義父は穏やかで、私を実の娘のようにかわいがってくれる人ですが、一方義母はいつもどこか棘のある言葉を投げてくるので正直苦手です。それでも、義父がいてくれたから、家庭のバランスは保たれていたのだと思います。
けれど――義父が亡くなったことで、その均衡はあっけなく崩れ去りました。
義父の葬儀で見えた本音
義父の葬儀が終わった夜、みんなで集まっていると、義母が「遺産もあるし、これからはラクできそうね」と言いました。夫もお酒を口にしながらうなずき、「まぁ、そうだな。悪いことばかりじゃないかもな」と。
――あまりにもひどい言葉に、私は驚き言葉が出ませんでした。
その数カ月後、私の父が社長を退任することになりました。跡を継いだのは、長年父を支えてきた優秀な部下です。父は「経営者には、人を見る目が何より大事だ」と言い、私の夫は社長の器ではないと判断したようです。
すっかり次期社長になれると思っていた夫と義母は、その日から私への態度が一変しました。それまで普通に話していたのに、私の言葉を無視するようになり、まるで空気のように扱うのです。
突然の「チェンジ宣言」
ある日、夫が突然言いました。
「なぁ、離婚してくれ! 再婚することにした」
意味が分からず立ち尽くす私に、義母が笑いながら言いました。
「相手はね、取引先の社長の娘さんよ。立派なおうちの人。これでうちも安泰ね! 新しい嫁が来たからチェンジよ!」
夫は得意げに言いました。
「これで俺も経営者の仲間入りだ!」
息が詰まりました。
――私は何だったの? 一緒に支えてきた時間は、全部無駄だったの?
私と子どもたちを裏切って、陰で不倫して、義母まで加担していたなんて……。
私と結婚したのも、愛情ではなく『次期社長の座』が目的だったのかも……!?
私は怒りと悲しみをグッと抑えて、静かに言いました。
「あの……私がいないとこの家、終わりますよ?」
夫は鼻で笑いながら「んな訳あるか!」と反論。私はそんな彼らを許さないと決めました。
突然の逆転劇
夫と義母は新しい家族の計画に浮かれている様子。私は弁護士を通して夫へ慰謝料と養育費を請求。後日、離婚が成立しました。
「じゃ、他人になったので出て行ってもらえる?」
私の言葉に、夫も義母もポカーン。
すっかり忘れていたようですが、この家は私の父が所有するマンションです。出て行くのは私たちではありません。
しどろもどろになりながら反論してきましたが、何も聞くつもりはありません。その週末には引っ越し業者を手配し、家から出て行ってもらいました。
夫と義母の末路
その後、風のうわさでは、不倫相手の女性の父親が結婚に反対したことで破談になったそう。再婚したら会社を辞めるつもりだったようですが、再婚の話もなくなり、小さな作業所へ異動になったそうです。義母とふたり暮らしをしているそうですが、義母は家事が一切できず、浪費家なので、苦労していると聞きました。
ある日、義母から「あなたのせいでお金がないのよ! 振り込んでちょうだい!」と電話がかかってきましたが、「自業自得ですよね。もう電話してこないでください」ときっぱり伝えました。
その後、夫と義母と二度と会いたくないので、子どもたちと別のマンションに引っ越しました。父の会社は一時は損失を受けたものの、新社長のもとで業績を回復し、今では順調に伸ばしています。私は在宅で事務の仕事を手伝いながら、子どもたちと落ち着いた生活を送っています。
離婚を経て多くのことを学びました。今は、地位やお金よりも、信頼できる人たちと穏やかに暮らせることが、何よりの幸せだと感じています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。