩んでいたときも「なんでこんなこともわからないの?」と言ってきたり、買い物に行って必要なものを買い忘れたときは「そんなことすらできないの?」と言ってきたり……。
結婚当初から、このような人を見下すような発言が繰り返されてきたため、ある程度は受け流すことはできます。ですが、毎日のように続けば当然気持ちが良いものではありませんし、正直腹が立つこともありました。それでも長年の経験から、言い返すと余計面倒になるのはわかりきっています。
平穏な生活を守るためには、夫の神経を逆なでしないよう口答えをしないことが一番。自分の気持ちを抑え込んで生活してきました。
仕事中に崖から転落!
ある日、私が仕事で出かけたときのこと。訪問ヘルパーとして働いている私は、受け持ちの利用者さんの家を訪問し、日常生活のサポートをおこなっています。
基本的には日中の訪問なのですが、その日は夕方遅くに利用者さんの家を訪問することになっていました。利用者さんの家は町から外れた、山の中腹にあります。山の中ということもあり、道路は舗装されておらず、足場が悪い場所。一部は崖のような急斜面になっているところもあります。
日中は行き慣れていても、暗くなったタイミングでの訪問は初めて。特に私は自他ともに認める運転下手です。「何も起きなければいいけれど……」と慎重に暗い道を運転しました。いつも以上に時間をかけて、やっと利用者さんの家に無事到着したときは、思わず胸をなで下ろさずにはいられませんでした。
運転は下手ですが、ヘルパーの仕事は慣れたもの。いつものように利用者さんに声をかけ、その日やるべきことをサクサクこなしていきます。忙しく動き回っているうちに、あっという間に仕事は終了時刻に。利用者さんに声をかけ、あとは自宅に帰るだけに。 私は利用者さんの家を出て、車に向かって歩きだしました。
その瞬間「しまった!」と思いましたが、時すでに遅し。なんと、崖から落ちてしまったのです。
仕事を終えた安心感からか利用者さんの家の付近が急斜面になっていることをすっかり忘れてしまい、昼間と同じように歩いて足を踏み外してしまいました。
急いで夫を連れて救急病院へ行くことに
辺りが暗くてよく見えなかったものの、自分が大けがをしていることはわかりました。特に足の負傷がひどく、明らかに大出血しています。ですが、利用者さんに迷惑をかけるわけにはいきません。持っていたハンカチで応急処置をして、根性で急斜面を登りました。
車の中で足を見てみると、肉がめくれて身が見えてしまっている状態。急いで病院に向かおうと思いましたが、すでに閉まっている時間だったので救急病院へ行くほかはありませんでした。
利き足ではないほうの負傷だったため、なんとか自分で運転できる範囲でした。しかし、けがもしており心細さを感じた私は、いったん家に帰って夫を連れて病院へ行くことにしました。
家に帰ると夫はすでに晩酌中。簡単にけがをしている理由を説明し、心細いから救急病院へ一緒についてきてほしいとお願いしました。
けがの心配をしない夫に初めて言い返した
お酒を飲んで酔っ払った夫を助手席に座らせ、スマホで調べてから救急病院へと向かいます。夫はその間心配してくれるわけでもなく、「なんでお前はいつもそそっかしいんだ」とか「救急病院の場所はちゃんとわかっているのか?」とか文句ばかり。
けがもしており、夫の態度に対していいかげんに頭に来た私は、「少し黙ってなさいよ! そもそもけがの心配くらいしてくれたっていいじゃないの!」と結婚して以来、初めて夫に言い返しました。
一瞬言い返したことを「やばい! 怒られるかな?」と思いましたが、意外にも夫は沈黙。そのまま救急病院へ到着しました。すぐに私は緊急処置を施され、医師から1カ月の絶対安静を言い渡されました。
しばらくは安静が必要ですが、それでも無事処置が終わったことに安堵しました。会計を終え、病院に来たときと同じように夫を助手席に乗せて帰りました。すると、しばらく黙っていた夫が帰りの車の中で「悪かった」とひと言。小さな声でつぶやくように謝罪したのです。
まとめ
夫の謝罪を聞いたのは、長い結婚生活の中で初めてのことでした。私が思い切って気持ちをぶつけたことは、夫にとって大きな出来事だったのかもしれません。それ以降、夫の人を見下すような発言が完全になくなったわけではありませんが、以前よりも少しだけ私への配慮が感じられるようになりました。今回のことは、思いがけない形で夫婦関係に小さな変化をもたらした、まさに「けがの功名」だったのかもしれません。
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取材・文:いけがきみく/30代女性・1児の母。ライター
マンガ:へそ
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています
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