分娩後6~8週ぐらいまでを産褥期といい、出産を終えたママの体が徐々に妊娠前の体に戻っていく時期です。産後は休息と活動のバランスをとることが大切です。過度な安静は、ママの体の回復に影響を及ぼすので、適度な運動が必要になります。産褥期におこなう適度な運動に「産褥体操」があります。それでは産褥体操について、詳しくお話していくことにしましょう。
産褥体操とは?
産褥体操は、産後におこなう軽い体操のことです。産後のママの体にあまり負担がかからないような、寝た状態でも可能な運動が多く、回数もさほど多くはありません。
産褥体操には以下の目的があります。
1)悪露の排出を促し、子宮収縮を促す
2)妊娠・出産による腹壁および骨盤底筋群の回復を促す
3)出産後の疲労を回復し、心身のリラクゼーションをはかる
4)血液の循環を促し、静脈瘤や血栓の形成を予防する
5)母乳の分泌を促す
産褥体操を始めるのはいつから?
産褥体操を始めるにあたって、まずは、ご自分の体調を優先することが必要です。体調や気分が優れないときにまでおこなう必要はありません。
普通分娩の場合、産後2時間は出血が多くなったり、状態が変化しやすいので安静が必要ですが、それ以降であれば産褥体操をおこなっても構いません。帝王切開の場合は、術後、歩行を開始してからごく軽い運動が可能になります。
会陰を縫合していたり、帝王切開の場合には、傷に負担がかかるような運動は、傷が癒合してからおこなうようにしましょう。最初は軽い内容の運動から始め、徐々に運動の内容を組み合わせたり、回数を増やしたりしていきましょう。
産褥体操の方法
それではどのような運動があるのか、紹介していきたいと思います。1つの運動を5~6回、慣れてきたら、いくつかの運動を組み合わせておこなってみましょう。
産後1日目からおこなえる運動
ベッド上でおこなえるかんたんな運動です。帝王切開後のママもおこなえます。
1)胸式呼吸
両ひざを立てて、あおむけになります。胸郭を広げるイメージで、鼻から深く息を吸い込み、3~5秒かけてゆっくり息を吐きだします。
2)腹式呼吸
両ひざを立てて、あおむけになります。おなかを膨らませるイメージで、鼻から深く息を吸い込み、3~5秒かけてゆっくり息を吐きだします。
3)足先の運動
あおむけになります。足首を曲げて、ふくらはぎをのばします。その次につま先を下向きにしてのばします。これを数回繰り返します。足首の運動は、座った状態でもおこなえます。その際は、足を組み、動かす足をリラックスさせた状態でおこないましょう。
産後2日目からおこなえる運動
帝王切開の場合は術後8日目以降からおこなえます。
1)頭を起こす運動
膝を立ててあおむけになり、腕は両脇に伸ばします。深く息を吸い込み、息を吐きながら頭をゆっくり持ち上げます。頭を持ち上げたまま、数秒維持し、その後頭を下げ、リラックスします。
2)肛門の引締め運動
膝を立ててあおむけになり、腕は両脇に伸ばします。おしりの筋肉と肛門を引き締めたり、ゆるめたりを繰り返しおこないます。尿漏れにも効果があります。
産後4日目ころからおこなえる運動
1)腰を浮かせる運動
あおむけになり、ひざをたてます。両腕を頭の後ろで組んだ状態で、腰を浮かせます。
2)足を上げる運動
あおむけになり、ひざを立てます。ひざを曲げた状態で、左右の足を交互に持ち上げます。
産後1カ月ころからおこなえる運動
1)前かがみ
足を肩幅程度に開いて立ち、ひざを伸ばしたまま前屈します。
2)つま先立ち
足を肩幅程度に開いて立ち、つま先で立ちます。
3)姿勢をよくする運動
足を肩幅程度に開いて立ち、左手は腰に、右手は前に伸ばします。手を伸ばしたまま、左側後方を見るようにして、体をひねります。逆側も同様におこないます。
4)自転車乗り運動
あおむけになり、ひざを立てます。ひざを曲げた状態で、自転車をこぐように動かします。
5)自分で起き上がる運動(腹筋)
6)腰をひねる運動
ひざを立ててあおむけになります。肩と足の裏はベッドにつけたままで、両ひざをゆっくり左に倒します。両ひざをもとの位置に戻し、右に倒し、元の位置に戻します。
まとめ
産褥体操をおこなうことで、産褥期の回復をうながす効果が期待できます。しかし、このような運動をおこなうかどうかは、ママの自主性にゆだねられている部分が多いです。ご自分の体調と相談しながら、産褥体操が継続できるような工夫ができるとよいですね。