ミオ・ファティリティ・クリニック(鳥取県米子市)産院ごはん
23年間の試行錯誤の結晶「みおごはん」のテーマは一汁三菜
「23年前の開院当初から、『主食と一汁三菜』の和食を基本とした『みおごはん』を提供しています。朝食もほとんど和食。助産師さんと話し合い、産後のおっぱいトラブルを抑えるためにももっと和食を食べていただこうと始めました。また、中医学や薬膳について造詣の深い女性外来錦織医師より、和食は脳や心も安らぐことにも繋がると学び、指導を受けながら現在の一汁三菜献立ができています。ただ、毎日朝昼夕と見た印象が同じ和食では食べる楽しみに乏しくなりますから、『赤ちゃんハッピー』『日本の伝統』『マクロビ』『お楽しみ』の4つのテーマを設けて、昼と夜の食事にメリハリをつける工夫をし、入院している1週間を患者さんにご満足いただけるように工夫をしています」
「食材、調理方法ともに一汁三菜を基本とした献立です。栄養士はそれぞれフードコーディネーターの資格も併せ持っていますが、料理をおいしいと感じさせる要素の80パーセントは視覚によるもと資格取得過程で学んだことです。病室という限られたスペースですので、毎食変化を出して「おいしそう」と感じてもらえるよう、器選びや盛りつけにもしっかりと心配りをしてます」
「もちろん、材料は地元から仕入れていますし、冷凍食品や加工品は用いていません。中でも自慢なのはお米。開院当初から奥出雲の“有機仁多米”を使っています。甘みが強く、もっちりとしていておいしいお米なんですよ」
365日毎日オリジナルの献立を提供!
「開院当初からのレシピ総数は、1000品を超えるほど。今までの献立は、すべて写真とレシピにまとめて保存しています。毎日ご提供する献立は、過去のものも参考にしながら、季節やそのときどきの素材を加え、2週間ごとに栄養士がオリジナルの献立を作成しています。献立を考えるときに、とくに気を付けていることは、〇〇風という中途半端な料理にしないこと。食べ物は文化です。一つひとつの料理、献立のコンセプトにこだわりを持つことが食べていただく患者さんへ「おいしさ」として伝わるのではないでしょうか。また、基本は和食の一汁三菜ですが、週に一度はイタリア料理やフランス料理、韓国料理やB級グルメなどを意図的に組み込んでいます。そんなときは調理をする私たち自身が、イタリアのマンマになったり、オモニになりきり、ときには夜店のお兄ちゃんになりきって調理にあたります。そうして、スタッフ自身も変化を楽しみながら『みおごはん』を提供していることが、これまで365日毎日違う献立を作ってくることができた継続の秘訣かもしれません」
「みおごはん」の一汁三菜を今の患者さんに伝えていくことが使命!
(以下、栄養士の高野由利子さん)
「当院の方針でもある、”食を大事にする”ということは、出産後に産院ごはんを患者さんに食べていただくだけではなく、通院中に『みおごはん教室』で体験していただいています。『みおごはん教室』は、妊婦さん向けの教室で、1回につき12人の方に『みおごはん』を実際に食べていただきます。調理の実践を促すというよりは、”一汁三菜とはこんな食事で、味付けや料理の組み合わせ方のポイントを体感していただくこと”に重きを置いてます。レシピ本やネットで情報はいくらでも手に入れられますが、実際に食べて味わっていただくと、つくってみようという気持ちになりやすのではないでしょうか。参加者の方からは、『量は少なめなのにおなかいっぱいになって驚きました』『わが家でも一汁三菜を取り入れていきたい』という、うれしいお声を毎回お聞きしています。和食のよさを伝える場であり、妊娠を機にふだんの食生活を見直すキッカケづくりにつながっているという実感がありますね。そのときに使用する『今日から作ろう!みおごはん』というレシピには、一汁三菜の料理の作り方だけでなく、産後に必要な離乳食へのアドバイスも記載しています。教室に参加できなかった方へも随時配布しています」
院長の想いと現場が一体になって食事の重要性を伝える
「当院の院長は、食事と運動、精神的なポジティブさの3つが妊娠・出産において重要だと、患者さんに熱意を込めてお伝えしています。さらに院内で提供するレシピや教室などの情報に加え、『みおマルシェ』という取り組みをしています。『みおマルシェ』というのは、当院がおすすめしているレシピと少量の材料のセットを楽しみながら手に取っていただけるよう考えた企画です。高野豆腐や干し椎茸などの乾物や雑穀、出汁昆布に煮干しの出汁など、体にいいと思いながらご家庭で取り入れにくい食材をお試しサイズにしていますので、『みおごはん』として提供している一部を自宅で食べていただくことができるんです。“自分で作って食べる”ということが、健康的な食事を続けていくための秘訣だと考えています」
心と体が元気になる食事を体験してもらいたい!
「栄養管理部では全員が調理に携わります。管理栄養士2名、栄養士3名、調理師2名。栄養士は献立をたてるだけではなく、食事相談の際、患者さんに細かい調理手順や味つけのポイントなどのアドバイスを行うため、自己の調理技術も高めようと日々研究を怠りません」
「”昔から食は三代”というのが、当院の初代栄養士の名言です。外食やお惣菜、冷凍食品と手軽に食事をすることはできますが、わたしたちが思うのは、心と体が元気によろこぶような食事をひとりでも多くの方に実践していただきたいということです。当院の食事を通じて、また、教室やレシピ、みおマルシェなどのさまざまな場面で、食の大切さを感じていただけることを願っています。そして、退院された患者さんだけでなく、赤ちゃんを交えたご家族みなさんが健やかに毎日を過ごしてもらいたい。そんな思いのもと、私たちは『みおごはん』を作っています」