沙織が産休に入ると、守は沙織に仕事をやめるように言いました。沙織の仲のいい同僚の2人が、陰で沙織の悪口を言っていて、悪巧みをしていると言うのです。はじめは信じられなかった沙織ですが、産休後、同僚からの連絡が一切途絶えたことで、守の言葉を信じて退職することに。
その後、無事に男の子・晴人を出産。守は、完璧な専業主婦になるための家事リストを沙織に手渡しました。そこには、「おかずは3品+汁物」を用意することなどがリストアップされていました。
そして、守は沙織へのサプライズとして、たくさんの白い服をプレゼント。ただ、クローゼットにあった沙織の服がすべて処分されていたうえ、白い服は守の好みだったことに、沙織は動揺します。
その後、「理想の母親であるべきだ」と持論を展開したり、「母親は母乳で育てるもの」と根拠のない主張をし始めたりする守に、沙織は不気味な違和感を覚えていくのでした。そんな沙織の理解者はお義母さんでした。お義母さんはいつも沙織に寄り添ってくれるのです。
ある日、買い物に出た沙織はふらついてしまいました。倒れそうになったところを、ガシっとつかんでくれたのは、お隣の大山さんでした。大山さんは沙織に何か起きているのではないかと気づいていたようで――!?
お隣さんに気づかされた夫の疑惑
ふらついた沙織を助けてくれたのはお隣の大山さんでした。座って休むように促された沙織は、具合が悪いにも関わらず、夕飯のために早く帰りたがります。
大山さんは何かを察したのか、沙織にきちんと食べているのか尋ねました。
「夕飯は夫の希望で毎日おかず3品と汁物を用意しているから、栄養たっぷりですよ!」
沙織の答えを聞いて少し顔を曇らせた大山さん。大山さんは自分と沙織を重ね合わせて言いました。
「私ね、元旦那がモラハラ男だったの」
つらかった過去を沙織に話します。沙織は、自分の夫は完璧主義だけれど、お金もくれるし、専業主婦なのに完璧にできない自分が悪いのだと伝えました。
すると「……暴力って手をあげるだけじゃないのよ」と大山さん。沙織が戸惑っていると「人生にはいろんな選択肢がある」と続けます。
大山さんと別れたあと、「暴力って手をあげるだけじゃないのよ」という大山さんの言葉が沙織の頭から離れません。沙織は、これまでのやさしかった夫の言動を思い浮かべ、夫の本心を考えてしまうのでした……。
◇ ◇ ◇
「暴力=手をあげること」という固定観念を揺さぶる大山さんの言葉が、沙織の胸に静かに刺さりました。つらい過去を乗り越えた大山さんだからこそ、その言葉には重みがあり、沙織の心に深く届いたのかもしれません。沙織は、当たり前だと思っていた日常を、少しだけ違う視点から見てみる勇気をもらえたのではないでしょうか。誰しも、忙しい毎日の中でこそ、ときには立ち止まって、違う角度から物事を見てみることが必要なのかもしれませんね。