毎週末、小学1年生の子どもを預けに来る義妹。夫に「あなたの姪なんだから、面倒見てほしい」と言っても、「あとはよろしく!」とだけ言って外出してしまいます。
その週末、私は40℃近い熱を出してしまいました。夫に姪のことをお願いしても、「友だちと釣りに行ってくるから無理!」と一言。義妹に事情を説明しても、「娘には菓子パンを持たせるから大丈夫! それに私は娘を預けたあと友だちと出かけるから!」「うちの子も小1だし、そんなに手はかからないし!」と、意味不明な理屈を押し通されてしまいました。
そして、義妹は「娘、玄関に置いていくから! 夕方ごろには迎えに来るから、それまでよろしくね!」と言って、電話を切ってしまったのです。夫が以前、義妹に頼まれて姪にわが家の合い鍵を渡していたらしく、姪は「おじゃましまーす」と言いながら自分で入ってきました。
ひどい頭痛と寒気に苦しめられながら、ふらつきながらも玄関で姪を出迎え、どうにかリビングに招き入れた私。しかし、いつの間にかリビングで倒れてしまったようで、次に気づいたときは病院のベッドの上でした。そばには義母が心配そうに座っていて――。
妻の一大事に駆けつけてくれた救世主
「あら、目が覚めた? 具合はどう? 少しは落ち着いたかしら?」
目を開けると、見知らぬ天井。そして、私の顔を覗き込んでにっこりほほえむ義母の姿が。私が返事に困っていると、義母は「孫娘ならうちで夫と遊んでいるから、安心してね」と言ってきました。
「あなた、さっき倒れたのよ……それで、孫が自分の携帯電話で私に連絡してきたの。娘は連絡が取れなかったようで」「慌てて駆けつけたら、あなたは高熱で意識もなかったから、救急車を呼んだのよ。それで私もそのまま一緒に病院に来たの」「そのあと息子にも娘にも何度も連絡したんだけど、出なかったのよ……」
心配そうに話す義母に、私は「夫は友だちと釣りに、義妹さんは友だちと遊びに行きました」と答えました。
「じゃあ、すぐに帰ってきてもらわないと」と言って、2人に連絡しようとした義母。私はそれを押しとどめました。
「伝えたところで……きっと、帰ってこないと思います。2人とも、私が40℃の高熱だと知ったうえで出かけて行ったので……」「私、数日前から体調を崩していて、食事ものどを通らない日もあったんです。それで今日、姪を預かるのを中止にさせてくれって頼んだんですけど、聞いてくれなくて……」
「あなたの体調不良を知りながら、無視して出かけたってわけね……」と眉をひそめた義母。
「それにしても、私も近所にいるのに……実の親の私ではなく、なぜあなたに子守りを頼むのかしら? 孫もあなたによくなついているみたいだけど、もしかして、結構な頻度で預けられてる?」と聞かれたので、「半年ほど前から、毎週……」と答えました。
すると、「毎週!?」「あの子ったら……! 」と驚いた義母。しばらくなにやら考えている様子でしたが、「まず、あなたは体を回復させないといけないわね」と笑顔で言ってくれたのでした。
体調不良の妻をないがしろにした夫と義妹の末路
2時間後――。
「おい、今帰ったけど、なんで家が真っ暗なんだ? メシも風呂もないし、寝室にもいないけど……お前、どこにいんだよ?」
夫からそんなLINEが届いたのは、私が点滴を受けている最中のことでした。「高熱で倒れて、救急搬送されたの」と返信しても、すぐに「は? そんなの聞いてないんだけど」と返事が来ました。どうやら、義母が夫に何度も電話したにもかかわらず、まったく出ていなかったようです。
「どうせまた寝込むふりしてサボってんだろ? 家事放棄してどうすんだよ」と、追い打ちのような言葉。
病室の静けさの中で、それを読んだ私は、何も言葉が返せませんでした。
「救急搬送って、どうせ家事をサボりたいだけの口実だろ!? 」
「専業主婦なんだから、早く帰ってきて俺のメシを作ってくれよ 」
「あんた……母親の私のこともそんな風に思ってたの?」
「え!?……母さん?」
私に代わって、夫に返信してくれたのは義母でした。
そしてすぐさま義母は夫に電話をかけました。今度はすぐに電話に出た夫。
義母は夫がでるやいなや、「救急搬送されるほど体調の悪い妻に、なんてことを言うのよ! 専業主婦は体調不良のときも休めないって言うの? 仕事をしてる方が偉いとでも思ってるの?」
「どういうことだ!? なんで母さんが……?」と驚いていた夫。しかし、すぐに「夫婦のことに母さんが首突っ込んでくんなよ!」と言い返していました。
「私が首突っ込んでなきゃ、彼女はあのまま玄関で倒れていたのよ!」「高熱の妻を放って、自分の遊びを優先するような人間に、家庭を守る資格があるとは思えないわ。一度、夫婦でちゃんと向き合って話すべきよ。このままだと、あの子の気持ちが完全に離れてしまうわよ」
「あいつの気持ちが俺から離れる? 専業主婦のくせに、俺と別れられるわけないだろ」「同じ立場だからって、母さんはやたらあいつの肩を持つんだな」「っていうか専業主婦の仕事なんて家事だけだし、たかが知れてんだろ。高熱くらいで、メシひとつ作れないなんて、甘すぎなんだよ」その言葉を聞いた義母の顔はみるみる赤くなり、手が小刻みに震えていました。
