嘘のルールを教えた理由は…
無事に娘が生まれて安心したのも束の間、産後すぐに母子同室だったため、なかなか休める暇はありません。大部屋なので他の妊産婦の方にも気を使ううえに、私は初めての赤ちゃんのお世話に戸惑い、寝不足で心身共に疲労困ぱい。
ある朝、私のげっそりした顔を見て、隣のベッドのママAさんが、「ひどい顔してるね」と心配してくれました。私も限界だったので「夜だけでもちょっと預かってもらえないか聞いて来ようと思う……」と言うと、Aさんは「いや、ダメでしょ! 母子同室っていう決まりだよ? 知らないの?」と言うのです。Aさんは今回2人目の出産だったこともあり、先輩ママ。私は絶望しながらも、Aさんの発言を鵜呑みにし、「そっか……じゃあ頑張るしかない……」と夜もなんとか自分で頑張ることにしたのです。
しかしその夜、何をしても泣き止まない娘に困り果て、同室の方に迷惑をかけまいと部屋を出ていたとき、たまたま助産師さんが通りかかりました。泣きそうになっている私の顔を見て「ちょっと! そんなしんどくなる前に預けなよ! お母さん頑張り過ぎだよ!」と娘を取り上げるように抱っこしてくれたのです。「でも、母子同室じゃないとダメなんじゃ……」と私が言うと、「そんなことないわよ! 今しか休めないんだから、しんどいときは預けていいの! 赤ちゃん預かるから今晩は休んで!」と娘を連れて行った助産師さん。あっけにとられながらも、その夜はゆっくり休むことができました。
翌朝、すっきり目覚めた私は、Aさんに「昨日助産師さんに聞いたんだけど、しんどかったら赤ちゃん預かってくれるみたい」と教えてあげました。しかしAさんは「知ってるよ~。うちもいつも預けてるもん!」と笑いながら言うのです! たしかにいつも隣のベッドから赤ちゃんの泣き声は聞こえてきませんでした。私は、「よく寝る子なんだ、うらやましい」と思っていましたが、Aさんは早々に赤ちゃんを預けていたようなのです。
預けられることを知っていながら、わざと嘘をついていたAさんの意図がわからず、あ然とした私。「でも預けるのダメってAさんが……」と言いかけると、Aさんは「だって1人目でしょ? 甘えちゃだめよ!」と言う始末。
すると私たちの会話を聞いていた、向かいのベッドの妊婦Bさんが「Aさん、先輩ママだからって意地悪すぎない? 大変さは自分が1番よくわかってるはずなのに」と声をあげました。斜め向かいのベッドの妊婦Cさんも「私もそう思う。〇〇さん(私)とAさんの昨日の会話は知らなかったけど、わざわざ嘘ついてまで人にしんどい思いを強要してたなんて……」と言います。複数人から責められたAさんは「何よ、みんなして……」とすっかり意気消沈。退院まで白い目で見られるようになってしまったのでした。
その後、私より1日退院の早かったAさんは、退室時、私のところまで来て「意地悪を言ってごめんなさい。私も1人目のときすごくしんどかったから、みんな最初はしんどい思いをしないといけないんだって思ってたの」と謝罪。私は「子育て、頑張りましょうね」とだけ返しました。
産後のボロボロな状態でおこなう赤ちゃんのお世話は、本当に大変です。助けてくれた助産師さんのおかげで、その後は安心して入院生活を送れたので、とても感謝しています。Aさんは、過去に自分がしんどい思いをしたと言っていましたが、だからと言って他人にそれを強要すべきではないはずです。つらさを知っているからこそ、同じ思いをする人に寄り添って助けてあげられる人でありたいと感じた出来事でした。
著者:村沢ゆな/30代・ライター。14歳と12歳のおませな娘たちと、3歳の甘えん坊な息子を育てるママ。毎日の育児にドタバタしながらも、家族に内緒で優雅なカフェランチを満喫するのが趣味。
作画:Pappayappa
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年6月)
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