関係を変えたリンゴ事件
結婚当初から、義母との関係は「表向きは良好」という表現がぴったりでした。
夫の実家は昔ながらのしきたりを重んじ、義母はその象徴のような存在。初孫が生まれてからは、育児に何かと口を出し「私はこうだった」と上から目線で言ってくることもしばしば。正直、心の中ではずっと距離を感じていました。
そんな中、夫の実家を訪れたときのことです。私はリビングで、当時2歳の長男をひざに乗せて絵本を読んでいました。すると義母が、にこやかな顔で赤いリンゴを手に近づいてきました。「このリンゴ、知り合いからいただいたの。むいてくれない?」と言って、私に差し出したのです。
普段、義母が私に家事を頼むことはありません。さらに、私は料理が苦手なので、リンゴの皮むきも正直苦手。「もしかして、うまくむけるかどうか試そうとしてる?」と思うと、即答で「やります」とは言えません。しかし、義母は他にすることがあって手伝ってほしいだけかもしれないし、最近なんでも「できない!」と嘆く長男にも「苦手なことでも諦めずに挑戦しよう」とつい先日話したばかり。私は挑戦する姿を長男に見せようと、「ごめんね」と言って読みかけの絵本を閉じ、台所に向かいました。ぎこちなく皮をむき始めると、案の定、皮は途中で切れ、果肉が大きくえぐれてしまいました。
そしてふと目をやると、そこには義母の姿が。忙しいから私に頼んでいたのかと思いきや、私の様子をずっとチェックしていたのです。義母は、「あらあら、これじゃ孫くんにまともなリンゴをあげられないわ。私の時代は嫁入り前にきちんと教わったわよ」と言います。私が「すみません。こういうの苦手で……」と言うと、義母は「できないなら最初から言えばよかったのに、何を意地張ってるのよ。でもリンゴもまともにむけない親だなんて、孫くんがかわいそう。やっぱり、あなたには無理だったわね~、困った嫁ね~」と言ってため息をつきます。
その瞬間、怒りがこみ上げ「やっぱり試していたんだ……!」と確信。私は意を決して、ゆっくりと義母に顔を向けて「お義母さん、リンゴがまともじゃなかったら息子にどんな影響があるんですか? リンゴの皮むきができないことと、無理と決めつけたり誰かを下に見るような発言を聞かせたりすること、どちらが子どもにとってかわいそうだと思いますか?」と言いました。
義母の表情が一瞬でこわばり、リビングにいた夫と義父もテレビを見るのを止め、私たちのほうに目を向けます。「もちろんきれいにむけて損はないけれど、私は苦手なことにも挑戦する姿を息子に見せていきたいと思っています。人を見下すような態度や言葉は、見せたり聞かせたりしたくありません」と勇気を振りしぼって伝えました。
義母は言葉を失い、沈黙。そのとき、黙っていた義父がふっと笑い「ハハハ! よく言った! たしかにリンゴの皮むきより孫の心がやさしく育つほうが大事だなぁ!」と言ったのです。思いがけない援護に、私は心の中で小さくガッツポーズ。義母は顔を赤らめ、それ以上は何も言いませんでした。
この日を境に、義母は育児や家事に対して、口を出すことが減り、言い方も以前よりマイルドに。後日、リンゴのむき方も教えてくれ、少しずつ表向きだけでない、良い関係が築けているように感じます。
家事や子育てにおいて、すべて完璧である必要はないと私は思います。今後も、苦手なことがあったとしても、それに挑戦して克服していく姿を子どもに見せ、努力の大切さを伝えていきたいですし、自分らしく子育てをしていきたいです。義母の言葉を気にしすぎる必要はないと、自信がついた出来事でした。
著者:結城ナオ/30代・主婦。8歳の長男と2歳の次男のやんちゃ盛りの子どもたちを育てるお母ちゃん。イヤイヤ期の次男と、思春期に片足を突っ込み始めた長男との攻防戦に、時に笑い、時に悩み、ドタバタしつつも賑やかな毎日を送っている。
作画:ryo
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年7月)
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