今になってわかった学生時代の因縁
「すごい偶然なんだけど……実は、私もあなたと同じ日に結婚式することになってるんだ」とA子。それはおめでたい話です。
A子の話によると、相手はかなりのイケメンでお金持ちなのだそう。玉の輿だと嬉しそうにしています。たくさんの人を招待して、盛大な式をするとのことでした。「お互い素敵な式にしようね!」と言って電話を切りました。
その少し後、共通の友人から、A子はわざと私と同じ日に結婚式をぶつけてきたと聞かされました。友人は、A子から私の結婚式はいつか? と聞かれたそう。「出席するために予定を空けるのかな?」と思い何の気なしに教えたものの、私の式に友人を行かせないために日程をかぶせるという目的を聞いてしまったと言います。謝罪とともに「厄介なことになっていないか?」と連絡をくれたのでした。
友人は心配してくれていますが、式の準備は滞りなく進んでいます。しかし、なぜそんなことをされるのか、不思議でなりません。友人を問いただすと、私は衝撃の事実を聞かされました。
高校時代の恨み!?
どうやらA子は、高校時代に生徒会長だったB君にフラれたそう。その理由は、B君が私のことを好きだからと言うのです。しかしそれは初耳。私とB君には何の関係もありませんでした。
当時A子は、他校でも話題になるほどの美人女子高生。対する私は飾り気のないタイプで、恋愛とは無縁の高校生活を送っていました。フラれたことがなかったA子にとって、私のせいで恋愛がうまくいかなかったのは大きな事件だったようで、私に負けたと言って根に持っていたとのことでした。
でも、同じ日に式をぶつけたところで何になるのでしょう。私はただ、戸惑うばかりでした。
結婚式当日の電話
結婚式当日――。着替えやメイクなどの支度を終え、新婦控室ですごしていた私に、「おはよ~! 今日の結婚式は私の勝ちだね!」とA子から電話がかかってきました。「結婚式に同級生は来てないでしょ? みんな私の式に行きたいって言ってたもん。みじめね〜!」と笑います。
ついさっき、A子と共通の友人である高校の同級生たちは到着したはず……。A子が言っていることが理解できませんでした。
A子と式の日取りがかぶっていると知ったとき、友人たちには「A子の式に出ても私は気にしない」と伝えました。A子の式のほうがきっと豪華なはず。本心から、行きたいほうに行ってほしいと思ったのです。
しかし友人たちは「A子からは招待されていない」と口をそろえて言いました。それで、みんな私の結婚式に列席してくれたのです。
みんな私の式に来ていると伝えると、スマホの向こうでA子は焦っている様子。急いで確認して、高校時代の友人が来ていないことを知ったようです。
友人の大誤算!
「どうして? あんなに『行きたい』って言ってくれたのに……」とA子。そこで私は友人から聞いた話を伝えました。
「みんな招待状受け取ってないって」と言うと、「え? そんなわけない。SNSに日程を載せて『来てね』って投稿したら、『行きたい!』ってコメントがあったし……」とA子。
話を聞いていると、切手代を節約するために友人へは招待状は出さずに、SNSに書いて招待したつもりでいたそう。みんなのコメントだけで出席と判断していたようです。
彼女の非常識さにはびっくりです。「そうはいっても、招待状が来ないからみんな社交辞令だと思ったんじゃない?」と言うと、言葉をなくしていました。
これはビンゴで、後から友人たちに聞いたところ、それ以降誘いの連絡がなかったので社交辞令だと思った人のほかに、A子がセレブ婚を自慢しすぎたせいで、自分のような一般人は呼ばれないと思い込んでいた人もいました。
ようやく事態の重さに気づいたA子。「あなたのせいで、式が台無しになった!」と私を責め始めました。しかし彼女の結婚式を台無しにしたのは私ではなく、彼女自身。私に勝ちたい気持ちばかりが先行し、結婚式で本当に大切にすべきことを見失っていたのかもしれません。結婚式にきてほしいなら、ちゃんと一人ひとりに連絡をすべきでしょう。結婚式は見せびらかす場ではなく、日ごろの感謝を伝える場所だと思っています。
式の時間も迫っていたため、私は静かに電話を切りました。
残念な結婚式
その後、何人かの友人はA子から「なんで式に来てくれなかったの!」と責められたそう。A子から詳しく話を聞いた友人曰く、彼女の式は散々なものだったようです。新郎側の招待客はびっしりだったものの、新婦側はいくつかのテーブルが空席に……。
新郎は招待状を出さずにSNSで招待したつもりでいたという彼女の説明を聞いて、ひどく呆れていたそうです。この件も「みんなが来なかったせいで私が幻滅された!」と人のせいにしていたと聞きました。
一方、私の結婚式は最高のものになりました。友人たちは、こっそりと「もしA子からきちんと招待されたとしてもこっちに来たよ」と言ってくれたので、本当にありがたかったです。それに友人たちはA子の自慢にうんざりしていたことがわかりました。
彼女は「あのとき切手代をケチらずに、招待状を送っていれば……」と嘆いていたそうですが、そこが原因ではないことに気づけないうちは、心からお祝いしてもらうことは難しいでしょう。
これからもまわりの人たちへの感謝を忘れずに、夫とともに二人三脚で頑張っていこうと思います。
【取材時期:2025年7月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。