「……あんた、今なんて言ったの?」と、絞り出すような低い声で言い返したのです。
「主婦の支えが微々たるものだと、本気で思ってるのね。だったら自分でやればいいわ。家事も育児も、すべて。それがどれほどの負担か、経験してから言いなさい。何も知らないまま見下すのは、ただの無知よ」と言った義母に、「……そりゃ、やろうと思えば、できないこともないけど……」「でも、こっちは毎日働いてるんだ。帰ってきたら休む時間くらいほしいだろ。次の日の仕事に備えるのも、大事な責任だと思うけど」と返した夫。
「微々たる家事くらい、休みながらでもできるでしょ」「『毎食お惣菜は禁止』『食費は月4万以内』ってあんたが決めたらしいじゃない。だったらそのルールも全部守りなさいよ」「言うだけなら誰でもできます。実際に全部やってみせてから、もう一度同じことが言えるかどうか、試してみたら?」
そこまで義母に言われて、夫は言葉に詰まったようでした。「あの……でも……」と繰り返す夫に、義母は「とにかく、1度きちんと話し合った方がいいわよ」と言って、電話を切ってしまいました。
それからしばらくすると、義妹から、娘が義実家にいると知らない様子で電話がかかってきました。
「悪いんだけど、今日はこのまま友だちと朝まで飲むわ! というわけで、うちの娘の面倒、明日の朝までよろしくー!」
私がなんと返答しようか迷っていると、横から義母の手が伸びてきました。
「娘を放置して朝まで飲み歩くって、どういうこと!? あなたに親を名乗る資格はないわね!」
義母に一喝され、「え……お母さん……!? なんでお母さんが?」と驚いた様子の義妹。
「高熱の義姉に子どもを預けて、朝まで飲み歩こうだなんて……怒りを通り越してあきれてしまうわ。しばらく孫は私が預かるわ!」「あと、単身赴任に行ってるあなたの旦那さんにも連絡してあるから。明日、朝一の飛行機で帰ってくるらしいから、そのまま話し合いしなさい」
義母は、義弟が単身赴任になってから義妹がワンオペ育児を頑張っていると思っていたそう。その分、失望も大きかったようでした。
「ワンオペ育児がつらいんだったら、まわりに迷惑かける前に当事者同士で話し合えばよかったのに……」
義母が電話で話していると、義妹の電話口から男の笑い声が聞こえてきました。義母は一瞬、黙りこみ――そして、低い声で問いかけました。
「今、後ろで笑ってたの……男の人よね? “友だち”って言ってたけど、本当に?」
「あ、う、うん……ただの飲み友だちだから……」
義母は冷ややかに言いました。「さっき、あなたの旦那さんから電話があったの。“最近、妻の様子がおかしい。もしかして浮気をしてるのかもしれない”って」
義妹は一瞬にして青ざめ、「な……なんで……? なんで、旦那に浮気のこと、バレてるの……?」とうろたえました。
義母の表情は変わらぬまま、静かにこう言いました。
「まさかとは思ったけれど、今の笑い声で確信したわ」
「ど、どうしよう、お母さん! 離婚されたら、私、実家に戻って――」と言う義妹に、義母はピシャリと返しました。「許すわけないでしょ。好き勝手しておいて、今さら実家に頼らないで。もう面倒は見られません」
「それじゃあ、話し合いが終わったら連絡をちょうだい」「それまで、孫娘はうちで預かっています」と言って、またも義母は一方的に電話を切ってしまいました。
その後――。
義母に煽られた夫は、「専業主婦のやってる家事くらい余裕だ!」と強がりを言い、勢いのまま私と離婚。そして、社宅でひとり暮らしを始めました。けれども、現実は厳しかったようで――「料理中にコンロを焦がしてしまい、管理会社から注意を受けた」「洗濯物を干し忘れてカビさせてしまった」「家事と仕事の両立がこんなにつらいとは思わなかった」と、泣き言ばかりを元義母にこぼしているそうです。
一方、元義妹夫婦は、やはり元義妹の浮気が原因で離婚に。姪の親権は義弟が取り、元義妹はパートを複数掛け持ちしてなんとか暮らしているとのこと。ただ、「朝まで飲む自由があったあのころが懐かしい」と漏らす姿に、元義母はあきれながらも、静かに距離を置いているそうです。
私はというと、財産分与で受け取ったお金を少しずつ使いながら、これまで先延ばしにしてきた「自分の人生」と向き合い始めています。誰にも邪魔されず、誰にも押しつけられず、ようやく深呼吸ができる日々。元義母や元姪がときどき遊びに来てくれて、たまに一緒に映画を観たり、ケーキを食べたりする時間が、今はとても心地よいのです。単身になったけれど、孤独は感じません。これからは、もう誰の顔色もうかがわず、自分のリズムで、自分の足で、人生を歩いていきます。
【取材時期:2025年5月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。