父の会社では年に2回、社員の家族も参加できるパーティーを開催しています。私も毎回夫と参加しており、そこで夫と同じ部署のA子さんという女性社員が、よく子どもたちの相手をしてくれていました。明るくてやさしい彼女に、私も好印象を抱いていたのですが……。
夫の違和感と、突然の訪問者
あるときから、夫は子どもたちへの教育に異様なほど熱心になりました。「この問題が解けなかったらごはん抜きだ! パパの会社の人のお子さんは、いつもクラスで1番の成績なんだ。 お前たちも1番になりたいだろ?」こんな言葉を、まだ幼い子どもたちにぶつけるのです。
夫は、子どもたちの将来のためだと言いますが、私には、「自分の教育のおかげで子どもたちが優秀になった」と周囲に自慢したいだけのように見えました。
そこで私は、子どもたちが子どもらしくのびのびと過ごせる時間を大切にしました。週末は夫が不在のことが多かったため、3人で遊園地へ行ったり、一緒に家でゲームをしたりと、子どもたちの希望通りに過ごすようにしたのです。
そんなある休日。いつものように夫は不在で、子どもたちとゲームをして過ごしていました。すると突然、夫と同じ部署で働くA子さんが訪問してきたのです。私がどうしたのかと聞くと、彼女から思いもよらぬ発言が飛び出しました。
「あなたの家族ください! 私、あなたの旦那さんと真剣に交際しています。だからこの家を出て行ってください! 子どもたちも私が優秀に育てます!」
私は、唐突すぎる発言に言葉を失いました。しかし次の瞬間、さらに思いもよらぬことが……。
「別にいいよ? A子お姉ちゃんがママでも」
子どもたちが、口を揃えてA子さんの言葉に賛同してきたのです。
双子の作戦で大逆転
私は子どもたちの発言に、ショックで立ち尽くしました。反対に、A子さんは満面の笑み。「そうだよね〜やっぱり、若くてパパと仲良しなママがいいよね〜」そう言って、子どもたちのもとへ駆け寄るA子さん。
しかし子どもたちは、「ちょっと待ってて!」と言い残し、子ども部屋へ入っていきました。数分後、リビングに戻ってきた姿を見てびっくり! 子どもたちはまったく同じ服装をしていたのです。毎日一緒にいる私は見分けられますが、双子なので他人には見分けがつかないほどそっくりなのです。
「A子お姉ちゃん、どっちがどっちかわかる? ママは間違えたことないよ。本気で僕たちのママになりたいなら、簡単だよね?」
その問いかけに、彼女は顔を引きつらせ、目を泳がせるばかり。子どもたちは、双子ならではの方法で、彼女がママになるのは不可能だとわからせたのです。
そのとき、窓の外、カーテンの隙間からこちらをのぞく夫の姿に気がつきました。私と目が合った夫は慌てて家に入ってくると「何やってるんだ! 君とは遊びだとあれほど言ったじゃないか!」と、A子さんに怒鳴りました。
すると彼女は、泣きながら夫にしがみつき「そんなの嘘! 奥さんとは終わってる。本当に愛しているのは私っていつも言ってるじゃない! それに、いい大学を出ている私が親になれば子どもたちの教育にもいいって言ったじゃない! 私は本気なの! もう隠れて付き合うのも嫌なの!」と訴えます。
彼女の言葉に夫は顔面蒼白。あまりの修羅場に思考が停止してしまったのか、数秒固まったあと、A子さんを振り払い「本当にごめん。彼女とは別れるから、許してくれ……頼む!」と、私に土下座しました。
私は、夫を見下ろし、静かに「いえ、離婚します。慰謝料と子どもたちの養育費は、きっちり払ってもらいます」と告げたのです。その場で泣き崩れる夫を横目に、私は子どもたちを連れ、家を出て実家に戻りました。
裏切りを乗り越え、手に入れた幸せ
その後、弁護士を通じて話し合い、無事に離婚が成立。夫には慰謝料と養育費、A子さんにも慰謝料を請求しました。会社ではすぐに2人の不倫が噂となり、後ろ指を差され居づらくなった2人はそろって退職。風の噂では2人とも、アルバイトを掛け持ちしてなんとか食いつなぐ生活を送っているんだとか。
一方私は、子どもたちと一緒に実家で暮らしています。専業主婦の母が育児に協力してくれるおかげで、仕事にも復帰することができました。今まで通り、週末は子どもたちのやりたいことを叶えてあげることができています。
やさしい祖父母に愛され、のびのびと暮らしている子どもたち。以前より、笑顔が増えたような気もしています。これからも子どもたちの幸せのために、私は手を尽くしたいと思います。
◇ ◇ ◇
家族とは、日々の愛情の積み重ねで築かれる「絆」そのものなのですね。幼いながらも、双子ならではの機転で非常識な不倫相手を黙らせたお子さんたちは、とても賢く立派でしたね。夫の自己満足と裏切りという嵐を乗り越え、温かい実家で再スタートを切った親子3人に、穏やかで幸せな日々が続くことを心から願っています。
【取材時期:2025年10月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。