産前産後ケアセンター ママの里(山梨県笛吹市)産後ケア施設レポート
カテゴリー│施設レポート 2018/04/04 12:00

24時間365日、産前産後のお母さんとご家族をサポート

施設の設計から携わったという、センター長で助産師の榊原まゆみさん

シンプルで清潔感のある外観の建物の中に入ると、まず目の前に広がるのは間仕切りが取り払われた開放的な多目的スペース。壁や床、インテリアまですべてが真新しくピカピカで、ウッドとグリーンのやさしい配色が初めて訪れた人もホッとさせてくれます。「新しいんですね」とセンター長の榊原さんに話し掛けると、ママの里の成り立ちについてお話ししてくれました。

榊原さん「 ママの里は、平成28年の1月にオープンしたので、ちょうど丸2年経ったところです。以前、県が山梨県のお母さんたちを対象におこなった意識調査の結果、7割の方が宿泊型の産後ケアを望んでいたとのことで、この施設を立ち上げることになったんです。ですから、ママの里はもともと “山梨県産後ケア事業”という県の事業を運営・実施するために作られた施設なんですよ。

今、ママの里では大きく3つの事業をしています。まず1つ目が、産後4カ月までのお母さんと赤ちゃんが宿泊しながら助産師のケアを24時間受けられる事業です。もう1つは24時間対応の電話相談です。これは“山梨県産前産後電話相談”といって、県から委託を受けて、ママの里の職員が24時間対応しています。そして、3つ目は ママの里独自の事業です。たとえばベビーマッサージの教室をひらいたり、母乳の個別ケアを予約制でおこなっていたり、宿泊ではなく日帰りのケアを希望される方への対応をしています。

そして、妊婦さん向けの個別相談や母乳のためのらくらく授乳教室、冷え対策のぽかぽか教室、そのほか、夫婦力アップ講座というのもおこなっています。最近ではおじいちゃん・おばあちゃんの世代に向けた“孫育て講座”も人気ですね。このように、対象は妊娠中から産後まで、あるいはおじいちゃん・おばあちゃんの世代までと、本当に幅広いんです」

建物の入り口。シンプルでおしゃれ
庭に面した多目的スペースではベビーマッサージや母乳教室が開催されています

山梨県の産後ケアを一手に引き受ける、特殊な運営体制

山梨県は全国的にもめずらしい、県内27市町村が共同して産後ケア事業をおこなうという体制をとっています。その中で、ママの里はどのような役割を担っているのでしょうか。

榊原さん「山梨県の産後ケア事業は、県と県内27市町村が共同体“山梨県産後ケア事業推進委員会”というものを作っているんですね。ママの里は山梨県産後ケア事業推進委員会から委託を受けて運営しているので、山梨県民であれば宿泊にあたり補助金が出ます。

たとえば1泊2食の場合、自費では3万3,900円ですが、補助金が出ると6,100円で宿泊できます。それを高いと見るか安いと見るかは人それぞれですが、産後のお母さんが赤ちゃんと一緒に来て、助産師のケアをつねに受けられる環境としてはそれほど高い金額ではないと思います。なかには自費で利用される県外の方もいらっしゃるくらいです。

ちなみに、ママの里で働いている助産師は今14人いるのですが、みんな山梨県助産師会という団体に所属しています。常勤はセンター長と副センター長の2人だけで、あとは全員非常勤なんですよ。みんな普段は新生児訪問など、地域の仕事をしていて、そこで会ったお母さんがつらそうなときはその場でママの里を紹介できるという利点もあるんですよ」

利用するお母さんもスタッフも、みんな和気あいあいだといいます
中医薬膳栄養指導師のスタッフによる薬膳教室では季節により自家栽培の野菜をつかうことも

助産師の臨機応変な対応とアットホームな雰囲気が人気

ママの里の助産師さんは、いわば選りすぐりの精鋭たち。地域に根づいた助産師さんたちによる、心のこもったケアが評判だといいます。

榊原さん「ママの里を利用されるお母さんのほとんどが、入所のときは本当に疲れ果てていたり、緊張感でいっぱいで能面のようなお顔なんですよね。なかには 『大変だったんですね』と声をかけた途端にブワーッと泣き出してしまう方もいらっしゃいます。

ママの里に入所したら、私たちはまず最初にお母さんの最優先の目的を確認します。たとえば『育児技術を確認したい』『授乳がうまくできない』ということが最優先だったとしたら、いつもお母さんがお家でおこなっているとおりにしていただいて、 “もうすこしこうしたらいいのにな”と思うことがあったときだけ、押し付けにならないようにアドバイスしていくんです。

方法が違っていたとしても失敗ではなくて、それでよければOK、どちらを選んでもよいんだということをお母さんに知ってほしいんです。ママの里に来たお母さんたちが、 『それでいいよ、大丈夫だよ、という声かけがものすごくうれしかった』と帰り際に言ってくださいます。お母さんの表情もとてもよくなっていくんですよ。

産後ケアって、そうやってお母さんの心に寄り添うことがいちばんだと思うんですよね。おっぱいマッサージなど、技術的なケアももちろんおこないます。ですが、それだけではなくそのお母さんに今、何がいちばん必要なのかというところをみんなで見極めながら毎日ケアの方針とプログラムを検討していくということが重要だと思っています。ママの里の助産師たちは、お母さんの心に寄り添うことができるよいスタッフばかりで、私はそれを本当に誇りに思っているんですよ」

