幼なじみからの電話
僕はとある企業の営業として働いていました。本格的な就職活動を始める前から入りたいと思っていた企業だったので、毎日やりがいを感じていました。プライベートでは、付き合って1カ月になる彼女もいて、充実していて……。
そんなある日、仕事中の僕に幼なじみのAから電話が。Aは僕の実家の隣に住んでいて、幼いころから家族ぐるみで仲良しでした。しばらく会っていなかったので、僕は「めずらしい……」と思いながらも電話を取りました。
「大変なの……あなたのお母さんが倒れて!」
Aによると、僕の母が実家の庭で倒れていたところを発見したとのこと。母は救急車で運ばれて病院にいるから来てほしいという連絡でした。僕は、すぐに退勤して、病院へ向かいました。
転職を決意した僕
病院に到着すると、母はベッドの上で眠っていました。そこにはAもいて、「今は落ち着いて眠ってるみたい。詳しい検査の結果はまた後日だって」と説明してくれました。
話を聞くと、Aは自宅でできる仕事をしていたため、たまたま庭で倒れている母を発見できたそうです。もともと人との関わりが得意でないAでしたが、「役に立ててよかったよ」と言ってくれました。
数日後、母の詳しい検査結果が出たのですが……定期的な通院が必要な病気だったようで、母ひとりでは生活が難しいとのこと。僕は家の近くでできる仕事をしようと、今の会社を辞めることを決意しました。母の力になりたいと思ったためです。
事情を話すと彼女は…
僕は、お付き合いをしている彼女にも転職することにした旨を伝えたのですが……。
「え? あんなに給料の良い会社、辞めるの? 私との結婚とか考えていないの?」
と彼女は驚くことを言いました。僕は正直母親が倒れたばかりで、結婚のことを考えられる余裕はなくて……。僕が困っていると、畳みかけるように彼女は言いました。
「あなたの良いところでしょ、高学歴で高収入って…。それなのに辞めて実家に帰るの?」
どうやら彼女は僕の内面ではなく、学歴や勤め先、年収といったステータスを見ていたようでした。もちろん、高収入なのを僕の魅力の1つであると言ってくれるのはうれしかったのですが……。それでも、母について話した後は「大丈夫?」と声をかけてくれるだろうと思っていたのです。
僕は悲しい気持ちになって、「もういいよ」とその場を離れました。
幼なじみの力
僕は休みの日に実家へ自分の荷物を移しにきました。Aも手伝ってくれていて、僕は彼女から言われたことを話しました。
Aは僕の話を真剣に聞いて、「大丈夫だよ。あなたの魅力はそれだけじゃないから」と言ってくれました。僕が感極まっていると、彼女から電話が。
彼女曰く、「もっと高収入な人を見つけたから、別れてほしい」とのこと。僕は未練もなかったので、「あぁ…」と了承しました。すると、隣で聞いていたAが
「あなたには、この人のやさしさとか他の魅力が見えないんですね。この人は私がもらいます」
と言ったのです。そしてそのまま電話を切ってしまいました。僕が驚いたまま動けないでいると、Aは続けて「実は、ある程度お給料をもらっているの。だから、困ったら力になれると思う」と言ってくれました。
聞くと、Aは僕にずっと好意を寄せてくれていたみたいで……。人と関わるのが苦手なAでしたが、幼なじみの僕とは自然に話せて、他にいない存在だったとのこと。
僕は、Aに「ありがとう」と伝えました。Aの気持ちがすごくうれしいし、支えになっていること、まだ元カノのことで気持ちの整理がついていないことも伝えました。Aは、「今はこうして手伝えるだけで十分!」と笑ってくれました。
こうして僕たちは
僕は、準備が整った後に上司に事情を説明しました。すると、事情を聞いた上司はリモートでもできる仕事を僕に割り振ってくれたのです! こうして僕は仕事を辞めず、母が落ち着くまでの間は実家で仕事ができるようになりました。
噂を聞きつけたのか、元カノから「やり直したい」との電話が何度もかかってきました。どうやら、新しく見つけた高収入な彼氏は嘘をついていたようで……。かわいそうだとは思いましたが、僕は新しい道を歩むことを決意していたので、「やり直すことは考えられない」と電話を切りました。
母も、僕が家にいることで安心できたようでした。たまにAが来て、3人で一緒にご飯を食べるのですが、母はとてもうれしそうです。一時はどうなることかと思いましたが、こうして楽しい毎日を過ごせているのは、Aの支えがあってのことだと感じています。
もう少し落ち着いたら、僕は、Aに「お付き合いしてほしい」と伝えようと思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ムーンカレンダー編集室では、女性の体を知って、毎月をもっとラクに快適に、女性の一生をサポートする記事を配信しています。すべての女性の毎日がもっとラクに楽しくなりますように!