「イマドキ」ではない実家の家風
私の実家は昔から来客が多く、訪問者とのコミュニケーションを大切にする家風があります。例えば、居間のような家族全員が過ごす公共的な空間や食事の場では、スマホやテレビなど個人で楽しむものに没頭するのは、あまり良く思われません。
もっとも現代では、スマホは生活必需品とも言える存在です。仕事の連絡が来ることもあり、単なる娯楽のためだけに触れているとは限りません。しかし、昭和1桁生まれの祖父母には、そうした事情を説明してもなかなか理解してもらえず「そんなにスマホが気になるなら居間に出てくるな! 気分が悪い!」と叱られたことさえありました。
そうした背景を踏まえ、私は事前に夫に実家の家風について説明し「少し面倒に感じるかもしれないけれど、付き合ってほしい。その代わり、豪華なおもてなしもあると思うから」と、帰省の前に何度かお願いしていました。
夫の振る舞いに戸惑って
夫を伴って帰省した日、家族はにこやかに「自分の家だと思って気楽に過ごしてね」と声をかけてくれました。それは歓迎の気持ちを表す言葉であり、本当に「自分の家のように」振る舞ってよいという意味ではありません。私自身もそう理解していました。
しかし夫は、文字通りの意味で受け取ってしまったようで、荷物を置くなり居間で携帯ゲームを始めてしまいました。家族が話しかけても生返事ばかりで、会話らしいやりとりはほとんどありませんでした。
食事も、家族が事前に予約してくれていた料亭やレストランで、地元の名産をふんだんに使った豪華なフルコースをいただきましたが、夫はそこでも、自ら積極的に会話に加わることはなく、黙々と食べるかスマホを触るばかりでした。
こうした日々が数日続き、帰宅後、母から「うちを3食つきの都合のいい宿泊所にしないでほしい」「正直、やっと帰ってくれたという気持ちのほうが大きい。振る舞いを改める気がないなら、二度と夫を連れてこないでほしい」と、怒りの電話がありました。
母の気持ちは当然のことであり、私はまず平謝りをした上で、夫と改めて話し合った後、もう一度電話をかけ直すことを約束しました。
夫の言い分に驚き
夫にそのまま母の言葉を伝えると角が立つと思い「帰省前にお願いしていた実家での振る舞いについて、少し振り返ってもらえないかな」と、やんわり話を切り出しました。すると夫は怒ったように「こっちは時間とお金を使って帰省して、顔を見せて、わざわざ親孝行してやっているのに、そんな気づかいまで求められるの?」と返してきたのです。
聞けば、夫が私の地元に住んでいたころ、実家に帰省する際には、交通費からお小遣いまで、すべて義実家が負担していたとのこと。
「普通は親が『顔を見せに来てください』って、そういうふうにお膳立てするものじゃないの? 金は出さないのに口だけは出すんだな」と、夫は強い口調で不満を言いました。
しかし実際には、家族が予約してくれていた料亭の代金は、私たちの往復の交通費以上に高額でした。現金のやりとりがなかっただけで、決して「金を出さない」わけではありません。それを、まるで何もしてもらっていないかのように言われ、私はとても悲しい気持ちになりました。
約束通り母に電話をかけ直したときに、嫌な思いをさせたことを心から謝罪し、今後は二度と夫を実家に連れて行かないことを約束しました。
まとめ
この「帰省騒動」からすでに15年ほどがたち、夫とはその後離婚しました。しかし、実家に帰るたびに、母は今でもあのときの出来事を口にします。本来なら楽しいはずの「実の娘の帰省」が、母にとっては忘れたくても忘れられない記憶になってしまったのです。親にこれほどの悲しみを与えてしまったことを、深く後悔しています。
「人に何かをしてもらう」ということは、決して当たり前のことではありません。そして、何かしてもらったときに感謝を忘れれば、自分だけでなく、周囲の人にも取り返しのつかない傷を残してしまうことを、この経験を通じて痛感しました。相手への敬意を忘れずに行動し、二度と同じ失敗を繰り返さないようにすることを、肝に銘じています。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
著者:遠藤ちよ/30代女性・主婦
イラスト/まげよ
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年7月)
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