会社の成長と誇り
入社当初、会社は地域密着の小さな電気工事店でした。けれども、この15年で業績は伸び、新社屋も建設されるほどに成長。
「社員を増やして、もっと大きな案件を受けていく予定だ」と社長が話していたときは、私自身も胸を張って両親に報告しました。
「努力してきてよかったね」「立派になったね」と喜ぶ両親の姿に、私は誇りと充実感を感じていました。
高学歴の新人がやって来た
そんなある日、会社に新入社員が3人入ってきました。社長は「皆、有名大学出身の優秀な人材だ」と誇らしげ。社内はちょっとしたお祭りムードでした。
ところが、いざ現場で顔を合わせてみると、彼らはどこかよそよそしく、話しかけても反応が薄いのです。
「現場の仕事なんて単純作業でしょ」「俺たちは管理側だから」といった言葉も耳に入りました。学歴を誇りにする気持ちはわかりますが、まるで現場の仕事を軽んじているような態度に、胸がチクリと痛みました。
居場所を失った日
ある日、現場から戻ると、自分の机が会議室から倉庫に移動されていました。「作業員はほとんど外に出てるし、ここなら十分でしょ」と言われ、ぼうぜんとした私。
倉庫には冷暖房もなく、書類をまとめるにも不便な環境です。社長に相談しても「彼らはデスクワーク中心だから」と言われ、苦笑いするしかありませんでした。
それでも、「これまでの恩もあるし」と自分を励まし、黙々と仕事を続けました。けれども、彼らの態度は次第にエスカレートしていったのです。
「辞めても代わりがいる」と言われて
数カ月後、廊下ですれ違った際、彼らが何げなく放った言葉が忘れられません。
「現場の人なんて、辞めても代わりがいるでしょ」
そのひと言が、心に突き刺さりました。
私は、これまで現場の安全管理や資格申請など、社内で唯一できる業務も担ってきました。それでも「代わりがいる」と言われた瞬間、何かがぷつりと切れました。
「もういいです。辞めます」とだけ伝え、私は退職届を出しました。
社長からの電話
数日後、社長から電話がありました。「君に辞められると困る。今すぐ戻ってきてほしい」と焦った様子。どうやら、私が担当していた工事の申請や資格関連の手続きが滞ってしまい、現場が動かせなくなっていたようです。
私は静かに答えました。「社長の会社には、私より優秀な人材がいるじゃないですか」。それだけ伝えて、電話を切りました。
今は別の会社で働いています。待遇は変わりませんが、人を学歴や肩書きではなく“仕事の中身”で見てくれる職場です。
現場作業はたしかに地味で泥臭い。でも、その積み重ねが誰かの暮らしを支えていると感じられるからこそ、誇りを持って働けます。
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学歴や立場の違いはあっても、どんな仕事にも意味があります。見下された悔しさはあったものの、そのおかげで「自分の力を正しく評価してくれる場所」で働けるようになりよかったですね。人を見下すより、支え合える職場で頑張るほうが、ずっと気持ちがいいものですよね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※AI生成画像を使用しています
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