足立病院(京都府京都市)院長インタビュー
一生涯に渡って、女性とその家族の健康をサポートする病院
「足立病院の6代目の院長になったのが、今から20年前の35歳のときでした。そのときの足立病院は、月間の分娩数が8人ぐらいでしたね。当時の院長から『院長室にきてくれ』と言われて、『私の後を継いでほしい』といわれたんですよ。これから時代は変わっていくので、院長は若い人でないとだめだと背中を押され、どうやったら患者さんや地域、世の中に貢献できるかをずっと考え続けてきました。その答えが、産科だけではなく、不妊治療、小児科、子育て支援センター『マミーズスクエア』、保育所、さらには乳ガンや腹腔鏡手術対応など、女性をずっと長く支援する仕組みを作っていくことだったんです。そうすることで、たとえば乳ガンになられた女性の方にも、卵子凍結などの手段を提案・提供することにより、出産も可能になります。足立病院全体で、女性を支援することができるのです。また、それらの診療科の連携と高度医療の取り組みが、優秀なドクター、スタッフをつくり上げることにつながっていくのだと思います」
「さらに、多くの女性をサポートするために、足立病院の向かい側に、医療モールをつくり、皮膚科、耳鼻咽喉科、歯科、泌尿器科、眼科なども設置。もっともっとたくさんの女性をサポートしていくことのできる体制になりました」
「もうひとり産んでみたい!」と思えるお産を目指しています
「産婦人科医としての目標は、『もうひとり産んでみたい!と思えるお産』です。当院では、ほとんどのお産で家族が立ち会いをします。帝王切開でも立ち会っていただけます。『家族で迎えるお産にしよう』をコンセプトにしているので、立ち会いされる方は、おじいちゃんやおばあちゃん、お友だちなども可能です。また、個室はツインベッドにしていますので、旦那さんや上の子と一緒に入院することもできるんです。旦那さんには積極的に立ち会い出産をすすめています。もちろん、分娩室に入ってから、途中で足が立たなくなる旦那さんも中にはいますが、ぜひこのお産の現場を経験してから、お父さんになっていただくのが理想だと考えてます」
「新しい赤ちゃんが産まれたら、そのときに新しいお父さん、新しいお母さん、新しいおじいちゃん、新しいおばあちゃんというように、新しい家族ができるんです。その新しい絆を大事にしていただきたいというのが願いですね。そうなっていただくことで、子育てのときに、旦那さんや家族の協力が得られやすくなるんです。出産だけではなく家族で子育てをすることで、『子どもが生まれるということはいい経験になった!』と家族で思っていただき、お母さんに『もうひとり産んでみたい!』と思ってもらいたいんです。そのためにできるだけ、みなさんが出産に立ち会いができるようにしています」
産婦人科医を目指したのは幸せの連鎖を実感したかったから
「高校三年生のときに、世界初の体外受精がイギリスで成功したというニュースを聞き、この領域に興味がわきました。ただ、不妊治療だけでなく、妊娠・出産までを一貫して携わりたいというのが夢でした。そのため、産婦人科になり、不妊治療も産科も両方を担当してきたんですね。その夢が現実になり、今はとても充実しています」
「不妊治療をされた患者さんが出産後に退院してからも、しばしば、『あのときの赤ちゃんがこんなに大きくなりました!』と、訪ねてくれる方もいらっしゃいますね。そのほかにも、『あのときの子どもが小学生になりました!』『高校入りました!』『妊娠しました!』など、うれしいお話も。そのときにお母さんと昔話をして、『あのときのこの卵が……』という話をすると、お母さんとお子さんで盛り上がっています。先日は、娘が医者になるとおしゃっていた方もいました。その娘さんを足立病院に連れてきてもらい、白衣を着せて1日ドクター体験をしてもらいましたよ。すると、見事に医学部に合格したと言ってよろこんでいましたね。このような“幸せが連鎖していく”できごとがたくさんあることはうれしいですね」
今後は少子化をなんとかしていきたい!
「“女性の一生をサポートする”という目標を掲げ、いいスタッフに囲まれて、施設も拡大してきました。十分でない点もありますが、ひと通りは充実できたかと考えています。実は、京都は東京についで2番目の少子化都府なんです。これをどうしていくかという難題に取り組んでいきたいですね。中学校や高校で講演をして、どうやったら子どもができるのか、若いうちから産婦人科に馴染んでもらうという取り組みもしています。もちろん、ガン検診も啓蒙しながらです。もっともっと、妊娠する方法を日本全体で教えていかなければならないと考えています。今、足立病院は創立100年余り。200年続いていくために、次の世代にどうアプローチして、少子化の情報発信や教育をしていくかというところに取り組んでいけたらと思っています」
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