突然現れた“感じの悪い”来客
ある日、夫が新入社員の女性とその同僚を連れて帰宅しました。私は明るく挨拶をしましたが、彼女は私を睨みながら無言でわが家の食卓へ向かったのです。
そして、食事を出すと彼女はひと口食べて「なにこれ、味薄っ! 私が作ったごはんのほうが美味しいじゃない!」と露骨に顔をしかめました。さらに、「先輩に奥さんがいたなんてショック〜、てっきり独身かと!」とわざとらしく大声で笑い、明らかに夫を狙っているのが見え見えでした。そして、わざとらしく夫に体を寄せながら「先輩って本当に素敵ですよね〜」と媚びる姿に、私の心は凍りつきました。
彼女の非常識な態度に夫は「帰ってくれ」とご立腹。同僚が彼女を連れ帰ってくれましたが、私はしばらくモヤモヤが消えませんでした。
執拗なアプローチと、まさかの行動
数日後、お昼休憩中の夫から私のスマホに慌てた様子で電話がかかってきました。電話に出ると 「新人の例の彼女が突然手作り弁当を持ってきて渡そうとしてきたんだよ!」と慌てた夫の声が。私は一瞬何の話か分からず固まりましたが、夫の声は怒っていました。
彼女の手作り弁当を断った夫に対し、彼女は満面の笑みで「奥さんの料理がマズくてかわいそうだから♡私の手作り弁当どうぞ!」と言い放ったと言うのです。挙句の果てには、彼女が私の手作り弁当の箱を勝手に開けて、「なにこれ、地味〜!マズそう!こんなの要りませんよね?」と笑いながらゴミ箱に捨てたことが判明!
ところがその弁当は、私の料理のファンである社長の娘にプレゼントする予定だった特製の弁当だったのです! その日は社長の娘の誕生日……。社長から直々に「ぜひ娘に渡してほしい」とお願いされた、大切な贈り物だったのです。
社長にバレて……怒号!
電話のあと、事の重大さを知った社長に話が伝わり、「この件は見過ごせない」と激怒! さらに「せっかく作ってくれた弁当を台無しにするなんて失礼極まりない! 彼女には直接謝罪させたい」と言い、彼女を連れてわが家に来たのです。
社長は開口一番「君、自分が何をしたか分かっているのか? 他人の持ち物を勝手に捨てるなんて、社会人以前に人としておかしいだろ!」と声を荒げました。彼女はうつむいて震えていましたが、社長は容赦なく「しかも、これは私の娘への大切な贈り物だったんだ。謝れば済むと思うなよ。娘の誕生日を楽しみにしていたのに……。私と娘の気持ちはどうなるんだ!」と続けます。さらに「私だけじゃない、他にも謝らなければいけない人がいるだろ」と促すのです。
すると彼女は、「申し訳ございませんでした……奥様にも失礼なことをしてしまい……ごめんなさい!」と大粒の涙を流しながら私に向かって頭を下げました。そして「先輩の胃袋をつかめば、私を意識してくれるかもって……。だから、私の弁当を食べてもらおうと思って……本当に浅はかでした……」と、顔をくしゃくしゃにして白状したのです。
その後、彼女は会社に居づらくなり、自主退職したそうです。一方、私は社長の娘の誕生日パーティーのため手料理を振る舞い、楽しい時間を過ごしました。
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人の家庭や人間関係を軽んじる言動は、いずれ自分に跳ね返ってくるもの。非常識な態度をする人に振り回されることがあっても、自分らしく誠実に向き合うことが大切ですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。