やさしいひと言で心救われた日
駅に着いて、私はいつものように人の少ないドアから、タイミングを見て降りようとしていました。電車のドアが開き、私がベビーカーを押して降りようとしたその瞬間、ドアの正面で乗車を待ち構えていた60代くらいの女性が、ベビーカーを見て不機嫌そうに「ベビーカーは優先席のほうから降りなさいよ。邪魔なんだから」と言ってきたのです。
私は一瞬、何を言われたのか理解できずに固まってしまいました。優先席からは少し離れた場所にいたので、女性の言う通りにするとなると車両の端まで移動しなければなりません。なるべく混まない時間帯を選んで乗っていたので、車両内は急いで乗らなくても空いています。心の中では「えっ、なんでそんな言い方されなきゃいけないの?」とモヤモヤ。「そんなルールあったっけ?」「邪魔なんて……」と怒りや悲しみ、やるせなさが混ざり合って、「すみません」とつぶやくことしかできず涙がこぼれそうになりました。
すると、そんな私の背中越しから、男性の声で「今どき、そんないじわるなこと言う人いるんですね。ベビーカーがどこから降りようが関係ないでしょう」と聞こえました。振り返ると、30代くらいのスーツ姿の男性が、その女性に言い返してくれていたのです。男性はスマートにベビーカーを降ろすのを手伝ってくれ、「ちなみに降りる人が優先なんでちょっと避けてくれます? 邪魔です」と先ほどの女性の言葉をそのまま返すかのように皮肉たっぷりに言いながらキッと睨みつけます。女性はバツが悪そうに視線をそらし、「ふん」と小さくつぶやいて去り、別のドアから乗車しました。
私は驚きと感謝でいっぱいになり、男性に「ありがとうございます」と小さく頭を下げると、男性は「気にしないでください。あの女性の乗り込み方のほうがよっぽど邪魔ですよね」と苦笑いしながら立ち去りました。
子育て中は、物理的にも気持ち的にも荷が多い日々。マナーを守っていても、理不尽なことを言われることがあり、公共の場で肩身の狭い思いをすることも少なくありません。このとき男性が言い返してくれなかったら、その日はずっとモヤモヤした気持ちを抱えたままだったと思います。これからも、周りへの配慮やマナーは忘れず、私も誰かが困っているときには、あの男性のようにやさしくフォローできるようになりたいと思った出来事でした。
著者:井島りほ/30代・ライター。3歳の女の子と6歳の男の子を育てるママ。おしゃべりが大好きで寝るのが苦手な兄妹と、にぎやかな毎日を過ごしている。
作画:Pappayappa
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年6月)
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