完成後、引き渡しを目前に控え、義両親が「ぜひ見に行きたい」と遊びに来てくれました。
義両親「少しの間だけ住ませて」!? 夫の“軽い一言”が波紋を呼
家に入った義両親は、目を輝かせながらあちこちを眺めていました。
「まぁ、素敵ねぇ! 陽当たりもいいし、キッチンも広い!」「リビングもおしゃれ!」
こだわった家を褒めてもらえてうれしかったものの、帰り際に義母が少し深刻な顔で言いました。
「実はね、お父さん、この前階段で転んじゃって……。古い家だから手すりもないし、段差も多いの。バリアフリーの家に一度住んでみたいなぁって話してたのよ」
――そのときは、軽い世間話だと思っていました。
数日後の夜、夫から信じられない報告を受けました。
「実はさ、うちの親が“あの家に少しの間だけ住ませてもらえないか”って言ってて……俺、つい『いいんじゃない?』って言っちゃったんだ」
「……は?」
義両親が新築のわが家に住んで、私たちは築何十年の義実家に……!?
夫は状況を深刻に捉えていない様子で、軽く笑いながら言いました。
「いや、ほら親も年だし、うちの家は段差が多くて危ないから、広い家のほうが安全かなって思ってさ。その間はローンを親が援助してくれるって言ってる。どっちも一軒家だし、ちょっとの間ならいいかなって……」
――この人、本気で言ってるの?
胸の奥で、何かが音を立てて崩れた気がしました。
「じゃあ、離婚する?」妻の言葉に夫は青ざめて
私たちが何年もかけて準備してきた“新しい生活”を、当然のように奪おうとするその言葉が、信じられませんでした。
「本気で言ってるの? 私たち、この家を目標にずっと働いてきたんだよ? 子どもたちも楽しみにしてるのに」
「でも、親も困ってるし……数カ月だけならいいかなって」
「じゃ、離婚する? 私が子どもたちと住むからさ」
その言葉を聞いた瞬間、夫の顔が青ざめました。自分がどれほど無神経なことを言ったのか、ようやく気づいたようでした。口を開きかけては何も言えず、ただその場に立ち尽くしていました。
後日、夫は一人で義両親と話し合いのため、義実家へ行きました。数時間後、沈んだ表情で帰ってきた夫が言いました。
「俺が悪かった。母さんたちも、勝手なことを言ってごめんって謝ってたよ」
「……もう、二度と軽い気持ちでそんなこと言わないでね」
夫は深くうなずき、「本当にごめん」と頭を下げました。
新しい命と、家族の再スタート
義両親はその後、地元の工務店に相談し、自宅を少しずつリフォームしたそうです。今では、バリアフリーに改装された義実家で安心して暮らしています。
私たちはというと、夢だったマイホームで新しい生活をスタート。義両親がときどき遊びに来る“ちょうどいい距離感”を保ち、今のところ平穏な関係が続いています。
あの日、勇気を出して声を上げてよかった。
あのまま流されて同居していたら、きっと今の穏やかな時間はなかったと思います。ここからまた、私たちの新しい日々を積み重ねていこうと思います。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。