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父「実は婿さんが出社してないんだ」実家の家業を継いでくれた婿養子の夫。妻が気付けなかった苦労とは

ひとりっ子の私は、幼いころから婿養子を取って父の会社の跡継ぎを、と言われて育ちました。実際に35歳で結婚し、夫を婿養子に迎えた私。実家の建設業を継ぐことになり、現場仕事を頑張る夫を支える日々を送っていました。ところがある日、夫に異変が起き、想定していなかったほうへ人生が変化していくことに……。

 

婿養子となった夫…跡継ぎ目指し家業に励む

実家の家業を継いでくれた婿養子の夫。妻が気付けなかった苦労とは

 

実家の家業を継いでくれた婿養子の夫。妻が気付けなかった苦労とは

 

 

実家の家業を継いでくれた婿養子の夫。妻が気付けなかった苦労とは

 

実家の家業を継いでくれた婿養子の夫。妻が気付けなかった苦労とは

 

私は8歳の息子と4歳の娘、夫と暮らす4人家族の主婦です。私の実家は地元九州で代々続く建設業を営んでいます。父は跡継ぎに息子を望んでいたそうですが、長年の妊活の末、生まれたのは娘である私だけ。父は幼いころから酒に酔うと私に「お前は大きくなったら婿養子を連れてきて会社を継いでくれよ」とよく頼んでいました。父は半分冗談だったようで、周囲には「会社は俺の代でおしまいだよ」と漏らしていたそうです。

 

しかし、父を尊敬していた私は、素直に父の言葉を受け止めて育ちました。10代になるころには「婿養子になってくれる人と結婚したい」と考えるようになっていたのです。

 

その後、私は学生時代に出会った先輩と縁があり、35歳で結婚を意識する関係に。結婚前、婿養子について打診してみると、先輩は「お前が好きだから頑張ってみるよ」と言ってくれました。

 

夫は3兄弟の三男だったこともあり、夫の実家の父は「思ってもいなかったことで驚いたが、婿養子に出すことは構わない。でも、たまにはうちにも遊びに来てね」と言って快諾してくれました。夫の母は「婿養子だからって甘えないで、しっかり修行を頑張りなさいよ」と頼もしかったです。こうして、夫が婿養子となり、夫は実家の跡継ぎとなって建設業に励むことになりました。

 

 

ある日父から電話…夫が出社して来ない!

父はそんな夫を気に入り、友人・知人にも「跡継ぎになるためにわざわざ婿養子になってくれたんだ」といつも自慢していました。夫は結婚前の仕事を辞め、父の会社に入社。「お父さんはすごい人だね。俺も役に立てるよう早く仕事を覚えないと」と言ってくれ、奮起しているようです。

 

父が「婿さんは、お前がしょっちゅう顔を出して様子見ると嫌がるだろう」と言ったため、私は言いつけを守り、事務所には近づかないようにしていました。夫は毎日疲れて帰ってきていましたが「仕事に慣れるまでが大変だから」と言い、環境になじもうと努力している様子。私は結婚生活も家業もうまくいっていることに満足して暮らしていました。

 

ところが、夫が入社して半年がたったある日、父から耳を疑うような電話が。「最近、婿さんどう?」と父は尋ねます。私が驚いて「え? 会社で聞けばいいじゃない」と聞き返すと、父は困惑した様子で夫の近況を話してくれました。

 

数日前、夫が現場で大きなミスをしてしまい、父が夫を叱責したそうなのです。納期が迫っていたこともあり、つい厳しい態度で接してしまったと言っていました。「それで? 夫はどうしたの?」と聞くと父は「実はその日から婿さんが出社してないんだ」と言います。今朝も弁当を持って家を出た夫でしたが、まさか出社していないとは思ってもいませんでした。

 

夫を追い詰めていたんだ…後悔の念が襲う

父からの電話を切った後、夫に電話。すると「はい、もしもし。今忙しいんだけど」とふてくされた様子です。「今どこ?」と聞くと、出社していないことがバレたとわかったのか「近所の喫茶店」と答えました。

 

喫茶店へ向かうと夫がうなだれた様子で座っていました。「会社に行っていないの?」と問うと、夫はうつむき、震えるような声で「ごめん……」とつぶやきました。聞けば夫は、慣れない現場仕事についていけず、父や社員たちから「婿養子は使えない」「こんなこともできないのか」と毎日叱責されていたそうです。

 

それでも私に心配させないよう毎日仕事を頑張っていた中、大きなミスを起こしてしまい、「自分には向いていないから仕事を辞めよう」と決心したとのこと。しかし、婿養子として結婚した手前、妻や両親になんて言えばいいか悩んでいたようです。

 

私は深い後悔の念に襲われました。家業のことばかり考えて、夫が苦しんでいることに気付きもしなかったのです。「辞めていいよ」と夫に告げると、夫は「頑張れと言われるのもつらかった」と言い、泣いてしまいました。

 

その後、家族で話し合い、夫は会社を辞めることに。父もふんぎりがついたようで過度な叱責について「婿さん、ごめん」と謝罪。会社は将来的に事業譲渡の形で、信頼できる人に渡すことにしたそうです。

 

まとめ

夫は元々従事していた職種に復帰し、今は元気に働いています。お父さんの気持ちをくんで婿養子を、とずっと考えてきた私でしたが、そのことで夫を追い詰めることになり、とても申し訳なく思っています。夫は「やってみないとわからないから、トライできてよかった」と前向きに捉えているようです。

 

しかし、これからは結婚当時の反省点を生かし、目の前にいる人の気持ちを大切にしたいと思っています。自分はうまくいっていると感じていても、誰かが苦しんでいるかもしれないという視点を忘れずに、これからも結婚生活を送っていきたいです。

 

 

※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。

 

著者:香山 鯖子/8歳の息子、4歳の娘と夫と自然豊かな九州に暮らす。転勤族の夫といろいろな土地のおいしいものを探すことを趣味としているライター。

マンガ/あさうえさい

 

※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年6月)

 

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