BBQ係を押しつけられた僕。でも実は……
社内の交流イベントでBBQが企画され、新人の僕が準備を担当することに。
会場の手配から社内告知、出欠確認、さらには食材の手配まで、業務の合間を縫ってなんとか準備を進めていました。ただやはり、さすがに20人分の調理を当日一人でこなすのは厳しいと感じ、数日前に先輩へ相談しました。
「そんなの、お前一人でやれよ。どうせぼっちで暇なんだからw」
「俺は秘書課の皆さんと交流するんで忙しいから、そっちは頼むわ」
冷たく突き放され、愕然としました。
仕方なく僕は早朝から現地入りし、黙々と作業を開始しました。
とはいえ、実は料理は僕の得意分野。実家が小さなレストランを営んでいる影響で、日頃から調理は慣れていました。さすがにこの量を一人で仕上げるのは初めてで不安もありましたが――。
「どうせやるなら、美味しいもので驚かせてやろう」
そう気持ちを切り替え、手際よく調理に取りかかりました。
「これ、全部君が作ったの!?」女性陣が集まり…
肉が焼ける香ばしい匂いが立ち込める頃には、自然と人が集まり始めました。
「え、すごい!これ全部一人で作ったの?」
「めちゃくちゃ美味しそう!私にも作り方教えて!」
美人社員たちが次々と声をかけてくれて、僕は照れながらも応対。中には手伝ってくれる人まで現れ、会場はまるで僕の屋台のようににぎわっていました。
そんな光景を、離れた場所からじっと睨みつけていたのが、あの先輩でした。
「くっ……なんでアイツがチヤホヤされてるんだ……!」
焦った先輩は、「じゃあ俺が最高のステーキを振る舞ってやる」と宣言し、無理やり一番いい肉を持ち出して焼き始めました。
……結果はお察しの通り。火加減を誤って焦がしてしまい、誰も箸をつけず。周囲の視線は冷ややかなものでした。
目立とうとした結果、待っていたのは…
懲りずに調理に加わろうとした先輩でしたが、「食材がもったいない」「できないなら触らないで」と、周囲からストップがかかり、徐々に孤立。
気まずさからかアルコールが進んだ先輩は、秘書課の女性にしつこく絡み始め、場の空気を完全に凍らせてしまいました。
一方の僕はというと、手料理の評判が社内で話題に。
「また作ってほしい!」「今度レシピ教えて!」と声をかけられることも増え、これまで接点のなかった他部署の人たちとのつながりもできました。
先輩の無茶な丸投げが、結果的に僕の評価を大きく変えるきっかけになったのです。
どんな仕事でも、自分なりに工夫してやり遂げれば、チャンスに繋がる。そう自信を持てた出来事でした。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。