ただひとつ苦手なのが、義兄夫婦。いつもどこか私たちを見下したような態度を取るのです。義母もそんな二人の性格をよくわかっていて、できるだけ私たちが嫌な思いをしないよう気を配ってくれていました。
義兄夫婦と顔を合わせる機会が減るよう、集まりの予定をずらしてくれたり、「今日は忙しいみたいよ」とさりげなく間を取り持ってくれたり……。
それでも私の気持ちを察して、いつも最後にはやさしく「気にしないでね」と声をかけてくれる、本当に心の支えのような存在でした。
義兄が偶然私たちの話を聞いていて……
娘の七五三が近づいたある日、義実家で義母とお祝いの食事について相談していました。「娘ちゃんが好きなものをたくさん作ってお祝いしてあげたいね」と義母と話していたそのとき、玄関の方から突然声がしました。
「母さん、ちょっと相談があるんだけどさ〜」
現れたのは義兄でした。お小遣いをもらいに、ふらりと立ち寄ったようです。
私たちは慌てて話題をそらしましたが、“七五三”という言葉を聞かれてしまいました。
「へぇ、七五三か。いつやるんだ？」と何気なく尋ねる義兄に、私は「まだ詳しくは決めていません」とだけ答えました。
ところがその数日後、義母が電話で「○日にお参りに行くのよ」とうっかり義兄に話してしまい……。その会話がきっかけで、義兄夫婦はお祝いの日程を知ってしまったようでした。
七五三のお祝いで起きた事件
秋のある日、娘の七五三のお参りに義母と家族4人で行きました。そしてその日の夜、私たちは義母の家で手料理を用意することにしました。「娘の大好物でテーブルをいっぱいにしよう！」と張り切り、私と義母は分担して、たこ焼きや手作りケーキ、サンドイッチなどを作りました。
ところが、いざみんなで食べ始めようとしたとき、突然、義兄夫婦が現れたのです。
「お祝いって聞いたから来てやったよ～」「あ～腹減った～」と言いながら、ちゃっかりテーブルにつく二人。
そして、机の上の料理を見るなり、義兄夫婦が鼻で笑いました。
「手料理でお祝い？ 貧乏くさっ」
「お祝いなのにこの料理？ ウケる～！ ずいぶん庶民的なのねぇ(笑)」
あまりにもひどい言動に、私は言葉を失いました。
いつもは温厚な義母の怒り
そのときでした。温厚な義母が、静かに立ち上がりました。
「ちょっとあんたたち、いい加減にしろよ……！！！」
普段は穏やかな義母の声が、まるで別人のように低く響きました。
「嫁ちゃんは一生懸命やってる。子どもの好きなものをたくさん作って、みんなで心から祝おうとしてるんだよ。で、あんたたちは何しに来た？ どうせ手ぶらで来て、食事をたかりにきたんだろう？ 人の気持ちを笑うような人間には、金輪際うちの敷居はまたがせないから。帰って。二度と来なくていい」
義兄夫婦は一瞬で青ざめました。今まで何かあるたびに義母を頼りにしていたのに、その義母に“絶縁”を宣言されたのです。
私たちの幸せの形
それ以来、義兄夫婦は家に来ることもなくなりました。義母は「もう無理して付き合うことないのよ」と笑いながら、私たちにこう言いました。
「あなたたちと過ごす時間が、今の私の一番の幸せなの」
それからというもの、私たちは義母と同居を始めました。義母の料理はどれもとてもおいしく、娘と私は一緒に台所に立ちながら、たくさんのレシピを教えてもらっています。
義母のひと言で、私たち家族の関係は大きく変わりました。嫌な思いもあったけれど、それをきっかけに本当に大切な人たちと、穏やかに過ごせる日々を手に入れたのだと思います。家族の形はひとつではありません。見栄や世間体よりも、「一緒に笑い合える時間」を大切にできること——それこそが、私たちの幸せのかたちです。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
