軽い気持ちで怖がらせないで…!
2歳の娘と2人きりで家にいた夕方のことです。キッチンで夕食の準備をしていると、娘が突然、「ママ、こっち来て」と泣きそうな顔をしました。心配になってそばに行くと、娘は玄関のほうをじっと見つめ、「おばけさんがいる」と震えながらつぶやくのです。
えっ、まさか……と内心ゾッとしながらも、娘を怖がらせまいと平静を装い、「えっ、おばけ? どんなお顔なの?」と明るく聞いてみました。すると娘は真剣な顔で「お口がギザギザしてるの」と答え、さらに「きいろ」で「大きい」と言うのです。黄色くて口がギザギザの大きなおばけ……想像が膨らみ、私のほうがどんどん怖くなってしまいました。
ドキドキしながらお風呂を済ませ、パジャマを着て絵本を読んでいましたが、娘は先ほど怖がっていたのが嘘のように、興奮して眠れなくなった様子。そんな中、玄関のドアが開く音が。夫が「ただいまー」と帰ってきたのを見て、私は思わずホッとしました。
娘が寝なくて困っていることと、先ほどのおばけ発言について夫に話してみると、彼はおもしろがって笑いながら「あれ? おばけさんいるのかぁ。早く寝ないと、本当に迎えに来ちゃうぞ〜」と、軽い冗談のように言い始めます。私は夫を遮って「ねぇ、そういうこと言わないで!」と強い口調で言いましたが、夫の言葉を聞いてしまった娘は、一瞬動きを止め、不安そうに「おばけ……?」と私を見上げました。
夫にとってはちょっとした冗談で、本気で怖がらせようとしているわけではなかったと思います。しかし、子どもを脅すような子育ては絶対にしたくないと思っていた私は、娘を抱きしめながら、「この子は今、本当に怖がってるの! 怖がらせる言葉は、子どもの心を傷つけるだけだと思う」と伝えました。私の言葉に、夫は「しまった」という顔で黙り込みます。娘は不安そうに私を見上げると、「ママ……おばけさん、いるの……?」と泣き出す始末。私は娘の頭を撫で、「大丈夫。おばけさんはいないよ。ママとパパが守ってあげるからね」と目を見て言いましたが、結局その後も怖さのあまり眠れなくなり、普段は寝室に入って10分で入眠できるはずが、寝かしつけに1時間ほどかかってしまいました。
私が娘を寝かしつけたあと、リビングで待っていた夫は「ごめん。もう二度と、さっきみたいなこと言わないから」と謝ってくれました。その後、改めて夫婦会議を開き、娘が怖がるような制し方はしない、と決めました。夫も私も、安易な言葉がどれほど子どもの心を傷つけるか、身をもって実感したからです。
翌日、幼稚園の先生にこの話をしてみると、先生はやさしく微笑みながら、「本当に霊が見える子って、見たままを言うんですよ。『女の人がいる』とかね。でも『おばけ』と言うのなら、園で読んだ絵本の影響かもしれませんね」と教えてくれました。先生に見せてもらった絵本には、まさに娘が言っていたような、ギザギザの口をした黄色いおばけが……! あのとき、実はひそかに怖がっていた自分が、少し恥ずかしくなりました。
軽率な脅し言葉は、一時的に子どもを抑制することができても、心を深く傷つけてしまう可能性があると私は思います。また、「脅かす育児はしたくない」という私の思いを、きちんと夫に伝えていなかったことを反省すると同時に、夫婦で育児方針を共有しておく重要性も実感しました。親として、その場しのぎの手段に頼らず、子どもの気持ちに寄り添い、信頼関係を築くことこそが大切だと、夫婦で気づくきっかけになった出来事です。
著者:松原櫻子/30代・ライター。2歳の娘を育てる母。イヤイヤの地雷を踏まないように、日々忍者のごとくそろりそろりと歩いている。
作画:sawako
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年7月)
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