成果主義の上司の嫌がらせ…やむなく退職へ
以前の職場の上司は、とにかく目に見える数字がすべて、という人でした。僕は、お客様一人ひとりとの関係を大切にし、後輩の育成にも力を入れるべきだと考えていましたが、上司は「効率が悪い」と聞く耳を持ちません。
次第に僕のやり方を頭ごなしに否定し、重要な案件から外すなどの嫌がらせが始まりました。社内で孤立させられ、心身ともに限界を感じた僕は、その会社を去ることを決意したのです。
悔しさを胸に転職活動を始めると、幸いにも僕の「チームを育てる」という考え方を高く評価してくれる会社と出会えました。新しい会社で心機一転、頑張ろうと決意を固めていました。
元上司と最悪の再会「無職は水でも飲んでろ!」
転職後、僕はチームで協力して大きな契約を成功させました。そのお祝いにと、新しい会社の社長が食事に誘ってくれたのです。
「あなたのやり方は間違っていなかったわ」
社長の言葉に胸が熱くなりました。
そして帰り際、少し酔いを覚まそうと、僕がカウンターで水を頼んだ、その時でした。
「なんだ、仕事が見つからずヤケ酒か?」
店に入ってきた人物を見て、僕は思わず声を漏らしました。「た、高倉さん……!?」。泥酔した元上司です。
彼は僕が社長と同席しているとは夢にも思わず、見下した笑みを浮かべて絡んできたのです。
「成果も出せない無職が酒なんか飲むな!ほら、水でも飲んで頭を冷やせ!」
元上司はそう叫ぶと、カウンターに置かれた水を僕の頭に浴びせかけました。突然のことに、屈辱と怒りで声も出ませんでした。
「彼を手放してくれてありがとう」女社長の痛快な反撃
元上司が勝ち誇った表情を浮かべた瞬間、同席していた社長が静かに立ち上がりました。そして、元上司に自分の名刺を差し出したのです。
「これはこれは、〇〇電機の高倉さん。いつもお世話になっております」
元上司の顔色が一瞬で変わりました。僕の転職先は、彼が今必死に契約を取ろうとしている、重要な取引先だったのです。
うろたえる元上司に、社長は冷たく言い放ちました。
「彼がなぜあなたの元で『成果』を出せなかったか、ご存じですか? 彼は自分の手柄を後輩に譲り、チームという財産を育てていたからです。あなたが見過ごしたその価値に、私は気づくことができました」
そして、最高の笑顔でこう続けたのです。
「彼のような素晴らしい人材を手放してくださって、本当にありがとうございます。おかげで私の会社は、最高のリーダーを得ることができましたから」
人を見下す者の末路
顔面蒼白のまま立ち尽くす元上司。僕の胸のつかえは、すーっと消えていきました。
後日、元上司は今回の失態が原因で、僕の転職先という大きな取引を失うことになったそうです。さらに、彼の一方的なやり方についていけなくなった部下たちが次々と退職し、社内での立場も危うくなったと風の噂で聞きました。
人を見下す者は、いつか必ず自分自身が足元をすくわれる──。 僕は新しい職場で、信頼できる仲間たちと共に、前を向いて歩んでいます。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。