叱っていいの?叱る・しつけ、子どもの発達心理学
「しつけ」ってなに? いつどのようにしかったらいいの? 本当に「叱る」必要があるのでしょうか? 「褒めるしつけ」「子どもをたたく」などさまざまな問題を含め、「叱る」と「しつけ」を考えます。
子どもの発達心理学 どうして「嫌」って言うの?
最初から100点満点の親などいません。ゆっくりマイペースで育児を楽しみ、子どもと一緒に育っていきましょう。育児の答えはひとつではなく、「しつけ」もノウハウでは語れないものです。基本を頭に入れたら、後は固定観念に縛られず、「何とかなる」ぐらいの気楽さも時には必要です。
しつけってなに?
価値観が多様化する現在は、「しつけ」のキーワードが見つけにくい時代。幸せは人それぞれです。でも、最低限の目安は持ち、「しつけ」の基本を頭に入れておきましょう。
岩立京子先生
「しつけ」とはなにかを仕込むことではありません
子どもが自分で考え、行動できる力(自己をコントロールする力)を育てることと、人間として必要な規範意識や道徳感を持つこと、そのために適切なアドバイスをして手助けをしてあげるプロセスが「しつけ」です。親にとって望ましい行動をただ押し付けることは、子どもに反抗心や無力感を植え付けることにもなりかねません。
しつけの5カ条
(1)いたずらは大目に見て防止策を!:怒鳴ったりせず困る理由と気持ちを伝えましょう。
(2)危険なときは短い言葉で制止:言葉で制止できにくい場合は、抱き止める、手を握るなどの行為を伴って制止する。
(3)身のまわりのしつけは「叱る」より「待つ」:叱るのではなく、できることは大いに褒める、できないことは方法を伝えながらやってみせる→一緒にする→見守るなどスモールステップで援助した上で、できるようになるのを気長にゆっくり待ちましょう。
(4)お友だちとのトラブルは言い分を聞く:頭ごなしに叱らずに、子どもの言い分を聞いてあげましょう。
(5)叱ったあとは、いつものやさしいお母さんに:あとはやさしくフォローして子どもを安心させましょう。
子どもの心の発達
できないことをすぐに要求しない・比べない・個性に合わせて「しつけ」する
子どもの発達や個性は個人差が大きく、ほかの子と比べても意味がありません。また、「しつけ」となると能力以上のことを要求してしまいがちですが、子どもの心と体の準備ができているか見てから本腰を。ただし、「危険」や「道徳=お友だちに乱暴しないなど」は何歳でも、わかるように伝えましょう。
赤ちゃんには言うことがどれだけ伝わっているのでしょうか? いつ・何を・どうしつければいいの?
~生後6カ月
お母さんへの信頼感を育てましょう。
生後6カ月~1歳
大人から見ればいたずらでも、赤ちゃんにとっては「探検」や「学習」。早い赤ちゃんだと生後9~10カ月ぐらいで口調から叱られていることを感じ始めますが、好奇心を満たしてあげることも必要です。むやみに叱らず、大人の側で事故予防に注意しましょう。
1~1歳半
簡単な言葉を理解し始めます。短い言葉で叱った理由を説明しましょう。長い説明はまだ理解できません。危なくない範囲でやりたがることは自由にやらせ、陰からそっと手を添えてあげましょう。何でもまねしたがるこの時期には、歯みがきなど、やりたがったら積極的に誘い、じょうずにできたら思い切り褒めてあげましょう。ただし、ここぞと教えたり、強制すると逆効果。好きにやらせてみましょう。
1歳半~2歳
自我がはっきりしてくるこのころは、興味を持ったことは積極的に取り組ませていきましょう。急に言うことを聞かなくなり、泣いたりすることもありますが、指示に従えないのは子どもなりの理由があります。話を聞いてやり、理解するよう努めましょう。お友だちを意識し始めますが、最初からじょうずに遊べるわけでなく、ぶつかり合うことも多いので、お母さんが仲介する形で気持ちを代弁してあげましょう。
2歳~
指示の意味はわかっても、自分のやりたいことと違うときは抵抗してきます。やみくもにしかって言いなりにさせるのはよくありません。子どもにどうしたいのか聞き、時には交換条件をのんであげるなどして決定権を持たせましょう。ママの期待に答える満足感を覚えるのもこの時期です。また、お友だちと遊んでいるときは干渉をひかえ、トラブルが起きたときだけ仲介、悪いことをしたら自分で謝らせましょう。
3歳~
第1次反抗期と言いますが、反抗しているわけではありません。主張をうまく言葉にできないので「嫌」と置き換えているだけです。一方的な指示でなければ我慢や待つこともできるようになります。出かける前にしてはいけないことを約束、守れたら褒めてあげましょう。泣いても「約束したことは守る」という態度は基本的には崩さず、根気良く教えること。ただし、静かにしていられるのは15~30分ぐらい。手際よく用事をすませましょう。
4歳~5歳
言葉の理解や表現の発達やその場の状況判断力が高まってきます。また、記憶力も発達してきて、以前に指摘されたことを思い出したりして、必要に応じて自分で行動を抑制したり、逆に主張すべきところで主張したりすることが次第にできるようになってきます。子どもが理解できる言葉でしっかりと説得していきましょう。
性格に応じたしつけ
1歳後半から2歳ぐらいになると、なんとなくその子らしい個性が見えてくるようです。その子本来の個性のよいところを伸ばしてあげたいですね。
●タイプ別・個性をのばすしつけ方
▶積極性があり、人前で褒められるのが大好き! 「目立ちがりやさん」
自主的におこなったことを褒めてあげ、「今度は○○ちゃんの番ね!」と、受け手に回る楽しさも教えてあげましょう。
▶内気な「恥ずかしがりやさん」
せかすと不安になってしまいます。できたことを褒めてあげて、少しずつ自信をつけさせましょう。得意なことをさりげなくアピールしてあげることも自信に結びつきます。
▶意志が強く言い出したらきかない「強情くん・頑固ちゃん」
押しつけるより、決定権をあずけてみましょう。自分で決めさせるのがコツ。
▶好奇心旺盛、落ち着きがない「キョロキョロくん」
おとなしくすることを強制するより、子どもがおもしろそうだと飛びついたことの中で、じっくり遊ぶ楽しさを経験させたいですね。
子どもの行動にイライラすることが多いとき、ママと子どものタイプが違うことが多いものです。自分と同じでないと許せないという気持ちを捨て、素直に子どもを見てあげましょう。
叩くことは必要?
「叩かずに育てたい」と思っても現実は甘くありません。叩くことで注意を引いたり「お母さんは怒っているんだよ」という気持ちを伝えなくてはいけないときもあり、絶対にいけないとも言いきれません。
ただ、原則からいくと、叩かず気持ちを伝えることがもっとも望ましいことです。叩かれると、痛みや恐怖からその場では言うことを聞くかもしれませんが、覚えてほしいことが身についているか疑問です。しょっちゅう叩かれていると、お友だちに乱暴する心配もあります。
時々思い余って手を上げてしまうことがあるかもしれませんが、体罰を正当化しないようにしましょう。
※記事は『3歳までのしつけと育児』より抜粋、掲載にあたって岩立先生に加筆修正いただいたものです。
3歳までの子育てシリーズ『3歳までのしつけと育児』
岩立京子監修/ナツメ社1,540円+税
3歳までの子どもの発達を解説。生活場面別「食事編」「トイレ編」などの実践的なしつけのコツや、年齢別のQ&A集など掲載されています。具体的な場面をあげて説明されているのでママにとって理解しやすい内容となっています。