庭の天然の石和温泉を使った足湯は、お母さんたちの井戸端会議場になっているそう
宿泊用のお部屋は和洋2種類。上のお子さんやご家族も一緒に泊まれるお部屋も
石和温泉のお湯をひいたお風呂。1人ずつお湯を入れ替えているので、つねに清潔です

早朝や深夜でも悩みを聞いてくれる、24時間電話相談

電話相談用の個室。深夜は夜勤の助産師が対応しています

ママの里の利用者が増えてきている一方で、24時間365日、助産師さんが電話で相談にのってくれる“山梨県産前産後電話相談”も人気なのだとか。

榊原さん「昨年の応対件数は2,073件でした。1日で平均すると5~6件といったところでしょうか。日中だけではなく夕方から夜中の時間帯、夜中から朝までの時間帯でのご相談もあり、ご相談の内容もさまざまです。なかにはご主人やおばあちゃんがお母さんのことを心配して電話をかけてこられるケースもあります。

電話相談は山梨県の事業ということで運営しているのですが、たまに県外の方からもかかって来ます。もちろん、県外の方からのご相談も受けるようにしています。なぜなら24時間相談を受け入れてくれる場所というのは、ほかにはほとんどないんです。お母さんたちの不安は土日や夜間になるとなくなるわけじゃないですからね。ママの里という名の通り、お母さんたちが実家のようにいつでも気軽に相談できて、支えてあげられる場所でありたいんです」

「産後ケア」はすべてのお母さんのためにあるものだと知ってほしい

ママの里では、フリーの子育て情報誌への出稿や手作りチラシの配布、定期的なイベント開催など、“産後ケア”を知って活用してもらうためのPRに力を入れています。しかし、日本では産後ケアの認知度が低く、特別な理由がないと利用できないと考えるお母さんが多いというのが現状です。

榊原さん「ママの里について知ってもらうためにいろいろなPRをがんばっているのですが、多くのお母さんたちはすごく具合の悪い人が使うところだと思ってしまっているみたいなんです。電話相談で 赤ちゃんが泣いて困る、抱っこしていないと寝てくれないというお話を聞いて『宿泊しながらこちらで見させていただくこともできるんですよ』お母さんに提案すると、『え、私なんかが行ってもいいんですか?』ということが多々あります。

お母さんが、ママの里に行こうと思ってくれるきっかけはなんでもいいんですよ。ちょっとした気分転換で来ていただいても全然構いません。 『ママの里に行くとどのようなことができるのかわからない』と言う方もまだ多いので、そこを今後どのようにPRしていくか、考えている最中です」

今後は妊婦さんの「産前ケア」にも力を入れていきたい

山梨県の子育て支援を担うママの里では、次の展開として妊婦さんを対象にした“産前ケア”を準備中。さらに層を広げることで、産前産後ケアの大切さをもっと広めたいと榊原さんは言います。

榊原さん「2018年度の4月か5月から、妊婦さん対象の宿泊ケアを開始しようと思っています。お産に対して漠然とした不安がある方もいらっしゃるでしょうし、腰痛がひどいとか、むくみがあるとか、そういうお悩みをもっている妊婦さんもいらっしゃると思うんです。

産前の宿泊には助成制度がないので1泊2万円という金額になります。朝から次の日の朝まで滞在していただいて、宿泊しているお母さんと赤ちゃんの様子を見ながらご自身の産後をイメージしていただけたらと思っています。産後ケアの市町村への申請は妊娠中からできるので、施設の見学や妊婦さん向けの教室に参加して産前から準備していただければと思います」

健康科学大学産前産後ケアセンター ママの里の概要

<提供サービス>

利用者の心身の状況やニーズに合わせ、滞在中、以下の支援をおこないます。

  • 母体のケア
  • 沐浴、授乳や抱き方などの育児指導
  • 母親同士の交流機会の提供
  • 子育て支援情報の提供
<ご利用いただける方>
  • 県内在住の原則として産後4カ月までのお母さんと赤ちゃん
  • 不安や負担感があり、家族等周囲の支援が受けられない方など

※詳しくはお住まいの市町村にお問い合わせください。

<ご利用料金>

6,100円(1泊2食)
定額は、33,900円ですが、差額は県とお住まいの市町村が助成します。
昼食は別途1,000円です。
赤ちゃんのごきょうだいも一緒に宿泊できますが、費用については産前産後ケアセンターに事前にご確認ください。

<ご利用方法>
  • お申し込み
    お住まいの市町村母子保健担当に、妊娠届出時や妊娠中、出産後等、いつでもご相談ください。
  • ご利用日の調整
    日程調整、ご予約については、市町村へのお申し込みの後、産前産後ケアセンターに電話でご連絡ください。
<産前産後ケアセンターをご利用の方へ>

産後ケア事業利用にあたって、市町村及び産前産後ケアセンターは、産後ケア事業を実施するために必要な利用者の個人情報を共有します。守秘義務を遵守し、目的外使用はいたしません。

施設利用にあたっては、産前産後ケアセンターの施設利用基準を遵守していただき、遵守いただけない場合、利用をお断りすることもございます。 健康科学大学産前産後ケアセンターにおいて、県と市町村が行う公費補助の対象は宿泊型産後ケアのみです。

産前産後ケアセンターでは、宿泊型産後ケア事業以外にも、母乳ケアや健康教室等の日帰り型ケアも行っています。(公費補助の対象ではありません) 詳しくは、健康科学大学産前産後ケアセンターホームページをご覧ください。

<ご利用方法>

ベビーカレンダー編集部


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